
■事実
MSI・GIGABYTE・Inno3Dの3社が、卸売経路「ChannelGate」経由でGeForce RTX50シリーズおよびRadeon RX9000シリーズの価格を再値上げです。
今回は8月に行われた値上げに続く2回目。直近ではASUSとGalaxが新たな値上げを発表したばかりというタイミングです。
MSIはRTX5070シリーズとRTX5060 Ti 16GBを100〜600元値上げ。RTX5070は最大で約600元(約90ドル)の値上げとなり、ミドルレンジ帯へのダメージが大きくなっています。
RTX5060 Ti 16GBの値上げ幅自体は約29ドルと相対的に小さいが、直近1か月ですでに大幅に値上がりしており、多くの地域で800ドル以上に達しています。
GIGABYTEはRadeon RX9070 XTとRX9060 XT(8GB/16GBの両モデル)を29〜37ドル値上げ。加えてRX7650 GREも新たに対象となり、約400元(約59ドル)値上げしました。
Inno3DはRTX5080を約500元(約74ドル)、RTX5070 Tiを約300元(約44ドル)、RTX5070を約200元(約29ドル)値上げ。その他モデルは据え置きです。
価格推移グラフ(RTX5070 実勢価格の推移、単位:USD)

※ 発売時からの下落局面のあと、2026年に入ってからの複数回の値上げが積み重なって急騰している構図。
ソース:
- https://wccftech.com/msi-gigabyte-and-inno3d-announce-new-price-hikes-for-rtx-50-and-rx-9000-series-graphics-cards/
■解説
時間軸を縦糸にすると分かりやすい:2025年後半のDRAM長期契約終了→2026年1月に各社が10〜15%値上げ→夏場にかけて複数回の追加値上げが積み重なる→8月にASUS・GIGABYTEが正式値上げ→9月頭にASUS・Galaxが値上げ→そして今回MSI・GIGABYTE・Inno3Dが追随、という「値上げの多重奏」がここ半年ずっと続いている構図だ。
根本原因はGDDR6/GDDR7メモリのコスト高騰。GDDR6のスポット価格は1GBあたり約2.5ドルから約7.5ドルへと1年で3倍近くに上昇したとの報道もある。
SK hynix・Samsung・Micron等はAI向けHBMやサーバー向けDRAMの方が利益率が高いため生産ラインを優先的に振り向けており、コンシューマー向けGDDRの供給が構造的に細っている。これは一時的な品薄ではなく、少なくとも2027年後半まで続くとの予測もある「構造的な締め付け」だ。
GPUとメモリはセットで卸されるため、メモリ価格の上昇はそのままボードパートナーへの卸値に転嫁される。NVIDIA・AMDは表向き「値上げ発表」をしていないケースでも、内部的な仕入れ値上昇は認めている状態だ。
MSI・GIGABYTE・Inno3Dのようなボードパートナーは、卸値上昇分をそのまま小売価格に転嫁せざるを得ない立場。しかも今回のように複数社が同時期に追随する動きは、「自社だけ値上げすると売れなくなる」という横並び心理も働いていそうだ。
従来なら「型落ちを待てば安くなる」に加えて「次世代が出れば型落ちがさらに値崩れする」という2段構えの逃げ道があったが、今回はその前提自体が怪しくなっている。
RTX50 SUPERは噂が先行するばかりで正式な発売時期が固まらず、次世代のRTX60/RDNA5待ちをしている層にとっては「いつまで待てばいいか分からない」状態が続いている。
買い控えという選択肢が実質的に機能しなくなっている点が、今回の値上げを単発のニュース以上に効いてくる要素にしている。
「型落ちを待つ」も「新型を待つ」も両方塞がれると、残る選択肢は「今買うか、諦めるか」の二択しかないという、身も蓋もない結論に行き着く。
RTX5070はもともと549ドルで発売されたが、2025年11月時点では480ドル程度まで下がっていた。それが直近ではNewegg中央値で900ドル近くまで上昇しており、発売時から見ても6割超の値上がりという計算になる。
日本の読者にとってはここに為替の要素が重なる。ドル建てで90ドルの値上げでも、円安局面では円換算の負担増がさらに大きく見える。「メモリ高騰」と「円安」の二重苦という、このブログで繰り返し扱ってきた構図がそのまま当てはまる。
「今月はまだ値上げしていません」という会社を探す方が難しくなってきた気がするが、気のせいだろうか
「型落ちを待てば安くなる」という消費者の常識が、少なくとも今のGPU市場では通用しなくなっている