
■事実
モッダー「danielblnc」がツール「DLSS-NR on AMD」をGitHubで公開し、AMD Radeon RX 9000シリーズ(RDNA4)でNVIDIAのDLSS5ニューラルレンダリング(NR)を動作させることに成功しました。
導入方法は単純で、"dlssnr_on_amd_setup.exe"とNVIDIA純正の"nvngx_dlssnr.dll"をゲームの実行ファイルフォルダに置くだけです。
有効化後はFSR3またはFSR4のプロファイル経由でニューラルレンダリングをオン/オフでき、Endキーで設定用オーバーレイを呼び出せます。
現時点でCyberpunk 2077とGrand Theft Auto V: Enhancedの2タイトルで動作確認済みです。
対応GPUはRadeon RX 9000シリーズ(RDNA4)のみ。RX 7000シリーズ(RDNA3)は未検証、それより古い世代は非対応と明記しています。
YouTuber「Ancient Gameplays」の検証によると、Cyberpunk 2077・1080pにて初期ビルドはネイティブ80fps超から11〜12fpsまで低下しています。
最新のAlpha v0.2.7では性能が改善し、約28〜30fpsまで回復しました。(初期比で約12%の性能改善)
開発者は最終目標として「RTX 5070 Ti相当の性能」を掲げています。
画質は公式DLSS5実装とほぼ同等だが、一部エフェクトは完全には再現されていません。
アンチチート搭載タイトルではDLLがブロックされるため、現状はシングルプレイ専用でする
この移植が可能な技術的根拠は、DLSS5がFP8演算をベースとしており、RDNA4アーキテクチャがNVIDIA Blackwell/Ada世代同様にFP8命令をネイティブサポートしていることです。
比較表(DLSS5ニューラルレンダリングの対応状況)
| プラットフォーム | 公式対応状況 | モッドでの動作 | 備考 |
|---|---|---|---|
| GeForce RTX50シリーズ(Blackwell) | 公式対応(NBA 2K27のみ、9/3ローンチ) | ― | NVIDIAの現行最優先ターゲット |
| GeForce RTX40シリーズ(Ada) | 対応予定を表明(時期未定) | 動作、性能低下は約36〜39% | FP8をネイティブサポート |
| GeForce RTX30シリーズ(Ampere) | 未定 | 動作するが性能低下が深刻 | FP8非対応で代替処理のため劣化大 |
| GeForce RTX20シリーズ(Turing) | 非対応方針 | 一部動作報告あり | Tensorコア世代が古い |
| Radeon RX9000シリーズ(RDNA4) | NVIDIA非関与・非公式 | 動作、1080pで約28〜30fps | FP8をネイティブサポート |
| Radeon RX7000以前(RDNA3以前) | 非対応 | 未検証/非対応 | FP8命令セットなし |
ソース:
- https://github.com/danielblnc/DLSS-NR-on-AMD
解説
時系列を縦糸にすると整理しやすい:3月のDLSS5発表時点でNVIDIAは「Blackwell専用」と明言→9月3日にNBA 2K27でRTX50限定として正式ローンチ→その直後からモッダーがRTX40/30/20への移植に成功→NVIDIAが「RTX40への公式対応は検討中(時期未定)」と表明→さらに数日でAMD RX9000シリーズにも到達、という順番で「専用」の建前が段階的に崩れていった流れだ。
NVIDIAは「DLSS5は過去最大・最重量級のモデルで、まずBlackwellの最適化を優先している」と説明しているが、FP8さえあれば他社ハードウェアでも動いてしまう時点で、この「専用」は技術的な壁ではなくビジネス上の製品差別化戦略だったことが露呈した形だ。
RTX50シリーズの付加価値として売っている機能が他社GPUで(性能は低いとはいえ)動いてしまうのは看過しづらいはずだが、公式DLLをそのまま使う形式のため著作権的な対処が難しく、事実上黙認に近い状態になりやすい。
現状30fps程度では実用というより「話のネタ」レベルだが、これまで「NVIDIA専用の壁」だった機能が自分のGPUで一応動くという体験自体に心理的な価値がある。ただしAMD自身は何もしておらず、あくまでコミュニティの持ち込み企画だ。
アンチチート対応タイトルでは使えないため、実務的なインパクトは限定的。今のところシングルプレイのビジュアル鑑賞用途に留まる、というのが実態に近い。
過去にFSR4をRDNA4専用に絞ったAMDと、今回「専用」の看板を崩されているNVIDIAという構図は対照的で、独自技術の囲い込みという発想自体が近年どちらの陣営にとっても長続きしにくくなっている印象だ。
「Blackwell専用」と言われた機能がものの数日で赤いロゴのGPUで動いてしまうあたり、排他性というのは物理法則ではなくソフトウェアの都合に過ぎなかったという、ちょっと拍子抜けするオチ。
「専用」の看板はマーケティング上の看板であって、技術的な壁ではなかった、というのが今回はっきりした。