メモリ関係

IntelがSoftBank子会社と提携、次世代メモリ「ZAM」でメモリ市場に40年ぶり復帰へ

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次世代メモリチップ製造施設

■事実

Intelは2月3日、SoftBankの子会社であるSaimemoryと次世代メモリ技術「Z-Angle Memory(ZAM)」の商用化に向けた協力協定を締結したと発表した。

Saimemoryは2024年12月に設立されたばかりのSoftBankの完全子会社で、次世代メモリ技術の研究開発を推進している。

ZAMは、AI向けデータセンターで現在主流となっているHBM(High Bandwidth Memory)に対抗する新しい垂直積層型メモリ技術として開発される。

IntelとSaimemoryは2025年半ばから共同でプロトタイプの開発を開始しており、Intelのパッケージング技術と日本の特許を活用している。

ZAMの開発は、米国エネルギー省(DoE)と国家核安全保障局が管理するAdvanced Memory Technology(AMT)プログラムの下で実施されたIntelのNext Generation DRAM Bonding(NGDB)イニシアチブに基づいている。

このNGDBでは、サンディア国立研究所、ローレンス・リバモア国立研究所、ロスアラモス国立研究所が支援を提供している。

Saimemoryは2028年3月期末までにプロトタイプを完成させ、2029年3月期での商用化を目指している。

発表後、SoftBankの株価は5.13%上昇し、Intelの株価はRobinhoodの時間外取引で5%上昇した。

ZAMはHBMと比較して、容量が2〜3倍、帯域幅がより高く、消費電力が約半分になると報じられている。

製造コストについても、HBMより最大60%安くなる可能性があるとされている。

ZAMは単一チップあたり最大512GBのストレージを実現できる見込みだ。

IntelのEMIB(Embedded Multi-Die Interconnect Bridge)技術を使用して、個々のチップ間のレイテンシを削減する。

ZAMはキャパシタレス設計を採用し、EMIBを使用してメモリをAIチップに接続する。

従来のメモリアーキテクチャでは、接続が垂直に貫通する構造だったが、ZAMでは斜め方向にルーティングする「Z-Angle」アプローチを採用している。

この斜めのインターコネクトトポロジーにより、シリコン面積のより多くの部分をメモリセルに使用でき、より高い密度と低い熱抵抗を実現できる。

銅対銅のハイブリッドボンディングを使用することで、より効率的な層間融合を実現し、別々のスタックではなく「モノリシックに近い」シリコンブロックを作成する。

協力には、富士通、PowerChip Semiconductor Manufacturing、Shinko Electric Industries、東京大学などの企業や研究機関が参加している。

SoftBankは2025年半ばに、Intelのチップ製造事業を強化するため20億ドルの投資を行うことに合意していた。

SoftBankは今後2年間で最大30億円をこのプロジェクトに投資する計画だ。

IntelのCEOを務めていたPat Gelsingerは2024年末に退任しており、現在Intelは経営体制の再構築を進めている。

Intelは1985年にDRAM事業から撤退して以来、約40年ぶりにメモリ市場への本格的な参入となる。

Intelは1968年の創業当初、メモリチップメーカーとして事業を開始し、1970年に最初の商用DRAM「Intel 1103」を発表した。

1970年代半ばまでIntelはDRAM市場を支配していたが、1980年代初頭に日本メーカーとの競争で市場シェアを急速に失った。

Intelの市場シェアは1970年代の80%以上から1984年には2〜3%まで低下した。

1985年、当時のCEOゴードン・ムーアとCOOアンディ・グローブは、DRAM事業からの撤退を決断した。

1985年のIntelの1株当たり利益は0.01ドルまで急落し、1986年には1億7300万ドルの損失を計上した。

DRAM事業撤退後、Intelはマイクロプロセッサ事業に注力し、x86プロセッサでPC市場を支配することになった。

現在のメモリ市場は、AI向けデータセンター建設の急拡大により、2026年まで深刻な供給不足に直面している。

主要メモリメーカーであるSamsung Electronics、SK hynix、Micron Technologyの3社は、2026年のHBM生産能力がすでに完売している。

Micronは2025年12月、消費者向けメモリ市場から撤退し、AI向けデータセンター顧客に集中すると発表した。

HBMの製造には、標準DRAMと比較してギガバイトあたり約3倍のウェハー容量が必要とされている。

メモリメーカーがHBM生産に製造能力を振り向けた結果、従来のDDR4やDDR5モジュールの供給が急激に収縮している。

2025年を通じてDRAM価格は172%上昇し、NAND価格も大幅に上昇した。

2026年第1四半期のDRAM平均価格は、2025年第4四半期と比較して50〜55%上昇すると予測されている。

AI向けメモリ需要は、2026年に全世界のDRAM生産能力の約20%を消費すると推定されている。

NVIDIAは最近発表したRubin GPUで、1チップあたり最大288GBの次世代HBM4メモリを搭載している。

SK hynixは2025年の市場シェア53%でHBM市場をリードしており、Samsungが35%、Micronが11%と続いている。

Samsungは2026年に生産能力を約50%拡大する計画を発表している。

SK hynixは以前発表した金額の4倍以上をインフラ投資に投入する計画だ。

Samsungは2028年に京畿道平沢のP5施設を、SK hynixは2027年半ばにM15X施設を稼働させる予定だ。

解説

Z-Angleメモリアーキテクチャの技術図解

正直に言うと、この提携には全く魅力を感じないですね。

Intelのメモリ市場復帰という話は、一見すると戦略的に見えますが、実態は「今儲かりそうだから飛びつく」という場当たり的な判断にしか見えません。

最近のIntelは本当にツキに見放されています。

OpenAIへの投資機会を蹴ったことが象徴的ですが、それ以降、判断ミスが続いているように見えます。

Pat Gelsingerが退任に追い込まれたのも、こうした戦略の迷走が背景にあるでしょう。

今回のZAM計画で最大の問題は、タイミングが完全にズレていることです。

プロトタイプ完成が2027年度、商用化が2029年度。

現在のDRAM不足は2026〜2027年がピークと言われていますが、2029年になれば解消されている可能性が高いです。

Samsung、SK hynix、Micronは既に大規模な生産能力拡張を進めており、2027〜2028年に新工場が稼働し始めます。

つまり、ZAMが市場に出る頃には、供給過剰になっているかもしれないってことです。

過去のメモリ市場を見れば分かりますが、この業界は極端なブーム・バストサイクルを繰り返してきました。

今は需要が供給を大きく上回っていますが、2029年には逆転している可能性が十分にあります。

そのタイミングで高コストの新技術を投入して、本当に競争力があるんでしょうか?

「HBMより60%安い」という数字も、2029年時点のHBM価格と比較してどうなのかという視点が必要です。

現在HBMが高価なのは供給不足が主因で、供給が正常化すれば価格は大幅に下がるはずです。

技術的な差別化についても疑問があります。

ZAMの採用にはIntelのEMIB技術が必要になるということは、顧客がIntelのパッケージング技術に依存することを意味します。

NVIDIAのような業界リーダーが、競合であるIntelの技術に依存するでしょうか?

現実的には、まずSoftBankの独自ASIC「Izanagi」で採用されるでしょうが、それだけでは市場への影響は限定的です。

要するに、大口顧客を獲得できなければ、このプロジェクトは失敗に終わるリスクが高いってことです。

IntelとSoftBankの組み合わせも、率直に言って不安要素が多いです。

Intelは経営再建の真っ最中で、長期的なコミットメントを維持できるのか疑問があります。

CEOが交代したばかりで、新経営陣がこのプロジェクトを継続する保証はありません。

一方のSoftBankも、最近の戦略には一貫性が感じられないですね。

中東から大規模な資金調達を行って以降、なりふり構わず様々な分野に投資しているように見えます。

かつての孫正義氏のカリスマ的な先見性は、最近の投資判断からは感じられなくなってきました。

WeWorkの大失敗以降、SoftBankの投資判断に対する信頼性は大きく低下しています。

今回のZAMプロジェクトも、「AI関連ならとりあえず投資」という姿勢の延長線上に見えてしまいます。

30億円という投資額も、本気度という点では疑問符がつきます。

半導体の製造設備への投資としては小さすぎて、本格的な量産体制を構築するには全く不十分です。

結局のところ、技術検証レベルのプロジェクトに留まる可能性が高いでしょう。

米国政府のAMTプログラムの支援を受けているという点は、プロジェクトの継続性という意味では多少プラスかもしれません。

しかし、政府の支援があっても商業的に成功するとは限りません。

過去には政府支援を受けながら失敗した半導体プロジェクトは数多くあります。

もう一つ気になるのは、Intelが40年前にDRAM事業から撤退した理由が、今回も繰り返される可能性があることです。

1985年の撤退は、日本メーカーとの価格競争に敗れたことが原因でした。

当時のIntelは技術力はあったものの、コスト競争では勝てませんでした。

今回も同じ構図になる可能性があります。

Samsung、SK hynix、Micronは長年メモリ製造に特化してきた企業で、製造コストの最適化では圧倒的な優位性があります。

Intelが新技術で参入しても、最終的にはコスト競争に巻き込まれるでしょう。

その時にIntelが勝てるのか、という根本的な疑問があります。

個人的には、Intelがやるべきことは他にあると思います。

経営再建中の企業が、新しい分野に手を広げるのはリスクが大きすぎます。

コアビジネスであるプロセッサ事業の競争力回復に集中すべきでしょう。

AMDに市場シェアを奪われ続けている現状を考えれば、メモリ事業に手を出している場合ではないはずです。

結論として、このZAMプロジェクトは成功する可能性が低いと見ています。

タイミングのミスマッチ、顧客獲得の難しさ、両社の戦略的な不安定さ、そして投資規模の不十分さ。

これらの要因を考えると、2029年に商用化される頃には、誰もこのプロジェクトのことを覚えていないかもしれません。

むしろ、「またIntelとSoftBankが無駄な投資をした」と言われる未来の方が現実的に思えます。

40年前のDRAM撤退の歴史を繰り返すことにならなければいいのですが、その可能性は決して低くないでしょうね。

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