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AIが引き起こすメモリ危機——Phison CEOが警告する「消費電子機器の大量死」と2030年以降まで続く供給不足

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メモリ供給危機を象徴するイメージ

■事実

Phison Electronicsの創業者兼CEO、パン・チェンセイ氏(英語圏ではPua Khein-Sengとも表記)が中国系メディアの番組「ChenTalkShow」に出演し、DRAMおよびNAND Flash市場の現状と今後の見通しについて衝撃的な予測を語った。

同氏の発言によれば、現在のメモリ供給不足は一時的な需給のミスマッチではなく、AI需要を起因とする構造的な変化であり、メーカー内部では不足が2030年まで続くと見ており、最悪の場合は「10年単位で終わりが見えない」との見通しを持つ関係者もいるという。

供給逼迫の深刻さは前例のない商慣行として現れており、DRAMおよびNANDメーカーが顧客に対して「3年分の前払い」を要求するケースが出てきている。

パン氏はこの状況を「電子業界史上、かつてなかった」売り手市場と表現した。

Phison自身もDRAMの確保に苦しんでおり、AIサーバーの拡充に必要なDRAMの充足率が30%を下回ることもあったという。

価格面では、8GB eMMCが2025年初頭の約1.5ドルから現在は約20ドルまで急騰しており、車載グレードでは24〜30ドルに迫る状況だ。

パン氏は消費電子機器メーカーへの影響について、「大量死が起きる」と表現した。

今年末から2026年にかけて、メモリを確保できない多数のシステムメーカーが廃業または製品ラインを撤退すると予測している。

2026年後半には利幅の薄いブランドが大量に市場から退出し、ローエンド製品が消滅することで「市場の真空地帯」が生じると見ている。

スマートフォンの生産台数は2〜2.5億台規模で減少し、PCやテレビでも大幅な生産縮小が生じると予測された。

メモリがスマートフォンの部品コストに占める割合は20%以上に達しており、これはサーバー向けの5〜6%と比較して圧倒的に高い。

この構造的な違いにより、データセンター事業者のほうが高い調達力を持ち、消費電子機器メーカーは供給確保の優先順位で劣後する形となっている。

供給制約が長期化することで、消費者が製品を買い替えるよりも修理・継続使用を選ぶようになり、デバイスの使用期間が伸びるという副次的な影響も指摘された。

現代的なデータセンターに設置されたNVIDIA Vera Rubin NVL72ラックスケールAIサーバーシステム

パン氏は現在の危機を加速させる具体的な要因として、NVIDIAのVera Rubin AIプラットフォームを挙げた。

CES 2026でNVIDIAが発表したVera Rubin NVL72は、72基のRubin GPUと36基のVera CPUで構成されるラックスケールのAIシステムで、すでに2026年前半から主要クラウドパートナーへの展開が始まっている。

NVIDIAのAI推論向けシステムであるICMS(Inference Content Management System)の運用には1台のVera Rubinサーバーあたり1,152TB規模のSSD NANDが必要になるとのCiti試算があり、2026年に3万台、2027年に10万台が出荷されると仮定した場合、それぞれ全世界のNAND需要の2.8%、9.3%相当を消費する計算になる。

パン氏の独自試算では、Vera RubinがGPU単位で20TB超のSSDと対になって稼働すると想定した場合、1,000万台の出荷で昨年の全世界NAND生産量の約20%に相当する容量が消費されることになると述べた。

AIの推論フェーズは学習フェーズと比較してサーバー台数が飛躍的に多くなるため、KVキャッシュ用のメモリ需要が今後さらに爆発的に増加するとの見通しも示された。

Samsung、Micron、SK hynix、Kioxia、YMTCなどの主要メーカーが設備投資を発表しているが、発表から量産開始まで最低2年かかるうえ、製造装置自体も逼迫しているため、短期的な供給増加は見込めない状況だ。

パン氏はエンタープライズ需要がまだ完全に「織り込まれていない」と強調し、今後の需要爆発が一層の供給不足を招くと結論づけた。


■解説

正直、これは予想の範囲内だった部分と、想定以上に深刻な部分が混在しています。

「前払い3年」というのは本当に異例で、これがどれだけ異常な状況かは業界の人間でないとピンと来ないかもしれません。

通常の部品調達は数ヶ月単位の発注が当たり前の世界で、3年先の分まで先払いを迫られるというのは、ほとんど「お金を積んでも物が買えない」という状態に近い。

「2030年まで続く」というのも衝撃的ですが、個人的にはそれ以上に注目したいのは「エンタープライズ需要がまだ織り込まれていない」という発言です。

今の価格高騰はあくまで「現時点でわかっている需要」に基づいたものであり、Vera Rubinの本格展開やそれ以降のFeynmanアーキテクチャまで考えると、まだ序章に過ぎないという話になります。

消費電子側の話で言えば、スマホのコスト構造に占めるメモリの割合が20%超というのは見落とされがちな数字です。

データセンターのサーバーはDRAM比率が5〜6%程度なので、AI事業者は多少の価格高騰をコストとして吸収できる。

でも、スマホや安価なPC・テレビを作っているメーカーはそうはいかない。

利幅が薄い製品を作っているブランドにとっては、メモリが手に入らない=事業継続不可能、という直接的な話になるわけです。

Phison自体はSSDコントローラーと白ラベルSSDの大手メーカーで、NANDウェーハメーカーと消費者・エンタープライズ向けSSDメーカーの間に位置しています。

つまり川上と川下の両方を見ている企業の経営トップが「前例のない売り手市場」と言っているのは、単なる警鐘ではなく、実際の調達現場からの生々しい証言として受け取るべきでしょう。

では私たち消費者にとって何が変わるのか、という話をすると——まずSSDとDRAMの価格は今後も上昇圧力が続くと見るのが現実的です。

現在でも新しいPCを組もうとすると、以前と比べてRAMとSSDのコストが以上に重くのしかかっています。

これが2030年まで続くのであれば、「メモリを奢る」という選択肢は贅沢ではなく、機器の延命戦略として合理的になってきます。

新製品を買うより今の機器を修理・アップグレードする方がコスパが良い、という状況が本格的に到来するかもしれません。

ローエンド帯の製品が「消える」という予測が現実になれば、エントリー価格帯の選択肢が急減して、必然的に中間価格帯の製品に流れることになります。

消費者にとっては選択肢の喪失であり、市場としては低価格競争の終焉を意味します。

個人的には、この局面で注目しているのは中国メモリメーカーの動向です。

CXMTをはじめとする中国勢が増産に動いており、西側主要メーカーとは異なる価格戦略で市場に供給を投入する可能性がある。

ただし品質や互換性の問題もあるため、ハイエンド向けには使いにくい部分も残ります。

要するに、今の状況はAIインフラへの投資ラッシュが引き起こした「インフラ優先・消費者後回し」の構造転換であり、それが2030年以降まで続く可能性がある、ということです。

半導体業界をウォッチしてきた視点からすると、これはサイクルの話ではなく、本当にゲームのルールが変わっている話として受け止めています。

ソース: https://x.com/QQ_Timmy/status/2022474577742639136

 

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