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Kirin 9050、A18 Proを超えるとのリーク——HuaweiのLogicFolding技術とτスケーリング則が問うもの

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中国製半導体チップのコンセプトアート。ネオンブルーに光る3D垂直積層レイヤーが超高層ビルのように折り重なる回路。

■事実

中信証券(CITIC Securities)アナリストの于芳博氏が、HuaweiのKirin 9050はAppleのA18 Proを上回る性能を示しているとリーク。搭載端末はMate 90シリーズです。

于氏の発言によると、Kirin 9050のテスト結果はA18 Pro(2024年9月発表、TSMC 3nmプロセス製造)を超え、TSMCの3nmプロセス製チップの性能水準に匹敵するとされています。

ただし、どのテストを実施したか・電力消費量はいずれも非公表。比較の客観性は現時点で検証不能です。

Kirin 9050には3D IC積層技術が採用される見込み。これはトランジスタを垂直方向に積み上げることで、EUV露光装置なしに密度と性能を向上させる手法です。

Huaweiはこの設計アプローチを「LogicFolding(論理折り畳み)」と命名。2026年5月25日、上海で開催されたIEEE国際回路・システムシンポジウム(ISCAS)でHiSilicon社長の何庭波(He Tingbo)氏がキーノートで公式発表しました。

LogicFolding の技術的な効果(Huawei公称値):トランジスタ密度53.5%向上、クロック速度12.7%向上です。(性能コアが3.10GHz動作)

Huaweiはこの取り組みを「τ(タウ)スケーリング則」として定式化。従来のMoore's Law(トランジスタの物理縮小)に代わり、信号伝搬遅延(τ)の圧縮を指針とする新原則として提唱しています。

Huaweiは過去6年間でこのアプローチを使って381チップを設計・量産済みと主張。LogicFolding搭載の新Kirinチップシリーズは2026年秋に発売予定です。

2031年の目標として、τスケーリング則に基づく高性能チップで「1.4nm相当のトランジスタ密度」を達成することを掲げている——ただしこれはTSMC方式の1.4nmプロセスでの製造ではなく、設計・積層技術による等価密度という意味です。

SMICは現在、EUV装置なしにDUV(波長193nm)マルチパターニングとDTCO(設計技術コデザイン最適化)を組み合わせて回路を形成しています。

TechInsightsの分析によると、直近のKirin 9030に使われたSMIC N+3プロセスのトランジスタ密度は約125 MTr/mm²。TSMCやSamsungの5nmを下回り、7nmの延長線上にあります。

DUVマルチパターニングは工程が複雑なぶん、歩留まり(良品率)が低下するリスクを抱えており、高性能AIチップでは20%程度まで落ちる可能性も指摘されています。

Kirin世代とSMICプロセスの関係

チップ搭載端末SMICプロセス備考
Kirin 9000Mate 40(2020年)N+1(7nm級)量産実績あり
Kirin 9010Mate 60(2023年)N+2(7nm級)5G復活で話題に
Kirin 9030Mate 80(2025年)N+3(7〜5nm中間)TechInsights分析済み
Kirin 9050Mate 90(予定)未確認(LogicFolding採用か)本リークの対象

ソース https://x.com/szslg/status/2058898301974720689

解説

「A18 Proを上回った」という主張は、テスト条件と電力が不明な時点ではほぼ無意味——電力無制限ならSamsung Exynos 2600のエンジニアリングサンプルでさえApple M5超えのリークが出る世界だ。

スマートフォンの現実は厳しい:薄い筐体、小容量バッテリー、熱設計の限界の中で動く。「測定室の記録」と「実機の体験」は別物だ。

一方、LogicFolding自体の技術的な意義は本物。EUVなしに密度を53%上げる方向性は、単なる宣伝ではなく6年・381チップという裏付けがある——信頼できる根拠の重さが通常のリークとは異なる。

τスケーリング則は「Mooreの法則が死んだあとに何を最適化指標にするか」という本質的な問いへの一つの回答。業界全体がChiplet・先端パッケージ・3D積層へ向かっているのと方向性は同じだが、制裁というハードな制約から生まれた点が独自だ。

2031年「1.4nm相当」という目標は、節点(ノード)の名前ゲームに乗らないHuaweiの立場を示している。TSMCが「3nm」「2nm」と称するのも実際の物理寸法ではない——フェアな比較軸をトランジスタ密度に統一しようとする試み自体は評価できる。

SMICのDUVマルチパターニングの限界は既に指摘されており、Kirin 9030の時点でTSMC 5nmに及ばない。LogicFoldingはその正攻法限界を「設計で迂回する」戦略——物理的な制約を知恵で補うのが中国半導体の現在地だ。

Kirin 9050が本当にA18 Proを超えるかどうかよりも、「EUV不使用でどこまで詰めてくるか」というゲームの方が長期的には重要だ。2026年秋の発売が事実上の判定日になる。

電力無制限で計測した結果「A18 Proを超えた」——同じ条件なら家庭用の電子レンジも相当なスコアを出せそうな気がする。

情報源の構造自体が不透明で、「アナリストがリーク」→「リークをSNSに投稿(@szslg)」→「それを海外メディアが報道」という多段伝言ゲームで、一次データは誰も見ていない。

中国の技術発表には「tatemae(建前)とhonne(本音)」の二重構造がある——対外的な誇示と実際の歩留まり・量産コストが乖離している事例は枚挙にいとまがない。

Kirin 9030(N+3)の時点でTSMC 5nmに及ばないことが第三者(TechInsights)によって確認されている。9050がその延長線上にある限り、A18 Proとの正面対決でフラットな比較が成立するかは根本から疑わしい。

LogicFoldingの技術自体は本物として、それがKirin 9050に量産レベルで乗るかどうかはまた別の話——「発表した」と「出荷した」の間には常に中国半導体特有の距離感がある。

「期待させておいて、蓋を開けたら7nmの延長でした」は過去に一度やっているので、同じパターンを踏む可能性を割り引いて読むのが正直なところ。

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