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CDの売上が急増、フィジカルメディア復権が継続

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木製の棚に積まれたCDケースとアルバムジャケットの静物写真。温かみのある照明、フィルム調の質感で懐かしいアナログの雰囲気を演出

■事実

RIAA(全米レコード協会)が2026年9月1日、2026年上半期(1〜6月)の米国音楽産業売上レポートを発表しました。

米国レコード音楽の総売上(卸売ベース)は60億ドルで、前年同期比6.9%増です。(米インフレ率を上回る伸び)

ストリーミングは49億ドルで全体の82%を占め、依然として最大の収益源です。(前年比4.7%増)

有料プレミアム定額サービス(Spotify・Apple Music等)は31.1億ドルで前年比7.8%増、契約者数は1.111億件です。(前年比5.5%増)

Spotify・YouTube Music・Amazon Music Unlimitedなど主要サービスが2026年上半期に相次いで値上げを実施しており、これが定額収益の伸び率を押し上げた一因です。

非プレミアム定額(音楽が主目的でないバンドル契約)は2.391億ドルで前年比9%減です。

フィジカル(物理メディア)売上全体は前年比25.9%増です。

CDの売上(卸売金額)は1.711億ドルで前年比58.6%増、増加率は全カテゴリー中最大です。

前年同期のCD売上は1.079億ドルでした。

アナログレコード(LP)の売上は5.54億ドルで前年比17.7%増。金額規模ではCDの3倍以上で、フィジカル音楽の主力は依然としてレコードです。

別の調査会社Luminate(旧Nielsen SoundScan)の集計では、米国のCD販売枚数は2026年上半期に1630万枚で前年比16%増、これに対しレコード販売枚数の伸びは2.4%増にとどまり、CDの枚数成長率はレコードの約7倍です。

CD販売金額の伸び率(58.6%)が販売枚数の伸び率(16%)を大きく上回っており、CD1枚あたりの平均単価が上昇していることを示しています。

Luminateによれば、K-popのリリースが米国CD市場全体の約10%を占め、BTSのカムバックアルバム「ARIRANG」だけで56.7万枚を販売です。

ENHYPENやATEEZなど他のK-popグループの新譜も大手量販店(Target・Walmart)への集客を牽引し、物理音楽市場のうち約30%をK-pop関連が占めました。

K-pop分を除いても米国のCD販売枚数は前年比6.7%増となっており、K-popだけが牽引要因ではないことが分かります。

Luminateの調査で、CD購入者のうちZ世代・ミレニアル世代の約半数がCDプレーヤーを所有していないと回答しました。

Z世代(13〜24歳)の34%が過去1年間にCDを購入したと回答しました。(2023年時点の22%から増加)

英国でもHMVなど大手小売でK-pop関連CDが売上を牽引し、2026年上半期の来店者数は前年比12%増です。(年間5000万人来店ペース)

日本の音楽ソフト(CD・レコード等の物理メディア)市場は2025年通期(1〜12月)で推計3988億円、内訳は音楽ソフト(フィジカル)57%・音楽配信43%で、フィジカルが配信を上回る構成です。

日本のCDアルバム売上は2025年通期で前年比121%(金額ベース)と大幅増加、日本レコード協会は2019年以来最高水準と発表しました・

表(比較参考・任意使用)

項目2025年上半期2026年上半期増減率
CD売上金額(米国・卸売)1.079億ドル1.711億ドル+58.6%
レコード売上金額(米国・卸売)4.71億ドル5.54億ドル+17.7%
CD販売枚数(米国)1400万枚1630万枚+16%
レコード販売枚数(米国)約2590万枚約2650万枚+2.4%
ストリーミング売上(米国・卸売)46.8億ドル49億ドル+4.7%

ソース:

  • RIAA 2026年上半期レコード音楽売上レポート: https://www.musicbusinessworldwide.com/subscription-streaming-generated-20216-riaa/

解説

因果構造を整理すると、この現象で得をしているのは「レコード会社・K-popエージェンシー(HYBE等)」「大手量販店(Target・Walmart・HMV)」であり、コストを払っているのは「複数バージョンを買わされるファン」という構図だ。

CD販売枚数の伸び(16%)よりも売上金額の伸び(58.6%)の方が圧倒的に大きいという事実が最大のポイント。「CDがたくさん売れている」のではなく「1枚あたりの単価が上がっている」現象として読むべき。

K-popの複数バージョン商法(フォトカード・ポスター同梱で同じ曲を何パターンも出す)が単価上昇の主因。これは音楽を売っているというより、実質的にはランダム封入のコレクターズグッズ商法に近い。

 

ストリーミングの印税単価が低いのは周知の事実で、フィジカル商品はアーティスト側・レーベル側にとって高マージンな収益源。複数バージョン展開はファンの「コンプリート欲」を狙った合理的なビジネス判断だ。

 

CD購入者の半数がCDプレーヤーを持っていないというデータが象徴的。これはもう「音楽を聴くための媒体」ではなく「所有できる推しグッズ」としてCDが再定義されている。

 

Spotify・YouTube Music・Amazon Musicが軒並み値上げしたことが定額収益の伸びの一因という記述は見過ごせない。フィジカル回帰の裏で「サブスクも実は値上げが続いている」という同時進行の現象がある。

ここで「所有とアクセスの違い」という論点に接続できる。ストリーミングは利用権のレンタルであり、契約解除やライセンス切れで手元から消える。CDは一度買えば物理的に手元に残る。この「所有権 vs アクセス権」という構図は、当ブログがDLSSやCUDAロックインを語るときに繰り返し使ってきた枠組みと同じ根っこの話だ。

 

日本は2019年頃からすでに音楽ソフト(フィジカル)が音楽配信を上回る逆転状態が続いており、2025年実績でも音楽ソフト比率57%・CDアルバムは前年比121%増。つまり米国が今「発見」している現象を、日本市場はここ数年ずっと経験していたとも言える。

日本の場合はK-pop要因というよりジャニーズ系・アイドル文化由来の「特典商法」(特典券・握手会券封入など)が先行しており、今回の米国のK-pop型CD商法とほぼ同じロジックが数年先行して定着していた。

 

ストリーミング時代に「CDを聴くために買っていない人が半分」という状況は、ある意味「NFTに近い」構造とも言える。中身(音源)はどうせSpotifyで聴くのに、所有証明としてのディスクだけを買っている。

全体感として、物理メディア回帰は牧歌的な「アナログ回帰」ではなく、ストリーミング経済の限界(低印税・所有権の欠如)をファン側とレーベル側の双方が別々の理由から埋め合わせている現象として読むのが実態に近い。

 

「CDが売れている」というニュースの中身をよく見ると、実はCDを聴く人が増えているわけではなく、CDを"買う"人が増えているだけ、というのが今回の一番皮肉なポイントかもしれない。

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