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RISC-Vという“休戦協定”――米中テック大手はなぜ同じテーブルに着けるのか

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米中の協調と競合を象徴する、青と赤の光が絡み合う半導体プロセッサダイの抽象的なイメージ。未来的な回路パターンとネットワーク接続線を描いたヘッダー用画像

■事実

2026年7月8日、アリババ副総裁・達摩院玄鉄チーム責任者の戚肖寧氏が、サウスチャイナ・モーニング・ポスト主催「China Conference 2026」で発言しています。

米国・中国・インド・欧州(一部報道ではブラジルも)の企業が、RISC-Vアーキテクチャを「統一エコシステム」として共同開発していると説明しています。

RISC-VはBSDライセンスに基づくオープン標準の命令セットアーキテクチャで、誰でも無償で利用・改変が可能です。

RISC-V Internationalには「プレミアム会員」24社が参加、米国側はQualcomm・Intel・Google・NVIDIA、中国側はAlibaba・Huawei・Tencent・ZTEなどが名を連ねています。

命令セット仕様を策定する技術運営委員会(TSC)にも米中双方の企業が参加しています。

2025年10月、MetaがRISC-VベースのAIアクセラレータ開発企業「Rivos」を約20億ドルで買収。自社AIチップ「MTIA」の強化とNVIDIA依存の低減が狙いです。

2025年12月、QualcommがRISC-Vサーバー向けCPU設計企業「Ventana Micro Systems」を買収。Ventanaの高性能コア技術(最大32コア・3.85GHz動作の「Veyron V2」)を、自社カスタムCPU「Oryon」の取り組みに統合する方針です。

アリババは2026年3月26日、高性能64bit RISC-Vコア「玄鉄C950」(5nmプロセス、最大3.2GHz)を発表済みです。

戚肖寧氏は2025年7月の「第5回RISC-V中国サミット」で、2032年までにRISC-V採用の高性能SoCチップが200億個超・市場シェア25%超に達するとの見通しを提示していました。

一方で米国議会では、半導体関連の輸出規制を強化する法案(MATCH法案・STRIDE法案など)の審議が並行して進んでおり、対中輸出管理の枠組み見直しが続いています。

RISC-Vそのものを名指しした対中輸出規制は、現時点では法制化に至っていません。

表:RISC-V関連の主な買収動向

買収企業対象企業時期金額狙い
MetaRivos2025年10月約20億ドル自社AIチップ「MTIA」強化、NVIDIA依存の低減
QualcommVentana Micro Systems2025年12月非公表高性能RISC-VサーバーCPU技術の獲得、「Oryon」を補完

 

解説

RISC-Vが米中双方にとって都合よく見えるのは、「誰でも無償で使える」というBSDライセンスの性質そのものに理由がある。自主技術を求める中国と、標準の主導権を握りたい米国という、本来かみ合わないはずの思惑が同じ土俵に乗れる。

「統一エコシステム」という言葉は聞こえがいいが、実態は各社が自国・自社の利害を賭けて綱引きをしている場でもある。

Qualcomm・Meta・Googleが相次いでRISC-V関連企業を買収している動きの背景には、Armのライセンス費用やNVIDIA依存から抜け出したいという共通の焦りがある。

特にQualcommのVentana買収は象徴的。自社のArmベースCPU「Oryon」を持ちながら別アーキテクチャにも投資するのは、将来の選択肢を手放さないための保険とも読める。

中国側の狙いはよりシンプルで、Arm・x86のライセンス構造から独立した「頼れる第三の道」を確保すること。輸出規制で米国発アーキテクチャへのアクセスが制限されるリスクへの備えという側面が強い。

米国内でもRISC-Vへの向き合い方は一枚岩ではない。企業側は投資を続ける一方、議会では対中輸出規制の強化法案が並行して審議されており、産業界と政治の温度差がある。

「統一エコシステムです」と握手している当人たちが、実は握手する理由がそれぞれ違うというのは、ビジネスの世界ではよくある光景。

2032年に「200億個・シェア25%」という予測は威勢がいいが、命令セットが「オープン」であることと、実際に量産・供給網まで押さえられることは別問題。ソフトウェア資産の蓄積スピードのほうが普及の実質的なボトルネックになりそう。

規格を共有すること自体は平和的でも、その上で誰が主導権を握るかという競争は終わらない――RISC-Vという“休戦協定”の本質はそこにあるのかもしれません。

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