
■事実
NVIDIAが次世代データセンター向けCPU「Rosa」に、新設計コア「Rigel」を採用すると発表されました。
RosaはVera CPUの後継機で、「Feynman」世代(2028年ごろ市場投入見込み)に属する製品です。
データセンター向けRosaの実投入は2029年ごろ、PC向け派生の「Rosa Feynman Spark」は2030年ごろの見込みと報じられています。
RigelコアはArm v9.2命令セットに準拠しています。
Vera搭載の「Olympus」コアと同じダイ面積を維持しながら、コアあたりの性能をさらに引き上げる設計です。
主な改良点は、より効率的な命令供給、より大きなL2キャッシュ、メモリ処理の効率化です。
現行のVera CPUはNVIDIA自社設計の「Olympus」コアを88基搭載です。(汎用Armコア「Neoverse-V2」を採用する「Grace」とは異なる設計)
Olympusコアは1サイクルあたりの命令処理数(IPC)でGrace比約50%向上しています。
負荷の高いエージェント型AIワークロードにおいて、Veraはx86比で1.8倍のコアあたり持続性能を発揮するとNVIDIAは主張です。
NVIDIAはVera/Rosaを「並列処理の怪物」ではなく「大規模展開可能な最速のシングルスレッドCPU」と位置づけています。
コア間帯域は3.4TB/s、他のデータセンター向けCPUの3倍相当とNVIDIAは説明しています。
Rosaの主な用途は、自律的にコード生成・タスク実行・ワークフロー調整を行う「エージェント型AI」のホストCPUです。
表:ロードマップ比較
| CPU | コア設計 | 命令セット | 主な特徴 | 時期 |
|---|---|---|---|---|
| Grace | Neoverse-V2(汎用Armコア) | Armv9 | データセンター向け汎用CPU | 2023年〜 |
| Vera | Olympus(自社設計、88コア) | Armv9 | Grace比IPC約50%増、x86比1.8倍の持続性能 | 2025年発表 |
| Rosa | Rigel(自社設計) | Armv9.2 | Olympus同等ダイ面積でさらに性能向上、L2キャッシュ拡大 | 2028〜2029年 |
解説
さて、金満なNVIDIAが全力で開発した新ARMコアの威力はどのようなものなのか?
AMDとIntelが鍔ぜりあっているところにNVIDIAが札束で殴りこんでくるという構図で見ているだけならとても面白い。
自社に有利なテストをどのくらい入れられるのか?こうした政治力もCPUで勝つ有力な能力だろう。
ポイントは並列処理性能ではなく「1コアあたりの持続性能」であることに注意だ。AIエージェントは人間のように休まず逐次処理を続けるため、コア数よりも1コアの処理速度が効いてくる、というのがNVIDIAの理屈だ。
Intel・AMDのCPUはノートPC時代からの設計を引きずっており、休みなく回り続けるエージェント処理には最適化されていない、というのがNVIDIA側の主張の核だ。
L2キャッシュの拡大という改良点は、GPU業界で見てきた構図とよく似ている。コアあたりの処理能力を上げるほど、キャッシュに乗り切らないデータの扱いがボトルネックになりやすい。
2028〜2029年という投入時期は、AMD・Intelの次世代アーキテクチャとも競合するタイミング。現時点で「圧倒」と断言するにはまだ早い。
NVIDIAがCPUの名前を「Vera」「Rosa」「Rigel」と物理学者・天体にちなんで続けているのは、そろそろGPUの型番地獄から解放されたいという願いの表れなのかもしれない。
NVIDIAが自社設計コアにこだわる背景には、Armの汎用コア(Neoverse)だけでは差別化しづらいという事情がある。QualcommやAWS Gravitonなど他社も同様の道をたどっている。
「x86を圧倒する」というのは現時点の目標であって、まだベンチマーク結果ではない。答え合わせができるのは2028年以降、実機が出てからの話だ。