
■事実
Linuxカーネルの最新パッチに、次世代「Nova Lake」(Core Ultra 400系、カーネル上の識別子はFamily 18)がAVX-512対応のクライアントCPUとして明記されました。
パッチの内容はRAID演算(xor_gen)向けのAVX-512最適化パスの追加で、対応CPUとしてAMD Zen 4以降、Intel Sapphire Rapids以降のサーバー向けCPU、Rocket Lake(第11世代)、そしてNova Lake以降のクライアントCPUが列挙されています・
リーカーのJaykihn氏(X/旧Twitter)は、Nova LakeではP-コア・E-コアの両方でAVX10.2(AVX-512相当の命令セット)がネイティブ対応すると投稿し、複数の海外メディアがこれを後追いで報じました。
Intelは現時点でNova LakeのAVX-512対応を公式発表しておらず、今回の情報はあくまでLinuxパッチとリーク由来です。
Intelは2021年発売の第12世代Alder Lakeでハイブリッド構成(P-コア+E-コア)を採用した際、E-コアがAVX-512非対応だったためサポートを撤廃しました。
クライアント向けでAVX-512がネイティブ搭載された直近の世代は2020年発売の第11世代Core(Rocket Lake)で、以来約6年間、Intelのコンシューマー向けCPUはAVX-512非対応が続いていました。
Intelは2023年に新しいベクトル命令セット「AVX10」を発表。AVX-512の機能を引き継ぎつつ、P-コア・E-コアの両方に対応させる統合仕様として位置づけられています。
当初のAVX10.2仕様では、512bit幅の演算はP-コアのみに許可され、E-コアは256bit幅の「収斂(converged)」命令にとどまる計画でした。
今回判明したNova Lakeの実装は、P-コア・E-コアの双方がネイティブに512bit幅で演算する方向とされ、当初計画よりも踏み込んだ内容になっています。(正式仕様は未確定)
これが実現した場合、OSのスケジューラーがスレッドをP-コアからE-コアへ移動させてもAVX-512命令を使うプログラムがクラッシュする、という従来のハイブリッド構成特有の問題が解消されています。
Nova LakeはP-コアに新設計の「Coyote Cove」、E-コアに「Arctic Wolf」を採用し、最上位モデルは16P+32E+4LPEの52コア構成になると報じられています。
Intel CEOのリップ・ブー・タン氏は2026年1月の決算説明会でNova Lakeの2026年末投入を正式にコメント。デスクトップ向けは新ソケットLGA1954・Z990チップセットへの移行が見込まれています。
比較対象として、AMDはZen 4世代(2022年発売のRyzen 7000系)から既にクライアント向けCPUにAVX-512を導入済み。Zen 5(Ryzen 9000系)ではデスクトップ版がネイティブ512bit実行に対応しています。
Linux開発者による検証では、AVX-512最適化パスがAMD Ryzen 9 9950X(Zen 5)上で既存のAVX2実装比26〜43%高速化したと報告されています。
参考:Intel/AMDのAVX-512対応状況比較
| 世代 | メーカー | AVX-512(512bit)対応 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 第11世代Core (Rocket Lake/Tiger Lake、2020年) | Intel | ○(P-コアのみ/モノリシック構成) | ハイブリッド構成導入前、最後の対応世代 |
| 第12〜14世代Core+Arrow Lake (Alder〜Arrow Lake) | Intel | ×(BIOS・シリコン改訂で無効化) | E-コア非対応のため撤廃 |
| Zen 4 (Ryzen 7000系、2022年〜) | AMD | ○(256bit×2回で512bit相当処理) | クライアント初のAVX-512対応 |
| Zen 5 (Ryzen 9000系、2024年〜) | AMD | ○(デスクトップはネイティブ512bit実行) | モバイル版は256bit×2回方式 |
| Nova Lake (Core Ultra 400系、2026年末予定) | Intel | ○予定(P・E両コアでネイティブ512bit、未確定) | AVX10.2ベース、Linuxパッチで判明 |
解説
「6年ぶりの復活」という響きは景気が良いが、そもそも自分から撤廃したのはIntel自身の判断だったという点は最初に押さえておきたい
Alder Lake世代でE-コアがAVX-512に対応できず、BIOSアップデートとシリコンリビジョンで無理やり塞いだ経緯があり、「復活」というより「自分で壊したものをようやく直した」という表現の方が実態に近い。む
AVX-512はRPCS3などのエミュレータ、動画エンコード、暗号化処理、一部のAI推論など、対応ソフトウェアでは体感できるレベルの性能向上をもたらす命令セットだ。
一方でAVX-512は電力消費・発熱が大きく、初期実装では周波数低下(クロックスロットリング)を招きやすいという弱点があり、これがIntelが一度撤退した理由の一つでもある。Nova Lakeでこの問題がどこまで解決されているかは現時点では不明だ。
AMDはZen 4以降、既にクライアント向けCPUにAVX-512を提供しており、その間Intelのコンシューマー向けCPUだけが対応から取り残される形になっていた。今回はその差を埋める動きだ。
次世代ゲーム機のCPUコアでもAVX-512対応が噂されており、実現すればPC・コンシューマー機の両方でAVX-512対応ソフトの裾野が広がる可能性がある。
現時点ではあくまでLinuxカーネルパッチとリーカー情報からの推測であり、Intelの公式発表ではない。過去にもリークと実際の製品仕様が食い違った例は多く、最終的な確定は正式発表を待つ必要がある。
「6年間出さなかった宿題を、しかも当初の予定より豪華な内容でようやく提出してきた」というのが今回の話の一番おもしろいところだ。
AVX-512復活自体は歓迎すべきニュースだが、"今度こそ"BIOSアップデートで静かに消されないことを祈るしかない。