
■事実
VideoCardzが8月25日、米国市場でRTX5090搭載PC一式がGPU単体価格を下回る現象を報じました。
HP OMEN MAX 45L(RTX5090構成)の価格は4,709.99ドルです。
一方、米大手小売で見つかった最安の単体RTX5090(ASUS ROG Astral GeForce RTX5090 OC)は4,829.99ドルです。
差額は120ドルで、PC一式を買うほうがGPU単体より安くつきます。
OMEN MAX 45L構成はAMD Ryzen 7 9700X、DDR5-6000 32GB、1TB PCIe Gen4 SSDを搭載でする
マザーボード・電源・冷却・ケース・Windows11のライセンスも含まれました。
HPはこの構成をカスタムビルド扱いとしており、出荷は8月31日予定です。
比較対象のROG Astral RTX5090 OCは発売時価格が2,799.99ドルでした。
これはFounders Editionの発売時価格1,999ドルより800ドル高い設定でした。
現在の4,829.99ドルは、ROG Astral発売時から2,030ドル(約73%)の値上がりです。
Founders Editionの発売時価格からは約142%の値上がりとなります。
表(想定)
| 項目 | HP OMEN MAX 45L(RTX5090構成) | ROG Astral RTX5090 OC単体 |
|---|---|---|
| 価格 | $4,709.99 | $4,829.99 |
| GPU | GeForce RTX5090 32GB | GeForce RTX5090 32GB |
| CPU | AMD Ryzen 7 9700X | ― |
| メモリ | DDR5-6000 32GB | ― |
| ストレージ | 1TB PCIe Gen4 SSD | ― |
| その他 | マザーボード・電源・ケース・冷却・Windows11 | ― |
| 出荷 | 2026年8月31日予定 | 即納(在庫状況次第) |
注:本表はVideoCardz記事内の比較例を基に整理
解説
そもそも今回の逆転現象の根っこはNVIDIAが7月にAIBパートナー向けGPUキット(GPU+VRAM)価格を20〜30%引き上げたことにある。
この値上げはGDDR7だけでなくGDDR6搭載モデルにも及んでおり、旧世代カードも無傷ではない。
3GBのGDDR7モジュールは2GBモジュールの約3倍のコストとされ、値上げの主因は明確にメモリ側にある。
AMDも7月末に正式通知でRadeon側のGPU+メモリキット価格を最低10%引き上げると発表しており、Radeonも他人事ではない。
ここで面白いのが、なぜAIBパートナー製の単体カードだけが極端に値上がりし、HPのような完成品メーカーがそれほど値上がりしていないのかという点だ。
Tom's HardwareのJon Peddie氏のコメントが的確で、Dell・HPのようなODM/OEM調達先はメモリの実コストを厳しく精査されるため、AIB各社より実際のコストに近い価格で仕入れられている可能性がある。
つまりASUS・MSI・GigabyteのようなAIBパートナーは、NVIDIAからのキット値上げをそのまま小売価格に転嫁しやすい立場にあるということ。
一方でHPのような大手OEMは長期契約や大量発注によって値上げの影響を緩和し、GPU以外の構成部品(CPU・メモリ・ストレージなど)を含めても単体GPUより安い価格を維持できている。
これはRAMageddon(メモリ高騰)が業界全体に降りかかっている中で、「誰が値上げの直撃を受けるか」の構造差がそのまま価格に表れた一例と言える。
消費者側の視点で見ると、単体GPUだけが欲しい人にとっては本来ならPCへの投資は無駄になるはずが、今は逆にPC一式を買ってGPU以外を「おまけ」として受け取るほうが合理的という倒錯した状況。
ここでもう一つの当事者、いわゆる「パーツ剥がし」目的の転売・自作erという視点も入れられる。PC一式を買ってGPU以外を売却すれば実質的にGPUを底値で手に入れられる可能性がある。
ただしこの倒錯状態は一時的なものである可能性が高く、AIBの在庫が入れ替わればすぐに小売価格も追随して上がってくるはず。
「PCを買ったらGPUがついてきた」ではなく「GPUを買ったらPCがついてきた」が正しい表現になってしまっている状況が地味に笑える。
ROG Astralは発売時点でFEより800ドルも高い「高級品」だったのに、今では逆に「一番お得な選択肢」呼ばわりされる皮肉だ。
メモリ高騰の余波はGPU単体の値札だけでなく、「GPUの買い方」そのものまで歪め始めている。