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ソニー、PlayStationファンの怒りを認めつつディスク廃止方針を継続。事業への悪影響はないと説明

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ゲームディスクがデジタルのクラウドデータ粒子へと溶けていく様子を描いたコンセプトアート。物理とデジタルの対比を象徴的に表現。ロゴやブランド名は表示しない

■事実

ソニーが2026年7月31日、2026年度第1四半期(4〜6月)決算説明会で、PlayStationディスク廃止方針への批判について初めて正面から言及しました。

2026年7月1日に発表された方針では、2028年1月以降、PlayStation向け新作ゲームの物理ディスク生産を終了し、全面デジタル化へ移行するとしています。

決算Q&Aに登壇したソニーCFOリン・タオ氏は、「コンテンツ全般でデジタル化が進んでいることが最大の要因」とし、時間をかけて慎重に検討した上での決定と説明しました。

タオ氏は現時点でこの決定によるビジネスへの悪影響は見られておらず、今後についても大きな悪影響はないとの見通しを示しました。

ソニーは実施の約1年半前にあたる2026年7月1日に方針を発表しており、小売やパートナー企業への準備期間を考慮したと説明しています。

ファンの感情的な思い入れについては理解を示しつつ、方針転換の予定はないとしました。

サードパーティ出版社については、ディスクの代わりにダウンロードコードを封入したパッケージを店頭で販売し続けることが可能との説明がありました。

2026年度第1四半期のPS4/PS5合算ソフト販売のデジタルダウンロード比率は82%(前年同期は83%)です。

一部のファンにより、8月中旬に1週間の「不買(ボイコット)」を呼びかける動きがSNS上で進んでいると報じられています。

投資調査会社MorningstarのアナリストKazunori Ito氏は、SIEの物理ディスク生産終了によりゲームの中古市場は縮小し、最終的には消滅するだろうと予測しています。

世界の中古ゲーム市場規模は「1兆円規模」とされ、PSプラットフォームが世界の中古ゲーム取引の約4割を占めるとされています。

ゲーム業界コンサルタント会社F-Squaredの共同創設者Michael Futter氏は、中古売買が消費者にとって新作購入のための資金源としても機能していたと指摘し、この循環が失われることで中古市場のみならず実店舗を持つ小売店にも影響が及ぶとの見方を示しています。

一方でUbisoftは、この変化について「大きな混乱はない」との見立てを示しており、業界内でも影響の大きさについて見方が分かれています。

決算数値の整理

項目2026年度Q1前年同期
ソフト売上(デジタル+アドオン)4,852億円
ソフト売上(物理)205億円
デジタルダウンロード比率82%83%
PS5四半期出荷台数160万台250万台
PS5累計出荷台数9,530万台
G&NS部門営業利益2,020億円1,480億円(+37%)
G&NS部門売上高9,371億円ほぼ横ばい
PlayStation月間アクティブユーザー数1億2,500万人約1億2,250万人(+2%)

※出典:GameDev News(https://gamedev.net/news/playstation-reports-flat-q1-sales-says-its-cautiously-moving-forward-with-halting-physical-disc-production-r4814/)、Inven Global(https://www.invenglobal.com/articles/24348/sony-posts-q1-operating-profit-of-448-trillion-driven-by-gaming-division)、Gadget Review(https://www.gadgetreview.com/sonys-playstation-profits-rose-37-powered-by-tariff-refunds-not-game-sales)

解説

ソニーが「事業への影響はない」と言い切れる裏付けは数字にはっきり出ている。ソフト売上の9割以上がすでにデジタル+アドオンで、物理はもはや誤差レベルの存在感しかない。

ファンの怒りの声がどれだけ大きくても、それが実際の購買行動(プラットフォーム離脱や不買)に結びつかない限り、経営判断としては「無視できるノイズ」として処理されてしまう構造になっている。

「慎重に検討した上で」「慎重に前へ進める」という言い回しを繰り返しているのは、感情的な反発を受け止めつつも方針は変えないという、いわば予防線的な言葉選びに見える。

サードパーティ出版社が「ダウンロードコード入りパッケージ」を店頭で売り続けられるという説明は、実質的に中身のない「箱だけ」の販売継続を意味しており、コレクター文化やゲーム保存の観点からは慰めにならない。

今回の決算では営業利益37%増という見出しの数字だけが目立つが、その主因は米国関税還付と為替であり、ソフト・ハード販売そのものはむしろ横ばい〜微減。ディスク廃止の是非を財務面から検証する材料としては、実はやや読みにくい決算だった。

ゲーム保存やコレクション文化への影響は、短期的な財務指標には表れないタイプのコストであり、今回の説明ではその点への言及がほとんどないのも特徴的だ。

「慎重に前へ進める」という表現、聞けば聞くほど「進めることはもう決まっている」という意味にしか聞こえてこないのは気のせいだろうか。

ファンの声を「聞いてはいる」が「聞き入れてはいない」という今回の対応。企業としては合理的でも、長年ディスクを買い続けてきたユーザーからすればなんとも据わりが悪い着地だ。

中古市場の消滅は「安く買う手段がなくなる」という単純な話ではなく、「クリアした分を現金化して次の新作を買う」という資金循環そのものが断たれる話だという点が本質だ。

しかもこの循環に乗っていたのは実はライトゲーマーではなく、最も新作を頻繁に買うヘビーゲーマー層。中古売却という「原資」を失うことで、その購買力の一部がそのまま目減りする可能性がある。

Sonyが期待しているであろう「中古売上がそのままデジタル新品売上に転換する」という単純な置き換えは楽観的すぎる見立てで、実際には総購入本数自体が縮小するリスクの方が大きい。

パブリッシャー側(Ubisoftなど)が「大きな混乱はない」と楽観的なのは自然な話で、そもそも中古売上の恩恵を一切受けていない立場だから。小売・アナリスト側との温度差は、単なる見解の相違というよりポジショントークとして割り引いて読む必要がある。

「中古がなくなれば新品がその分売れる」という理屈、経済学的には「風が吹けば桶屋が儲かる」レベルの楽観さがあるように見える。

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