
■事実
TrendForceの2026年第2四半期(2Q26)世界ファブレス半導体設計企業ランキングで、AMDがQualcommを抜き第3位に浮上しました。
上位10社の合計売上高は前年同期比73%増の1,414.5億ドルです。
首位はNVIDIAで売上約911.6億ドル(前年比99%増)、上位10社合計に占める比率は64%まで拡大しました・
2位はBroadcomで売上18.89億ドル超です。(前年比112%増、増収率は上位企業中で最も高い)
3位のAMDは売上11.53億ドル超です。
AMDの順位上昇は、エージェント型AI(Agentic AI)の普及によりCPUの戦略的重要性が高まったことが要因です。
AMDのデータセンター向けCPU売上は5四半期連続で過去最高を更新中、x86サーバー市場でのシェア拡大が続いています。
4位に後退したQualcommはスマートフォン事業の不振が影響しました。
5位はMediaTekで売上約48.1億ドル、こちらもスマートフォン事業が重荷になりました。
表(ランキング推移)
| 順位 | 2025年通期 | 2026年Q2 |
|---|---|---|
| 1 | NVIDIA | NVIDIA(売上911.6億ドル、前年比+99%) |
| 2 | Broadcom(AI関連でQualcommを逆転) | Broadcom(売上18.89億ドル、前年比+112%) |
| 3 | Qualcomm(売上38.9億ドル、+12%) | AMD(売上11.53億ドル)← 浮上 |
| 4 | AMD(売上34.6億ドル、+34%) | Qualcomm ← 後退 |
| 5 | MediaTek | MediaTek(売上約48.1億ドル) |
注:2025年通期とQ2単体は集計期間が異なるため、金額の単純な前年同期比較ではなく「順位の推移」を示す参考表として掲載。
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解説
まず整理しておきたいのは、AMDとQualcommは同じ土俵で殴り合って勝敗が決まったわけではないという点だ。
AMDの主戦場はデータセンター向けCPU・GPU、Qualcommの主戦場はスマホ向けSoC・モデム——両社の顧客も製品カテゴリもほとんど重なっていない。
起きていることは、「ファブレス半導体企業」という同じ括りの売上ランキングの中で、AI投資マネーがデータセンター系企業に流れ込み、スマホ関連企業からは資金の勢いが失われている、という"お金の流れの入れ替わり"が可視化されただけだ。
裏付けとしてQualcommの足元の決算を見ると、稼ぎ頭のハンドセット(スマホ)売上が前年比20%減、一方で自動車向けは61%増・IoTも9%増——スマホ以外は伸びているのに看板事業が沈んでいる構図だ。
AMD側は、データセンター売上が前年比107%増の67億ドルとなり、全社売上(115億ドル)の58%を占めるまでに拡大。EPYC CPUとInstinct MI350 GPUの需要が牽引役だ。
2025年通期時点ではAMDはまだ4位(NVIDIA→Broadcom→Qualcomm→AMD)だったので、今回の3位浮上はわずか半年強で一気に順位を入れ替えた形になる。
2025年通期でもBroadcomが「AI関連の存在感」を理由にQualcommを2位に押し上げて抜いており、AMDの今回の逆転は同じパターンの2例目と言える。
そもそもこのランキング自体、首位NVIDIA1社で上位10社合計売上の64%を占めるといういびつな構造で、「ファブレス業界の成長」と言っても実態はほぼNVIDIA一強の成長を測っているだけとも言える。
上位10社合計は前年比73%増まで拡大しているが、この急成長のほとんどが「AI投資」という単一テーマに集中しており、AI投資に急ブレーキがかかればこのランキング自体が総崩れになりかねないリスクを内包している。
「AMDがQualcommを抜いた」と聞くと直接対決を制したように聞こえるが、実際は畑違いの土俵で相手が一人で転んだだけ、というのが実態に近い。
これは半導体業界の順位表が入れ替わったというより、業界のお金の流れ図そのものが一年足らずでこれだけ塗り替わった、という話として読むのが正しい。