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中国初の本格ゲーミングGPU「Lisuan LX 7G100」発売——RTX 5060 Ti価格でRTX 3060性能の現実

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トリプルファンクーラーを備えたゲーミングGPUのシネマティックなプロダクト写真。

■事実

製品概要

中国の半導体スタートアップ、励算科技(Lisuan Tech)が自社初のゲーミング向けGPU「LX 7G100 Extreme Founders Edition」を2026年5月20日にJD.com(京東)で発売。先行販売は1,000台限定です。

価格は3,299 RMB(約500ドル)、予約価格は2,969 RMB。初回出荷は5月22日予定です。

Lisuan Techは上海を拠点とする半導体設計会社。かつて1990年代に一世を風靡したS3 Graphicsの元従業員3名が5年ほど前に創業。中国の民間・国営企業から多額の投資を受けています。

スペック

  • GPU:独自設計「7G106」、6nmプロセス
  • メモリ:12GB GDDR6、192ビットバス
  • インターフェース:PCIe 4.0 x16
  • 演算ユニット:192 TMU、96 ROP
  • TDP:225W(12ピン給電×1)
  • 出力:DisplayPort 1.4a×4(HDMIは非搭載)
  • 対応API:DirectX 12、Vulkan 1.3、OpenGL 4.6、OpenCL 3.0
  • 対応OS:Windows、UOS、Ubuntu、Kylinsoft
  • フォームファクター:デュアルスロット、トリプルファン

認証・対応ゲーム

MicrosoftのWHQL認証を取得。NVIDIA、AMD、Intelに次ぐ4社目のGPUメーカーとして認証を受けた史上初の中国製GPUとなります。

発売時点で100タイトル以上のゲームに対応。Cyberpunk 2077、Black Myth: Wukong(黒神話:悟空)、Elden Ring、レッド・デッド・リデンプション2、DOTA2などを含む

AV1 4K@30FPSエンコード、HEVC 8K@60FPSデコードに対応

発売前の期待値

Lisuan自身は事前デモとして、Geekbench OpenCLや3DMark等の合成ベンチマークでRTX 4060に近い性能を示していました。

ただし合成ベンチマークはゲーミング実性能とは別物であり、実際のゲーム性能は「ドライバー、シェーダーコンパイル効率、APIオーバーヘッド次第」とされていました。

実機ベンチマーク結果(BilibiliのレビューアーChaowanke=潮玩客による)

3DMarkのスコアはRTX 3060(5年前のミドルレンジGPU)以下またはほぼ同等です。

実際のゲーム性能は合成ベンチよりさらに低く、RTX 4060の約21〜55%にとどまります。

FSRやアンチエイリアシングの種類を変えても傾向は変わらず、他GPUは常に2倍以上速くなっています。

ゲーム別パフォーマンス比較表(1080p)

ゲーム設定LX 7G100 平均fpsRTX 4060 平均fpsArc B580 平均fpsRX 6600 XT 平均fps対4060比
Cyberpunk 20771080p Medium+FSR3+フレーム生成8823224322038%
Black Myth: Wukong1080p Preset+FSR356115819849%
Forza Horizon 51080p Low4822824026221%
Shadow of the Tomb Raider1080p Quality+TAA7117618215940%
Assassin's Creed: Shadows1080p Medium+FSR+フレーム生成3713512313627%
CS21080p13053244949524%
Red Dead Redemption 21080p Quality5118110617228%

現時点での問題点

レイトレーシング(RT)はハードウェアレベルで非対応です。

スタッタリング(コマ飛び)と不規則なフレームタイムスパイクが頻発します。

解像度4K/120Hz以上の場合、現ドライバーは6bitカラー出力のみ(8bit非対応)

GPU-ZやMSI AfterburnerなどのユーティリティがカードをNot Recognizedとして表示するケースがあります。

ポジティブな点はゲーム互換性は良好でクラッシュはほぼ発生しません。スタッタリングなどの問題はドライバーアップデートで改善の余地があります。

価格面の問題

3,299 RMBはRTX 5060 Ti(8GB)の市場価格2,600〜3,000 RMBを上回ります。

同じ12GB VRAMを持つIntel Arc B580は価格が低く、実ゲーム性能も大幅に上回ります。

NVIDIAはメモリ逼迫に対応するためRTX 3060 12GBの再販を検討中とも報じられており、実現すればLisuanへのさらなる圧力となります。

市場環境

米国の輸出規制により、NVIDIAのH20(データセンター向けAI GPU)は中国への販売に事実上ライセンスが必要な状態で、中国政府は国産半導体産業の育成を強力に推進しています。

ただし現時点で一般消費者向けNVIDIA GPUの販売が直接禁止されているわけではありません。

国産化推進政策はLisuanにとって追い風となりうる構造です。

解説

「動いた、クラッシュしなかった」は本当に評価ポイント:2022〜2023年に出たMoore Threads(摩爾線程)のMTT S80はDay 1時点でDX9ゲームしか動かず、GTX 1030(30W級エントリーGPU)にも負けた。そこからの比較では、LX 7G100がDX12タイトルをまともに動かせていること自体は前進だ。

しかし価格設定が致命的:「RTX 5060 Ti価格でRTX 3060性能」は、国産GPUを応援したい中国ゲーマーにとっても正当化が難しい。同じ12GB VRAMのArc B580が安くて速いという比較が既に出ており、選択肢が明確すぎる。

ドライバーはこれから改善できる:スタッタリングやフレームペーシングはソフトウェアの問題で、IntelのArcシリーズもDay 1は惨状だったが大幅に改善した。ただしIntelの場合も数年かかっており、Lisuanが短期で追いつくかは不透明だ。

筆者の観点:GPU設計会社が3社(NVIDIA・AMD・Intel)を相手に競争力を持つには、Intelの例を見ても最低3〜5世代・6〜10年は必要。Lisuanは設立5年で、これが実質的に初めてのゲーミングGPU量産品。「まだ第1世代」と考えれば妥当な出来で、むしろ今後のロードマップが問われる。

地政学的保護の問題:米国の輸出規制強化が続けば、NVIDIAのコンシューマー向けGPUが中国市場から締め出される可能性が将来的にはある。そうなれば国産GPUの需要は強制的に生まれる。Lisuanの本命はむしろその市場環境の変化かもしれない。

RTX 3060 12GB再販の脅威:もし実現すれば、枯れた技術で安定したドライバー・ゲーム互換性を持つRTX 3060が3,000 RMB前後で出てきた場合、Lisuanの3,299 RMBは完全に競争力を失う。

「ゲームの互換性は良好」という表現の職人技——2倍以上遅くてもゲームが「起動する」事実は嘘ではない。企業PRの用語選択の妙を感じる。

中国の半導体自立という国家戦略と、500ドル払って2倍遅いGPUを買わなければならないゲーマーの現実は、まだしばらく交差しない。

 

今までIntel ARCの記事でも何度も繰り返してきたが、ある程度までドライバを最適化してからは個別のゲームに対する最適化になる。

中国製のゲームに対しては最適化されるだろうが、国外ゲームに対してどれだけ最適化を呼びかけられるかが成功か失敗かのカギになるだろう。

AMDやInteはゲームスタジオに金を払ってスポンサーになっているわけだが、中国のGPU企業がそこまでやるのかどうかは疑問だ。

中国のメーカーはその気になれば政府からバックアップを受けられる可能性もあるが、それがどれだけ有効なのかは未知数だ。

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