■事実
IntelのVP兼GM(エンスージアスト事業部門)であるロバート・ハロックが、ドイツメディア「PC Games Hardware」のインタビューに応じ、Intelのハイブリッドアーキテクチャとゲーミング性能について見解を示しました。
ハロックはまず、一部レビュアーが「Eコアを全部オフにすると速くなる」と報告していた件に反論しました。P(パフォーマンス)コアとE(エフィシェント)コアのゲーム性能差は「実質的に同一で、差は約1%程度」だと主張しました。
ゲーム側の問題として、一部のゲームエンジンが「全CPUコアは同じ動作をする」という前提で設計されており、ハイブリッドアーキテクチャではスケジューリングエラー、スレッドの不均衡、フレーム時間のばらつきが生じやすいことが指摘されています。
IntelはThread Director(スレッドディレクター)というOSとCPUを連携させるスケジューラー機能を持つが、その実効性はOS、ゲームエンジン、バックグラウンドプロセス、電源プランなど複数の要因に依存しています。
ハロックは「PCゲーミング市場全体、特にハードコアなエンスージアストは、ソフトウェアの重要性を著しく過小評価している」と発言しました。
さらに「ゲームによっては、CPUに対して最適化されていないことで、10〜20〜30%のパフォーマンスが埋もれている」と述べました。このソフトウェアボトルネックが解消されれば、Ryzenの3D V-Cacheプロセッサ(Ryzen X3Dシリーズ)に肉薄あるいは凌駕できる可能性があるという趣旨の発言をしました。
対象製品の背景はArrow Lake(Core Ultra 200Sシリーズ)は2024年10月発売。ゲーミング性能でRyzen 9800X3Dに大きく劣り、前世代のRaptor Lake(14世代Core)にも及ばないとして批判を受けました。
2026年3月26日、Core Ultra 200S Plusシリーズ(Arrow Lake Refresh)を発売。Core Ultra 7 270K Plus($299)とCore Ultra 5 250K Plus($199)の2モデルで、Intelは1080p時のゲーム性能が元Arrow Lakeより平均約15%向上と主張しました。
実際のレビューでは、Core Ultra 7 270K PlusはRyzen 7 9800X3D(約$420)に対してゲーム性能で依然劣っているが、マルチスレッド性能(生産性ワークロード)では270K Plusが約80%優位とされています。
Tom's HardwareなどのデータではRyzen 7 9800X3DはCore Ultra 9 285Kに対してゲームで平均約35%速くなっています。ハロックが言う「ソフト最適化で30%改善」が実現すれば、理論上この差を詰められる計算になります。
■解説
ハロックの発言の核心は「ハードが悪いのではなくソフトが追いついていない」というIntelの公式見解だが、これはある意味で都合のいい言い訳でもある。ハイブリッドアーキテクチャを先行して採用したのはIntel自身であり、エコシステムへの投資も含めて責任を持つ立場のはずだ。
とはいえ、発言の中身は事実を含んでいる。Arrow LakeのEコア問題は「Eコアそのものが遅い」のではなく、ゲームエンジンが均質なコアを前提にしているため、Thread Directorの判断ミスや非効率なスレッド割り当てが起きることが原因と考えられる。これはソフト側の問題という側面がある。
ただし「Eコアを切ると速くなる」というレビュー結果が存在することをIntel自身も認めている以上、「1%差で実質同じ」という主張はやや強引に聞こえる。1%の差が"ほぼゼロ"であれば、なぜオフにすると改善するケースがあったのか、という疑問が残る。
「ソフトが最適化されれば30%改善」という数字はインパクトがあるが、裏を返せば「現時点で最適化されていないソフトが多数ある」という認識をIntelが持っていることを示している。それは購入前に知りたい情報だ。
Ryzen 9800X3DとCore Ultra 9 285Kのゲーム性能差は現時点で約35%。ハロックの理屈が成立するなら、IntelのCPUでも最大30%の潜在性能が眠っているわけで、それが引き出せれば実質的に差は詰まる──が、「いつ、どのゲームで、誰が最適化するのか」は一切言及されていない。
Intelのハイブリッドアーキテクチャそのものの問題ではなく、「エコシステムとして成熟するまでの移行コスト」をユーザーに負担させている構造的な問題がある。AMDのX3Dはゲームソフト側に何も要求せず速い。
かつてのIntelは草の根のフリーソフト開発者にまで声をかけて、自社プロセッサ向けの最適化を行うように働きかけていた。
※ 筆者が覚えているのはMP3関連のソフトウェア
その過去を知っている身からすると、これは経営が苦しくなってそうした余力がなくなってきたことによる言い訳に聞こえる。
キャッシュはソフトの最適化に関係なく一定の効力があるが、これはAMDが自分の身の丈を理解して可能な範囲での努力をした結果だ。
ソース: https://www.pcgameshardware.de/CPU-CPU-154106/News/Intel-E-Core-Kritik-Scheduler-Probleme-Gaming-1526293/ https://www.pcgameshardware.de/Spiele-Thema-239104/News/Intel-Software-Gaming-Performance-Probleme-1526194/
