
※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージです。元のデザインはYoutube動画で確認できます。
中国の熱心なモッダーである小甯子XNZ氏が、PlayStation 5、Xbox Series X、Nintendo Switch 2という3大ゲーム機を単一システムに統合した驚異的なプロジェクトを完成させた。「Ningtendo PXBOX 5」と愛称が付けられたこのカスタム機は、古代から伝わるロストワックス鋳造技術と最新のゲーミングテクノロジーを見事に融合させた作品となっている。250Wの共有電源ユニットを搭載し、3つの独立したゲーム機を同時に動作させることができる。
プロジェクト誕生の背景
XNZ氏がこのプロジェクトに着手したきっかけは極めてシンプルだった。プラットフォーム限定のゲームをプレイするために、3台の異なるゲーム機の電源を入れ、手動で切り替える作業に煩わしさを感じていたのだ。各プラットフォームには魅力的な独占タイトルが存在するが、それらを楽しむために複数のデバイスを管理し、配線を整理し、スペースを確保する必要がある。この課題を解決するため、XNZ氏は3つのシステムを1台のデバイスに統合するという野心的な目標を設定した。
設計のインスピレーション源
XNZ氏が設計の青写真として選んだのは、Apple社のMac Proのいわゆる「ゴミ箱」モデルだった。その三角柱デザインは、3つのゲーム機を効率的に収納するのに理想的な形状だと判断された。各ゲーム機の内部基板を三角形の各面に配置し、底部に設置したファンで3つのシステムを同時に冷却するというコンセプトだ。
このアプローチは、実はXbox Series Xが既に採用している冷却方式に似ている。Xbox Series Xは上部から下部へと空気を流す垂直冷却システムを採用しており、効率的な熱管理を実現している。XNZ氏はこの原理を応用し、3つの異なるシステムに適用することを目指した。
分解と再設計のプロセス
プロジェクトの第一段階は、3台のゲーム機すべてを完全に分解することから始まった。PlayStation 5、Xbox Series X、Nintendo Switch 2のそれぞれから、マザーボードを慎重に取り外した。元々の冷却システムと電源ユニットは取り除かれた。XNZ氏は統一された冷却システムと電源供給システムを新たに開発する計画だったため、これらのコンポーネントは不要となった。一方、各システムのマザーボードは完全な状態で保持された。
設計コンセプトは明確だった。3つのPCB(プリント基板)を三角柱の各面に取り付け、底部に配置した単一のファンで3つすべてを同時に冷却する。この統合アプローチにより、スペース効率と電力効率の両方を最大化できる。
3Dプリントから伝統技術へ
XNZ氏は当初、三角形のヒートシンクを設計し、3Dプリンターで試作品を製作した。しかし、このような複雑な形状の金属部品をCNCフライス盤で加工するコストを調査したところ、予算を大幅に超えることが判明した。精密な三次元形状を持つヒートシンクを金属で製作するには、高度な機械加工技術と長時間の作業が必要となり、商業的な製造コストでは実現困難だった。
ここで、XNZ氏は創造的な解決策を見出した。中国で古くから伝わる伝統的な金属加工技術であるロストワックス鋳造法(失蝋鋳造法)の採用だ。この技術は、精巧な表面ディテールを維持しながら、複雑な形状を比較的低コストで実現できる。高価な機械加工では実現困難な複雑な構造も、この伝統技術を用いることで製作可能となる。
ロストワックス鋳造のプロセス
ロストワックス鋳造法、別名失蝋鋳造法は、中国における古代からの金属加工技術だ。このプロセスは概念的には比較的シンプルだが、高度な技術と経験を必要とする。
まず、ワックスや粘土などの使い捨て材料で原型を製作する。XNZ氏の場合、3Dプリンターで出力したPLA樹脂を使用した。この原型に耐熱性の高い材料を厚くコーティングする。次に、この全体を加熱すると、内部の柔らかい材料(この場合はPLA樹脂)が溶解または燃焼して消失し、空洞が残る。この空洞が実際の鋳型となる。
この段階で、溶解した金属を注入する。金属は急速に固化し、必要な金属構造体が完成する。冷却後、外側の耐熱材を取り除くと、精密な金属部品が現れる。この技術により、複雑な内部構造や細かいディテールを持つ部品を、比較的低コストで製作できる。
仕上げと組み立て
ロストワックス鋳造装置から取り出されたヒートシンクは、まだ完成品ではなかった。表面には研磨が必要であり、金属注入時に使用した支持ブラケットを除去する必要があった。鋳造されたブロックの外観品質は必ずしも高くなかったが、これは大きな問題ではない。なぜなら、このブロックはマザーボードと直接接触しないからだ。
熱伝導の役割を担うのは銅製プレートだ。XNZ氏は2枚の銅プレートを製作し、これらを鋳造されたヒートシンクブロックにネジで固定した。銅プレートは熱を均等に拡散させ、各ゲーム機のプロセッサやその他の発熱コンポーネントから効率的に熱を吸収する。
最後の工程は、PlayStation 5とXbox Series Xのマザーボードを新しい冷却システムに取り付けることだった。前段階の複雑な鋳造作業と比較すれば、この組み立て工程は比較的単純なものだった。各マザーボードを慎重に位置決めし、銅プレートとの接触を確保し、適切な熱伝導グリスを塗布して固定する。
技術的な挑戦と失敗
XNZ氏が公開した動画では、鋳造工程の詳細が記録されており、1回の失敗した試みも含まれている。複雑な形状の金属部品を鋳造する際には、温度管理、材料の配合、注入速度など、多くの要素が成功を左右する。最初の試みでは、何らかの問題により期待通りの結果が得られなかったが、XNZ氏は諦めることなく、プロセスを改善して再挑戦した。
この透明性は、モッダーコミュニティにおいて重要な価値を持つ。失敗も含めてプロセス全体を共有することで、他の製作者たちが同様のプロジェクトに取り組む際の貴重な参考資料となる。
統合電源システム
このプロジェクトのもう一つの重要な側面は、250Wの共有電源ユニットの実装だ。3つの独立したゲーム機を同時に動作させるには、十分な電力供給と適切な電圧管理が不可欠だ。各システムの電力要件を考慮し、安定した電力供給を実現するための回路設計が必要となる。
元々のApple Mac Proの筺体内に電源ユニットを収納することで、外部に複数の電源ケーブルが這う必要がなくなり、すっきりとした外観を実現している。
古代技術と現代技術の融合
このプロジェクトの最も興味深い側面の一つは、数千年の歴史を持つロストワックス鋳造技術と、最新のゲーミングハードウェアおよび3Dプリンティング技術の融合だ。古代の職人たちが宝飾品や仏像を製作するために開発した技術が、現代のゲーミングコンソールの冷却システム製作に応用されているという事実は、技術の普遍性と創造性の本質を示している。
XNZ氏の「Ningtendo PXBOX 5」プロジェクトは、単なる技術的な挑戦以上の意味を持つ。それは、創造性、忍耐力、そして異なる時代の技術を組み合わせる柔軟な思考の証明だ。プラットフォーム限定タイトルを楽しみたいという単純な願望から始まったこのプロジェクトは、モッダーコミュニティにおける革新の好例となった。