2026年に向けた深刻な供給危機が進行中
PC業界は2026年に向けて、2021-2022年以来の深刻な供給危機に直面している。しかし今回の状況は前回とは根本的に異なる性質を持っている。
RAM供給危機の実態
OpenAIをはじめとするAI企業が、データセンター向けに大量のRAMを買い占めた結果、消費者向け市場では既にRAM価格が高騰している。特に64GB以上の大容量RAMキットは入手困難な状況が続く見込みだ。興味深いのは、LenovoやAppleといった大手OEMメーカーでさえ、2026年初頭にRAM供給不足に直面する可能性が報告されている点だ。これらの企業は通常、長期契約により安定供給を確保しているはずだが、今回の供給危機の規模の大きさを物語っている。
ただし、業界関係者への取材によれば、16GBや32GBといった低容量RAMキットについては、予想より早く価格が落ち着く可能性がある。理由は、今回の供給危機が消費者主導ではなく、企業による一時的な大量購入が原因だからだ。2021-2022年の供給危機では、在宅勤務への移行とマイニングブームにより、一般消費者が継続的に高額製品を購入し続けた。しかし今回、OpenAIなどのAI企業は既に必要なRAMを購入済みであり、継続的な追加購入は限定的と見られる。また、一般消費者が1000ドルのRAMキットを購入し続けることも考えにくい。このため、高容量RAMは2026年を通じて入手困難が続く一方、低容量キットは春頃から価格が下落し始める可能性がある。
サムスンのSATA SSD生産停止の影響
さらに衝撃的なニュースとして、サムスンが2026年を通じてSATA SSD生産を停止することが明らかになった。この決定は長期的な戦略としては理解できる。SATA接続自体がボトルネックとなり、PCIe Gen 3の単一レーンよりも帯域幅が少ない。同じNANDチップを使用しても、SATA接続では本来の性能の2分の1から6分の1程度しか発揮できない。さらに、M.2 NVMe SSDは筐体が不要なため、製造コストも実は安い。サムスンとしては、同じチップをより高価格で販売できるNVMe製品に注力したいというのが本音だろう。
しかし短期的には、この決定は市場に大きな影響を与える。サムスンは世界最大級のSSDメーカーであり、同社のSATA SSD生産停止は、市場から全SSD供給の約10%が消失することを意味する。Western DigitalやKioxiaなどの他メーカーがSATA生産を継続する可能性はあるが、サムスンの生産停止発表により、企業や一部のレガシーシステム利用者によるパニック買いが発生し、全体的なSSD価格が上昇する可能性が高い。
興味深いのは、既にNeweggなどで最安値のM.2 NVMe SSDと最安値のSATA SSDの価格差が15ドル程度まで縮小している点だ。長期的には、SATA SSDは完全にニッチ市場向けの製品となり、一般消費者は自然とNVMe製品に移行していくだろう。
グラフィックカード価格も上昇へ
RDNA 4グラフィックカードの価格も、2026年初頭には上昇する見込みだ。AIBメーカーから小売店への卸売価格が既に上昇しており、その影響が消費者価格に反映されるのは時間の問題だ。具体的には、Radeon RX 9070 XTは800ドル前後、RX 9070は700ドル前後、RX 9060 XT 16GBは400ドル超、RX 9060 8GBもMSRP超えとなる可能性がある。これは、Nvidiaの次世代Blackwellシリーズとの競争が本格化する前の、短期的な価格上昇と見られる。
今すぐ購入すべき理由
これらの状況を総合すると、2026年に何らかのPC関連製品を購入予定の方は、今すぐ購入することを強く推奨する。具体的には:
- グラフィックカード: 現在のRDNA 4やGeForce RTX 40シリーズは比較的入手しやすく、価格も安定している
- SSD: サムスンの生産停止発表前の今が最後のチャンス。特に大容量SSDを検討している場合は即購入を推奨
- RAM: 既に高騰しているが、16GBキットは比較的入手可能。32GB以上が必要な場合は、在庫があるうちに確保すべき
- ノートPC、スマートフォン: RAM搭載製品は全て影響を受ける可能性があるため、買い替え予定があれば前倒しを検討
一方、RAMについては既に高騰しているため、緊急性がなければ2026年夏頃まで待つという選択肢もある。ただし、これは低容量キットに限った話であり、64GB以上の大容量キットは2026年を通じて入手困難が続く見込みだ。
AMD FSR Redstoneの期待外れのローンチ
AMDの新しいアップスケーリング技術「FSR Redstone」がリリースされたが、業界の期待を大きく裏切る結果となった。
未完成のリリース
FSR Redstoneには3つの主要コンポーネントが含まれる予定だった。第一に、FSR 4アップスケーリング。しかし、最も重要な改善であるRDNA 3(RX 7000シリーズ)向けのINT8サポートが提供されていない。ユーザーは依然としてDLLファイルの手動交換という面倒な作業を強いられている。
第二に、レイトレーシング性能向上機能。「Ray Regeneration」は一部のゲームで利用可能だが、もう一つの重要機能「Radiance Caching」は2026年まで利用不可だ。
第三に、新しいAIフレーム生成機能。これは唯一の新機能だが、重大な問題を抱えている。画質面では従来版との小さな差を埋め、パフォーマンスも同等だが、フレームペーシング(フレーム配信のタイミング)に問題があり、スタッター(カクつき)が発生する。一部のゲームでは問題が見られないため、AMDは修正可能と考えられるが、リリース時点で基本的な部分が未完成というのは問題だ。
混乱を招く命名変更
さらに問題なのは、AMDがFSR 4という名称を実質的に廃止し、単に「FSR Redstone」と呼んでいる点だ。プレゼンテーション資料では、FSR 1、FSR 2、FSR 3と並べた後、FSR 4とは書かずに「AMD FSR Redstone」と表記している。
この命名変更は複数の問題を引き起こす。第一に、NvidiaのDLSS 4との直接比較が困難になる。第二に、AMDは複数世代のハードウェア(RDNA 1、2、3、将来的には4)を現役で販売しており、それぞれ異なるFSR機能をサポートしている。「FSR Redstone」という名称では、どのハードウェアがどの機能をサポートするのか非常に分かりにくい。
もしAMDがFSRブランド自体を刷新したいのであれば、FSRという名称を完全に廃止し、Redstoneという新ブランドで再出発すべきだった。中途半端な命名変更は、消費者とメディアの両方に混乱をもたらすだけだ。
AMDのソフトウェア戦略の課題
より深刻な問題は、AMDのソフトウェア開発プロセスだ。なぜ未完成の製品をリリースする必要があったのか。数週間前に突然「Black Ops 6で利用可能」と発表し、実際には重大な問題を抱えた状態でのリリースとなった。
技術的には、FSRは世代を重ねるごとにDLSSとの差を縮めている。多くの実装で、FSRは有効化する価値があるレベルに達している。しかし、リリースのタイミングと品質管理に問題があり、AMDのソフトウェア部門に対する信頼を損なう結果となった。
興味深いことに、ソニーはPS5 Pro向けのPSSR(PlayStation Spectral Super Resolution)開発において、既にAMDよりも充実した開発者サポートツールを提供している。これはAMDのソフトウェア戦略全体に対する警鐘と言えるだろう。
PS6ハンドヘルドの開発が事実上確定
ソニーがPS6ハンドヘルド開発を進めている証拠が、もはや決定的と言えるレベルまで積み上がった。
SDK全バージョンへの異例のパッチ適用
最も重要な証拠は、ソニーがPS5発売以来リリースされた全SDK(ソフトウェア開発キット)バージョンに対して、「パワーセーバーモード」対応パッチを適用した点だ。これはSDKバージョン1.0から最新の12.0まで、合計12世代のSDKすべてが対象となっている。
この対応の異例さは、PS5 Proと比較すると明確になる。PS5 Pro対応を希望する開発者に対して、ソニーは最新SDKへのアップデートを要求した。つまり、2021年のローンチタイトルがPS5 Pro対応を追加したい場合、古いSDK(例えば1.0や2.0)から最新バージョンへの大幅なアップデートが必要だった。
しかしパワーセーバーモードについては、ソニーが自ら全SDKバージョンにパッチを適用した。これは相当な開発工数を要する作業であり、ソニーがパワーセーバーモード対応をPS5 Pro対応よりも重要視していることを示している。
8スレッド動作要件の意味
開発者向けドキュメントには、さらに決定的な記述がある。CPU最適化に関するセクションで、「新しい動作モードが将来サポートされる可能性があり、アプリケーションは異なる利用可能CPU構成の環境で動作する可能性がある」と明記されている。
さらに、ゲームは最低8スレッドで動作可能であるべきだと推奨している。PS5は16スレッド(8コア/16スレッド)のCPUを搭載しているため、この推奨事項は現行ハードウェアを想定したものではない。明らかに、より少ないコア数を持つ将来のデバイスを想定している。
新CPUアーキテクチャ対応の明言
さらに決定的な情報として、ソニーは開発者に対して直接、将来的に新しいCPUアーキテクチャをサポートすることを通知している。開発者は特定のスレッド数を前提とすべきではなく、最低8スレッドでの動作を保証する必要があると明言している。
これらすべての証拠を総合すると、PS6ハンドヘルドは単なる噂や可能性ではなく、ソニーが積極的に開発を進めている確実なプロジェクトであることが分かる。低解像度ディスプレイ(おそらく1080pまたは1200p)、少ないCPUコア数(おそらく8コア/8スレッドまたは6コア/12スレッド)、そして低消費電力モードを前提とした設計により、バッテリー寿命と携帯性を確保しつつ、PS6世代のゲーム体験を提供する狙いだ。
開発者への強い圧力
ソニーはパワーセーバーモード非対応の開発者に対して強い不満を表明しており、長期的には妥協しない姿勢を示している。多くの開発者が単純にフレームレートを半分に下げることでパワーセーバーモードを実装しているが、ソニーはこれに満足していない。ソニーが求めているのは、低解像度でより高いフレームレートを維持する最適化だ。
これは、パワーセーバーモードが単なる省電力機能ではなく、低解像度ディスプレイを搭載したデバイス向けの互換性モードであることを強く示唆している。
PSSR 2.0:ソニー独自のDLSS対抗技術が大幅進化
PS5 Pro向けのアップスケーリング技術「PSSR(PlayStation Spectral Super Resolution)」が、大規模なアップデートを予定している。
PSSR 2.0の技術的進化
開発者向けバックエンドシステムには、「Multi-Frame Super Resolution 2(MFSR 2)」への言及が登場している。MFSR 1が現行PSRの内部名称であることから、これが次世代PSSR技術であることは確実だ。
PSSR 2.0の主な特徴は以下の通り:
- より少ない入力データで動作可能
- メモリと演算能力の使用量削減
- 初代PSRより高画質を実現
- 完全に新しいAPI(既存ゲームへの簡単な適用は不可)
最後の点は重要だ。PSSR 2.0は単なるアップデートではなく、ほぼ完全な作り直しに近い。これはAMDのFSR 2からFSR 4への進化に匹敵する大幅な改善と言える。
AMDを上回るソニーの開発者サポート
注目すべきは、ソニーが開発者向けツールでAMDを上回っている点だ。「PSSR Replay」などのデバッグツールにより、視覚的不具合のトラブルシューティングが可能になっている。開発者はPSSR適用時の問題を詳細に分析し、修正できる。
一方、FSR Redstoneの項目で述べた通り、AMDの開発者サポートツールは相対的に貧弱だ。業界関係者によれば、現時点でソニーの方がAMDよりも充実したサポート体制を提供している。
ソニーはサイレントヒル fのような視覚的不具合を持つゲームに不満を持っており、PSSR 2.0でコンソール品質の画質を確実に達成しようとしている。
FSR 4ではなくソニー独自技術
PSSR 2.0がAMDのFSR 4の移植版ではないことも確認されている。バックエンドシステムでは、FSR 3とFSR 4がMFSR 2とは別に言及されている。これは、PSRRがソニー完全独自の技術として開発されていることを示している。
ソニーがPSSRを独自開発する理由は明確だ。FSR 2が一時的にDLSS 2に追いついたものの、その後DLSSが大きくリードを広げた経験から、ソニーは重要な差別化技術をAMDや他社に依存したくないと考えている。自社でトップクラスの技術を開発・維持することで、競合他社(主にMicrosoftのXbox)に対する技術的優位性を確保できる。
フレーム生成は非搭載
興味深いことに、PSSR 2.0にフレーム生成機能は含まれない見込みだ。開発者向けドキュメントに一切の言及がなく、さらに業界関係者によれば、開発者からフレーム生成機能の要望が一切ないという。
これは賢明な判断だ。フレーム生成は多くの視覚的アーティファクト(特にUI要素)を生み出し、入力遅延を増加させる。特にコンソールゲーマーは、PC以上に一貫した体験を重視する傾向があり、フレーム生成のような実験的機能は好まれない。
その他の重要ニュース
Crucialブランド終了の真実
MicronがCrucialブランドを終了すると発表し、一部のメディアやYouTuberが「Micronが消費者市場から撤退」と誤報した。しかし実態は大きく異なる。
Micronは消費者市場から撤退していない。単にCrucialという「ブランド」を終了するだけだ。Micronは今後も、G.Skill、Kingston、Corsair、Mushkin、ADATA、Team Group、Patriot、PNYなどのメモリメーカーにDRAMチップを供給し続ける。実際、G.Skillの多くの製品は既にMicronチップを使用している。
興味深いのは、SamsungとSK Hynixは最初からCrucialのような消費者向け独自ブランドを持っていなかった点だ。それでも両社は消費者市場に大量のメモリチップを供給している。Micronも同じモデルに移行するだけで、これは業界標準に合わせた動きと言える。
Crucialブランド終了は、今回の供給危機の「症状」であって「原因」ではない。Micronは数ヶ月前から段階的にCrucialを縮小しており、供給危機が最終決定を早めた可能性はあるが、いずれ起こる予定だった変化だ。
Ryzen 9 9850X3Dのベンチマーク
Ryzen 9 9850X3Dとされるベンチマーク結果がリークされ、9800X3Dより約5%高速であることが示された。さらに興味深いのは、より高速なメモリサポートの可能性だ。
過去の情報によれば、AMDはZen 5世代でメモリコントローラーのビン分け(選別)を検討していた。最高品質のメモリコントローラーを選別し、最高品質のCCDチップレットと組み合わせることで、DDR5-8000やDDR5-9000といった高速メモリをサポートできる可能性がある。
ただし、これは確定情報ではなく、あくまで可能性として検討されていた内容だ。実際の製品でどこまで実現されるかは不明だが、5%の性能向上に加えて大幅に高速なメモリサポートが実現すれば、特定のワークロードでは10%以上の性能向上も期待できる。
2025年ゲーム・オブ・ザ・イヤー
The Game Awardsで「Claire Obscure: Expedition 33」が、ノミネートされた11部門中9部門を制覇する快挙を達成した。特筆すべきは、このゲームが1000万ドル未満の予算で製作された点だ。
Expedition 33は、Kingdom Come: Deliverance 2、Death Stranding 2、Ghost of Yoteiといった大作AAA タイトルとの競争に勝利した。これは、必ずしも数億ドルの予算が優れたゲームを生み出すわけではないことを証明している。実際、一部のAAAタイトルは5億ドル以上の予算を投じているが、批判的なレビューを受けることも珍しくない。
ゲーム業界は、持続可能な開発予算と創造性のバランスを再考する時期に来ている。Expedition 33の成功は、中規模予算(いわゆる「AA」タイトル)とインディーゲームが、業界の健全な発展に不可欠であることを示している。
その他の短信
Panther Lake IGP性能: IntelのPanther Lake統合GPUのベンチマーク結果がリークされ、AMD Strix Pointを上回る性能を示した。ただし、AMDは2025年初頭に40CU版Strix Haloをより安価な製品ラインに投入する噂があり、Intelの優位性は短命に終わる可能性がある。
Intel CEO疑惑: リップ・ブータンCEOが、自身が投資する企業との取引を通じて個人的利益を得ている疑惑が浮上している。詳細は現在調査中だが、事実であればIntelにとってさらなる混乱要因となる。
コンソール販売動向: 2024年ブラックフライデーで、PS5がNintendo Switch 2を上回る販売を記録した。Switch 2の初期販売は好調だったが、長期的な成功は不透明だ。一方、謎の新コンソール「Nextplay Playground」がXboxを上回る販売を記録し、業界を驚かせた。
Call of Duty衰退: Black Ops 6のピークプレイヤー数は、Modern Warfare 2と比較して80%減少した。年次リリースモデルの限界が明確になりつつある。
PC業界は2026年に困難な時期を迎えるが、適切な情報と計画により、消費者は影響を最小限に抑えることができる。最も重要なアドバイスは、「必要なものは今すぐ購入する」ことだ。