■事実
DDR5価格は世界的に「DRAM価格高騰(RAMpocalypse)」前比4〜5倍高の状態が続いています。
ドイツ市場でも3月に各種DDR5モジュールの価格が下落(月次7.2%、8ヶ月連続上昇後の初の反落)したが、4月に入って反発しており、平均価格は2025年7月比で約408%高い水準が継続しています。
@realVictor_M の報告によると、中国市場における16GB DDR5 SO-DIMMの価格が今年最大の下落を記録しました。
SO-DIMMはノートPC・小型PCに搭載される規格で、デスクトップPC向けのDIMMとは別枠です。
直近のピーク価格(2026年2月)は1,759元(約257ドル)だったが、1,159元(約169ドル)まで下落、下落幅は600元(約87ドル)・34%となります。
昨年(2025年6月)の同品の実売価格は246元(約36ドル)であり、現在の「値引き後」価格でも当時の約4.7倍(ほぼ5倍)に相当します。
下落の実態:スポット市場と二次流通の問題
スポット市場全体はDRAM市場の約1〜5%に過ぎず、コントラクト(契約)価格への影響は現時点で限定的です。
2026年Q1のDRAMコントラクト価格は前四半期比90〜95%上昇しています。(TrendForce)
2026年Q2のコントラクト価格予測は前四半期比58〜63%上昇しています。(TrendForce)
TrendForce・業界関係者の情報によると、深圳・華強北(ファーチャンペイ)の電子市場での30%超の価格下落は、主にサーバーから取り外された「中古・二次流通品」のDRAMモジュールが対象となっています。
正規チップ搭載の新品モジュール価格は安定を維持しており、今回の下落が全市場に波及したわけではありません。
値下がりの背景:Google TurboQuantとパニック在庫整理
業界アナリストは今回の動きを「構造的需要悪化のシグナル」ではなく、「コンシューマー主導の短期調整・在庫消化」と評価しています。
直近の下落の引き金の一つとして、GoogleのAI推論技術「TurboQuant」の発表があります。これを受けてSamsung・SK Hynix・Micronの時価総額が下落し、流通在庫を抱えるリセラー・トレーダーが利益確定売りと在庫放出に走りました。
ただしTurboQuantはAIデータセンター向け推論技術であり、PC DIMM価格への直接的な需要影響は小さいとする見方も有力です。
構造的な供給逼迫の背景
2026年のAI向け用途はDRAM全生産量の20%を消費する見通しです。(2023年は5%未満)
価格正常化は早くとも2026年末〜2027年、新工場(米国オハイオ・テキサス)が量産に達する時期が目安とされます。
Samsung・SK Hynix・MicronはウェーハのHBM(高帯域幅メモリ)・サーバーDRAM向け配分を拡大しており、コンシューマー向けDDR5の供給が構造的に圧迫されています。
HBMはNVIDIA Blackwell・AMD MI350などのAIアクセラレーターが大量消費しています。HBMの利益率はコンシューマーDRAMの5倍以上です。
1ビット分のHBMを製造するのに必要なウェーハ面積は、DDR5の約3倍です。(TSVスタッキングの複雑性による)
解説
SO-DIMIはノートPC・NUC・小型PCのメモリであり、自作デスクトップよりもアップグレードの選択肢が少ない。価格5倍の影響を最も受けるのは、ノートPCのメモリ増設・修理市場だ。
「DRAM価格高騰は2026年末に解消」という楽観論は繰り返し後退してきた経緯がある。個人的には2026年末の正常化シナリオにも懐疑的——AIデータセンター投資が鈍化しない限り、サプライヤーがHBMを諦めてコンシューマー向けに戻る理由がない。
5倍の価格から34%引きを「今年最大の値下がり」と報じなければならない業界の語彙の貧困さよ……。
「今年最大の値下がり」と言っても昨年比で約5倍——これを値下がりと呼んでいいのか、という根本的な疑問が残る。消費者にとってのリアルな感覚は「5倍払って、34%マシ」といったところだ。
今回の下落がスポット市場の中古品・二次流通品に偏っているという業界側の説明は事実として重要だが、それを差し引いても正規品の16GB DDR5 SO-DIMMが4万円超(169ドル)なのは、ノートPCの標準メモリとして異常な価格水準だ。
ドイツ市場で3月に下落→4月に反発という動きが既に確認されており、中国市場でも「今回の値下がりが持続するか」は不透明。スポット市場のトレーダー主導の動きは反転しやすい。
Google TurboQuantを直接の引き金として語ることへの慎重論は正しい。ただ、それを受けてサプライチェーン全体がパニック的な在庫放出に動いた事実は、市場参加者の心理が「いつ崩れるか」を常に意識していることを示している——高値が持続する自信のなさの裏返しだ。
構造的な問題は変わっていない:HBMへのウェーハ転換は合理的な経営判断であり、AI需要が衰えない限り逆転しない。コンシューマーDRAMが「優先されない顧客」である状況は2027年以降も続く可能性が高い。
さて、下がった経緯は今まで説明してきた通りだが、こうして冷静に俯瞰してみると、価格が上がるメカニズムが分かってくる。
- まず、多量の発注により、新品の価格が上がる。
- 入手が困難になると、多めに確保する業者が増える。
- 入手困難な状況が一定数続くと、希少性が上がり中古の放出も減る。
- 転売屋が動き、小売市場に出回った製品の価格も上がる
つまり、本来で言えば1だけで済むところが、手に入らなくなるかもしれないという心理的な作用によって2-4迄の行動に走るものが出るということだ。
品薄が危機を生み、どんどん価格が上がる要素が増えていくということになる。
どの業者も人間がやっている以上、玉不足になるとマージンを取りたくなるということだ。
今まで価格が下がったというのは2-4までの話で、1のレイヤーでは下がっていない=根本的な解決になっていないということでもある。

