
AMDの次世代ハイエンドAPU「Medusa Halo」(コードネーム)がLPDDR6メモリに対応するという情報が、ハードウェアリーカーとして知られる「Gray/Olrak29」氏から報告された。
Medusa HaloはRyzen AI MAX 500シリーズとして製品化される見込みで、現行のStrix Halo(Ryzen AI MAX 300シリーズ)の真の後継機種となる。
発売は2027年から2028年にかけてと予測されている。
現行のStrix Haloは256ビット幅のLPDDR5X-8000メモリインターフェースを採用し、最大256GB/sの帯域幅を実現している。
その後継となるGorgon Halo(Ryzen AI MAX 400シリーズ)では、LPDDR5X-8533への対応により約273GB/sまで向上する見込みだ。
■メモリ帯域幅が約80%向上の可能性
LPDDR6はJEDECによって2025年7月に正式に標準規格(JESD209-6)として発表された。
転送速度は10,667MT/sから14,400MT/sまでの範囲で定義されており、1チャネルあたり28.5GB/sから38.4GB/sの帯域幅を提供する。
LPDDR6の大きな特徴は、24ビット幅のチャネルを2つの12ビット幅サブチャネルに分割するデュアルサブチャネル設計だ。
これにより、小さなデータ単位でのアクセスが高速化され、レイテンシの低減と同時実行性の向上が実現される。
Medusa Haloが256ビット幅のメモリバスを維持した場合、LPDDR6-14400では理論上約460GB/sの帯域幅が得られる。
これはStrix Haloの256GB/sと比較して約80%の向上となる。
統合GPUにとってメモリ帯域幅は性能を左右する重要な要素であり、この大幅な帯域幅向上はグラフィックス性能の大きな飛躍につながると期待される。
■Zen 6とRDNA 5を搭載予定
Medusa HaloはCPUコアにZen 6アーキテクチャ、統合GPUにRDNA 5アーキテクチャを採用すると報じられている。
CPUは最大24コア構成になる可能性が示唆されており、現行Strix Haloの最大16コアから大幅な増加となる。
これは12コアのZen 6 CCDを2基搭載する構成によって実現されると見られる。
統合GPUは最大48基のコンピュートユニット(CU)、つまり3,072基のストリームプロセッサを搭載する見込みだ。
Strix Haloは40CU(2,560ストリームプロセッサ)であるため、GPU側も20%の規模拡大となる。
一部の情報では、Medusa HaloのRDNA 5 GPUは単体のデスクトップGPU用チップレット「AT3」をそのまま流用する可能性が指摘されている。
これが事実であれば、統合GPUとしては異例の高性能を実現することになる。
■LPDDR6の技術的進化
LPDDR6はLPDDR5Xと比較して、消費電力面でも大きな進化を遂げている。
コア電圧がさらに低下し、VDD2電源の供給方式も改良された。
動的電圧周波数スケーリング(DVFSL)により、低周波数動作時に電圧を下げて消費電力を削減できる。
低帯域幅用途向けには、単一サブチャネルのみを動作させる「Dynamic Efficiencyモード」が用意されている。
信頼性とセキュリティ面では、オンダイECC(エラー訂正コード)、コマンド/アドレスパリティチェック、メモリ領域の分離機能が追加された。
これらの機能は、データ破損の防止や早期の障害検出に役立ち、自動車や医療機器など高信頼性が求められる用途でも重要となる。
業界大手のQualcomm、Samsung、Micron、MediaTek、SK hynixなどがLPDDR6の開発と採用を表明している。
Cadenceはすでに14.4Gbps対応のLPDDR6/5X対応メモリIPの開発に成功したと発表しており、実用化は着実に進んでいる。
■製品ロードマップ
AMDのHaloシリーズは、今後3つの世代に分かれて展開される見込みだ。
現行のStrix Halo(Ryzen AI MAX 300シリーズ)は2025年初頭に発表され、16コアのZen 5とRDNA 3.5ベースの40CU GPUを搭載する。
メモリはLPDDR5X-8000で、256GB/sの帯域幅を提供する。
2026年後半には、マイナーアップデート版のGorgon Halo(Ryzen AI MAX 400シリーズ)が登場する予定だ。
Gorgon HaloもZen 5とRDNA 3.5の組み合わせだが、メモリがLPDDR5X-8533に向上し、273GB/sの帯域幅を実現する。
一部のSKUではクロック速度の向上も見込まれる。
そして2027年から2028年にかけて、Zen 6とRDNA 5を搭載した真の次世代機Medusa Halo(Ryzen AI MAX 500シリーズ)が投入される。
製造プロセスはTSMCのN2Pプロセス(コンピュートダイ)とN3Pプロセス(IOダイ)が採用される見通しだ。
■Infinity Cacheの重要性
Strix Haloの成功要因の一つは、32MBのInfinity Cache(Memory Attached Last Level、略称MALL)の効果的な活用にある。
このキャッシュは、統合GPUと共有メモリの間に配置され、頻繁にアクセスされるデータを保持する。
実測によれば、Infinity Cacheは256GB/sの理論帯域幅の限界に達することなく、グラフィックス性能を維持することに成功している。
キャッシュヒット時にはメインメモリへのアクセスが不要となり、実効的な帯域幅が大幅に向上する。
テストでは、3DMark Time Spy Extremeのような高負荷ワークロードでも、DRAM帯域幅の制約を回避できることが確認された。
一方で、GHPCやUnigine Valleyといった一部のワークロードでは、256GB/sに近い帯域幅要求が発生し、メモリがボトルネックになる傾向が見られた。
Medusa Haloが460GB/sという高い帯域幅を実現すれば、こうした高負荷シーンでもパフォーマンスの低下を防げる。
さらに、キャッシュ容量自体も増加する可能性があり、RDNA 5アーキテクチャの改良と相まってより効率的なメモリ利用が実現するだろう。
■競合との比較
現時点で、IntelのPanther Lake 12Xe3 SoCsは、ノートPC向けとしては最速のLPDDR5X-9600対応を実現している。
しかしMedusa HaloのLPDDR6-14400は、これを大きく上回る転送速度となる。
統合GPUの性能面では、Strix Haloの256GB/sの帯域幅は、NVIDIAのモバイル向けRTX 4070(128ビットGDDR6で約256GB/s)と同等とされている。
Medusa Haloの460GB/sという帯域幅は、RTX 5070 Tiクラスのゲーミング性能を実現する可能性があるという予測もある。
実際、Strix Haloに搭載されたRadeon 8060S iGPUは、32MBのInfinity Cache(Memory Attached Last Level)の恩恵により、256GB/sの理論帯域幅の限界に達することなく高いパフォーマンスを発揮している。
Medusa Haloはこの成功したキャッシュ設計を継承しつつ、メモリ帯域幅自体を大幅に向上させることで、さらなる性能向上を目指すと考えられる。
■AI PC市場における位置づけ
Medusa Haloは、急速に拡大するAI PC市場を狙った製品として開発されている。
AI PCとは、ローカル環境で高度なAI処理を実行できる能力を持つパーソナルコンピュータを指す。
従来はクラウドサービスに依存していた大規模言語モデルや画像生成AIなどを、端末上で直接実行できることが特徴だ。
この市場では、プライバシー保護、レイテンシの低減、オフライン動作の可能性といった利点が重視される。
AMDはStrix Haloで、最大128GBの大容量メモリと強力な統合GPUを組み合わせることで、この分野に本格参入した。
Medusa Haloはその延長線上にあり、さらに高い処理能力を提供することを目指している。
Qualcommは、LPDDR6の標準化において中心的な役割を果たし、モバイル向けSoCでの早期採用を表明している。
同社は、LPDDR6がモバイル業界だけでなく、コンピューティング、自動車、AI、その他の分野で革新的な進歩をもたらすと予測している。
SamsungもLPDDR6のJEDEC規格確立が次世代製品の加速に重要な役割を果たすと述べており、業界全体での採用が進む見通しだ。
MediaTekは、LPDDR6が電力効率、セキュリティ機能、性能のバランスに優れていることを強調している。
■ローカルLLM実行への期待
Strix Haloは128GBまでのメモリ容量をサポートし、ローカル環境での大規模言語モデル(LLM)実行に適したプラットフォームとして注目されている。
70Bパラメータクラスのモデルをメモリに展開できる一方で、256GB/sの帯域幅が推論速度の制約となっていた。
実際の測定では、Strix HaloのRadeon 8060S iGPUは約215GB/sの実効メモリ帯域幅を記録している。
これは理論値の256GB/sに対して約84%の効率であり、優れた実装と言える。
Medusa HaloがLPDDR6対応により帯域幅を約80%向上させれば、トークン生成速度の大幅な改善が期待できる。
一部の情報では、Medusa Haloは384ビット幅のLPDDR6メモリバスを採用する可能性も指摘されている。
もしこれが実現すれば、理論帯域幅は480GB/sから691GB/sの範囲に達し、ハイエンドワークステーション向けGPUに匹敵する水準となる。
48基のRDNA 5 CUと組み合わせることで、プロンプト処理とトークン生成の両面で高速な処理が可能になる。
デスクトップ用GPUチップレット(AT3)を統合する設計であれば、並列処理性能もさらに向上する。
ローカルLLM実行においては、メモリ帯域幅が直接的にトークン毎秒の処理速度に影響する。
Strix Haloが大規模モデルのロードを可能にしたのに対し、Medusa Haloはそれを高速かつ応答性の高いものにすると期待される。
■未確定情報への注意
ただし、これらの情報はすべて非公式のリークに基づくものであり、AMDは正式にはMedusa Haloの存在すら確認していない。
実際、Gorgon Haloについても公式発表はまだ行われていない。
2026年1月のCES 2026では、Strix Halo製品ラインに2つの新しいSKUが追加されたものの、次世代製品に関する発表はなかった。
製品仕様、発売時期、性能などは今後変更される可能性が高い。
特に半導体業界では製品計画の変更や延期が頻繁に発生するため、これらの情報は参考程度にとどめるべきだ。
解説
正直なところ、Medusa HaloのLPDDR6対応という噂には大きな期待を持っています。
Strix Haloは統合GPUとしては驚異的な性能を実現しましたが、やはり256GB/sという帯域幅が足かせになる場面もありました。
これを460GB/sまで引き上げられれば、本当の意味でミドルクラスの単体GPUに匹敵する性能が実現できるでしょう。
特にゲーミング用途では、高解像度・高フレームレートでのプレイにおいてメモリ帯域幅が非常に重要です。
1440p/60fpsや4K/30fpsといった設定で、より多くのタイトルが快適に動作するようになるはずです。
ローカルLLM実行という観点からも、帯域幅の向上は非常に意味があります。
Strix Haloでは70Bモデルを動かせてもトークン生成が遅いという課題がありましたが、Medusa Haloならその問題がかなり改善されるでしょう。
プライバシーを重視したい開発者やクリエイターにとって、クラウドに依存せずローカルで高速にLLMを実行できる環境は理想的です。
ただし、発売は2027年から2028年という話なので、まだ2年近く先の製品です。
その間にIntelもNVIDIAも次の手を打ってくるでしょうし、メモリ価格の動向次第では製品価格が大きく跳ね上がる可能性もあります。
現在のメモリ不足問題が2027年まで続くようだと、せっかくの高性能APUも価格的に手が届かない製品になってしまうかもしれません。
それに、384ビット幅メモリバスという情報が正しければ、基板設計やパッケージングが複雑化し、コスト増の要因になります。
AMDがどこまで価格を抑えられるかが、この製品の成否を左右しそうです。
個人的には、Gorgon Haloの方が現実的な選択肢になるのではないかとも思っています。
2026年後半に登場予定で、LPDDR5X-8533で273GB/sという帯域幅は、現行のStrix Haloから約7%の向上です。
控えめな進化に見えますが、価格据え置きで性能向上が実現できれば、市場での競争力は十分にあるでしょう。
Medusa Haloはその先の「究極のAPU」として、コストよりも性能を最優先するユーザー向けの製品になるのかもしれません。
いずれにしても、AMDがHaloシリーズで統合GPUの性能水準を引き上げ続けていることは間違いありません。
単体GPUに迫る性能を持つAPUが普及すれば、薄型軽量ノートPCでも本格的なゲーミングやクリエイティブ作業が可能になります。
バッテリー駆動時間と性能のバランスが取れた製品が増えることを期待しています。
| 製品シリーズ | Ryzen AI MAX 500 | Ryzen AI MAX 400 | Ryzen AI MAX 300 |
|---|---|---|---|
| コードネーム | Medusa Halo | Gorgon Halo | Strix Halo |
| プロセス技術 | N2P | N4 | N4 |
| CPUアーキテクチャ | Zen 6 | Zen 5 | Zen 5 |
| 最大コア/スレッド数 | 24/48(予測) | 16/32 | 16/32 |
| 最大CPUクロック | 未定 | 未定 | 5.1GHz |
| 最大L2キャッシュ | 未定 | 16MB | 16MB |
| 最大L3キャッシュ | 96MB(予測) | 64MB | 64MB |
| GPUアーキテクチャ | RDNA 5 | RDNA 3.5 | RDNA 3.5 |
| 最大GPU CU数 | 48(予測) | 40 | 40 |
| 最大GPUクロック | 未定 | 未定 | 2.9GHz |
| メモリ対応 | LPDDR6 | LPDDR5X | LPDDR5X |
| メモリ速度 | 14,400MT/s(予測) | 8,533MT/s | 8,000MT/s |
| メモリ帯域幅 | 約460GB/s(予測) | 約273GB/s | 256GB/s |
| TDP | 未定 | 未定 | 45-120W |
| 発売時期 | 2027-2028 | 2026-2027 | 2025 |