目次
概要
今回はKingMAXのNVMe Gen3 SSDをレビューします。
KingMAXは台湾のメモリ関連メーカーで、PC用のメモリやSSDなどのフラッシュ製品を製造しています。
産業用の製品を手掛けており、HPなどを一通り見た印象としては信頼性はそこそこあると思います。
セルやメモリチップを生産しているわけではないでしょうが、HPに特許取得のことが書いてあることからDIMMなどのメモリモジュールを生産する自社Fabは(恐らく)持っているのではないですかね。
Fabレスで製品の企画だけをやっているメーカーよりはかなり技術力が高く安心感のあるメーカーだと思います。
HPの日本語もきちんと日本語のわかる人が作っている感じです。
大手のメーカーのようにマーケティングも意識した作りではないですが、昔ながらのHPで質実剛健と言う感じです。
中国語や英語を無理やり日本語にしたような感じはありませんでした。
日本では株式会社SACが代理店になって販売されています。
KingMAX日本代理店 - 株式会社SAC 製品紹介ページ
KingMAXはあまり知名度が無いように感じる方もいると思いますが、中華のamazonで直売しているようなメーカーと比較すると比較的販売体制はしっかりしていると思います。
代理店の売上が2021年で25億円、国内代理店の雄、ASKさんが387億円ですのでそれと比べると規模的にはかなり小さい代理店と言うことになります。
2006年創業と割とこの世界ではそこそこ古い方だと思います。
日本では知名度があまり高くないメーカーですが、今まで私が紹介してきたSSD製品の中ではトップクラスに信頼性が高いと思います。
産業用の製品を製造している会社は一般のPC向け製品が不振でもある程度需要が見込めて、元々が性能よりも信頼性の高い製品を作っていますので、そう言う点でも私の中では好印象です。
私も調べるまでは全くわからない単に怪しいメーカーと言う印象だったのでかなり意外でした。
レビュー品の紹介
実際の製品を見てみましょう。
箱には封印するシールなどは特に付いていませんでした。これはちょっとマイナスです。
箱裏にはスペックが書いてあります。
ブリスターに入った本体。説明書などは一切入っていません。
本体表面
本体裏面
KingMAXの製品紹介ページに載っているスペックでは以下のようになっています。
インターフェース | M.2 PCIe Gen 3x4 | ||||
容量 | 128GB | 256GB | 512GB | 1TB | 2TB |
シーケンシャル R/W 速度 | 128GB 1800MB/s(R) 550MB/s (W) | 256GB 1950MB/s(R) 1200MB/s (W) | 512GB 1950MB/s(R) 1700MB/s (W) | 1TB 2400MB/s(R) 2100MB/s (W) | 2TB 2450MB/s(R) 2100MB/s (W) |
4K Random R/W 速度 | 128GB 85K(R) 130K(W) | 256GB 100K(R) 170K(W) | 512GB 145K(R) 255K(W) | 1TB 200K(R) 250K(W) | 2TB 220K(R) 330K(W) |
TBW (SSD耐久性) | 128GB 80TB
| 256GB 180TB | 512GB 360TB | 1TB 650TB | 記載なし |
消費電力 | 128GB 2.7W
| 256GB 3.5W | 512GB 3.5W | 1TB 3.75W | 2TB 4.15W |
耐衝撃性 | 1500G /0.5ms | ||||
平均故障間隔 | 2,000,000 時間 | ||||
動作温度 | 0~70°C | ||||
寸法 | 22 mm (W) x 80 mm (L) | ||||
重量 | 10g | ||||
電圧 | 3.3V | ||||
保証 | 3 年保証* | ||||
*SSDの保証は、TBWの寿命または保証期間に基づいています。 |
※ 容量の部分をクリックすると販売ページが別Window・タブで開きます。
あまり知られていない会社の製品としてはTBWまでキッチリ記載されており、今まで紹介してきた製品とは一線を画しているのがわかるのではないでしょうか。
TBWはなぜか2TB版のみ記載がありませんでした。
ネットから集められる情報はここまでだと思いますので、実際に使ってみました。
いつも通り、flash_idをかけてみましたが、今回も途中で止まりましたので、止まったところまでのログをこの記事の一番後ろに張り付けておきます。
コントローラー:Phison PS5013-E13T
フラッシュセル:Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
フラッシュセルにはMicron176層TLCが使われており、少し驚きました。
コントローラーはPhison PS5013-E13Tが使われており、シーケンシャルリードはやや遅めですから、あまり高性能と言う印象は薄いと思いますが、ランダム性能はなかなか優秀で、使い勝手には期待できそうです。
フォーマット後の空き容量は238GBでした。
検証環境
- CPU:Intel Core i7-13700K
- CPUクーラー:サイズ Big shuriken3 RGB
- マザーボード:Asrock Z690M-ITX/ax
- SSD:M2_2(チップセット側) Moment MT34 NVMe Gen3 SSD 256GB(システムドライブ)
- M2_1(CPU側) Kingmax NVMe SSD 256GB PQ3840(今回レビューするSSD)
- 電源:Corsair SFX 750W電源 SF-750
- メモリ:Patriot Viper DDR4-3000 OCメモリ8GB*2=16GB
- ケース:QDIY 0040-*PCJMK6-ITX(テストベンチ)
- OS:Windows11 22H2(最新Windows Update適用済)
注意してほしいのはテストベンチなので、当然オープンエアと言うことになります。
普通のケース(特にMini-ITX)よりはかなり冷却に関する条件が良いのでそれを差し引いてみてください。
SSDのヒートシンクはマザーボード付属のものではなく、単体売りしている製品を使っています。
理由はツイートでも報告しましたが、マザーボードに付属のものは2枚をいっぺんに冷やす一体型になっており、一方が爆熱だとシステムドライブの調子がおかしくなるからです。
使ったのは上の製品です。色は赤と黒があります。
今回ついにいつもシステムドライブとして使っていたAGI NVMe Gen3がお亡くなりになったので、前回のレビュー品であるMT34をシステムドライブに回しました。
Crystal Disk Info8
SMART情報を表示する定番ソフトCrystal Disk Info8の結果です。
電源投入回数が4回になっていますが、前から調子の悪かったAGIのNVMe SSDが今回お亡くなりになったのですが、何度か調子が悪く再起動を繰り返したため、電源投入回数が増えています。
トラブルで何度か再起動したため、最初の電源投入回数は見ていませんでした。
Crystal Disk Mark 8
ストレージの速度を計測する定番のベンチマークソフトCrystal Disk Mark8で速度を計測してみました。
Crystal Disk Mark8はデフォルトでは1GiBのテストデータで5回速度を計測して一番数字が良かったものを表示します。
ストレージの一番良い状態での速度を表示するソフトです。
シーケンシャル性能
PQ3840の256GB版のシーケンシャル性能メーカー公称値はリード1,950MB/s、ライト1,200MB/sですが、リード2346.14MB/s、ライト1233.46MB/sといずれも公称値以上の数値が出ています。
1/8/64GiBで計測しましたが、結果はまとめてグラフにしておきます。
ランダム性能
ランダム性能の最大値はリード164K IOPS、ライト251K IOPSです。
公称値はリード100K IOPS、ライト170K IOPSですので、それぞれ1.5倍程度公称値より速いということになります。
MT34ほどライト性能が高いわけではなく、どちらかと言うとリードもそこそこ早いバランス型のようです。
ATTO ベンチマーク
ATTOベンチマークはSSDのブロックサイズごとの性能を測定するベンチマークです。
QD1
QD4
AS SSD ベンチマーク
AS SSDベンチマークはSSD専用のベンチマークです。
空き容量が少なくなってきたら、どのように速度が変化するか?
最新のSSDはフラッシュセルを高速なSLCセルにしてキャッシュとして使い速度を上げています。
そのため、容量が少なくなるとキャッシュが減り速度に影響が出ます。
このテストはUSB接続の2.5'HDDから174GBのファイルをコピーし、残り64GBになってからシステムドライブのSSDから32GBのデータをコピーする、ちょっと意地悪なテストです。
USBの2.5'HDDから174GBのファイルをコピー
さすがPhison PS5013-E13Tです。特に速度の大きな落ち込みはなく、2.3GB/sでコピー完了しました。
残り64GBでNVMe SSDのシステムドライブから32GBのファイルをコピー
こちらも特に速度が落ちることなく2.3GB/s前後でコピーが完了しました。
以上から巨大なファイルの置場に使っても特に不便を感じることは無いでしょう。
最近のSSDは優秀ですね。
温度の変化
Crystal Disk Mark8でテストデータ8GiB、テスト回数9回を実行し、開始から終了後10秒間の温度の変化を測定。
32度、40度、41度変化しました。
キチンと冷却すれば問題ないレベルでしょう。
総評
産業用の製品を生産しているというところからかなり期待していたのですが、期待を裏切らないSSDでした。
コントローラーはPhison PS5013-E13T、フラッシュメモリセルはMicron176層TLCと高性能と最新のタッグであり、多少TBWが少ないものの、高い性能と使い勝手を誇ります。
発熱もそんなに大きくなく、価格も安価で、日本の会社が代理店に入っているため、非常に安心感があってお得感が高いSSDです。
価格が安いのは日本での知名度があまりないためだと思います。
性能、使い勝手、信頼性、価格のバランスが非常に取れている高レベルな製品だと思います。
シーケンシャルリード・ライトで性能を測る現在のSSD市場にあっては百凡の製品と言う印象ですが、ランダムリード・ライト性能が高いPhison PS5013-E13T搭載製品が埋もれてしまっているのはもったいないなと思います。
もうそろそろシーケンシャルリード・ライトで性能の全てを測る風潮は変わって欲しいところです。
今まで紹介してきた中で私が一押しするとすればこのKingmax PQ3840を押します。
それほどまでに高い次元でバランスよくまとまった製品だと思います。
今回のKingmax PQ3840はいわゆる掘り出し物と言ってもよいです。
今回紹介した製品
512GB版
1TB版
おまけ
phison_nvme_flash_id2.exeのログ
※ 途中で止まってしまったため、出力されたところまでとなります。
Please select drive number:0
Drive : 0(NVME)
Driver : W10(0:3)
Model : Kingmax PCIe SSD 256GB
Fw : EDFM92.1
HMB : 1604 - 260772 KB
Size : 244198 MB [256.1 GB]
LBA Size: 512
Firmware lock supported [02 01] [P001] [0102]
Drive unlocked [02 03]
F/W : EDFM92.1
P/N : 511-230313250
Bank00: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x30,0x0,0x0 - Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
Bank01: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x30,0x0,0x0 - Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
Bank02: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x30,0x0,0x0 - Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
Bank03: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x30,0x0,0x0 - Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die