AMDが現地時間11/6に三フランシスコで"AMD New Horizon"イベントを行いZen2ベースのサーバー向けCPU、コードネーム「Rome」と価格技術計算向け7nmRadeonである「Radeon Instinct MI60/MI50」を発表した。
一部は既報ですでに触れており、また、すでに他の自作系ニュースウォッチャーや国内の著名ITメディアが解説しているので理解されている方もいると思う。
当サイトがゲーム向けのサイトでありながら、なぜサーバー向けのCPUなんて解説するかと言うと、このRomeが多少設計を簡略化してそのままデスクトップとHEDTにも降りてくるからです。
利益率が高いサーバー向けでロンチした後、デスクトップ-HEDTというのが通常の流れです。
Impressで私がリスペクトしている後藤さんがすでに日本語の解説記事を書いてますので私が技術的な解説を行っても全くの蛇足のため、Zen2の新しいフィーチャーがゲーミング性能にどのような影響を与えるか説明したいと思います。
簡単にRomeの概要を説明すると
・intelの製造技術を凌ぐ世界最先端のTSMC7nmプロセスで製造。省電力性と性能が大幅に改善。同じ性能なら2倍の省電力性能。同じ電力なら1.25倍の性能向上が見込める。
・コア数が旧EPYCの32コア64スレッドから64コア128スレッドへ倍増
・浮動小数点演算の処理機が128bitから256bitへ変更され、2倍の性能向上
・分岐予測の改良によるIPCの改善
・Core Compulex(CCX)は1単位4個から8個+I/Oユニットへ変更
・CPUコアは7nm、I/Oユニットは14nmのハイブリッド構成になる。I/Oユニットが14nmなのは高電圧I/Oが難しくなるため。
・PCI Express 4.0が搭載される
・ハードウェアのセキュリティホール「Spectre」に対応
ざっとこのような感じです。
性能向上にかかわる部分は
CCXのコア数倍増・・・RyzenはCCXというコアの集まりをinfinity fabricという高速バスで接続する設計によって多コア化が簡単に出来るようになっています。現在のZen/+コアまでは1CCX4コアですが、Zen2ではこれが倍増され1CCX8コアになり、さらにそこにI/O用の14nm製造ダイが付けられます。単純に計算すると今までと同じ構成であるならば、デスクトップ向けのコア数も8コア16スレッドから16コア32スレッドとRyzen TheadRipper並みになることになりますね。
コア数の倍増・・・CCXのコア数が倍増したことによって1CPU当たりのコア数も倍増します。
浮動小数点演算の処理能力が2倍に・・・浮動小数点演算機が128bitから256bitになったことにより、2倍の性能向上が見込め、さらに単純計算でコア数が2倍になったので4倍の性能向上とAMDは主張しています。
分岐予測の改良によるIPCの改善
です。
ここから予想するデスクトップ向けCPUの未来
これは私の予測ですが、これらの機能を搭載したことによって旧モデルと同クロック比で10-15%の性能向上を果たし、クロックの増加分(見込)も含めると最終的には30%程度の性能向上になるのではないかと思っています。
この点は以前からずっと説明してきたことです。
intelのCPUを見てもわかる通り、CPUの性能向上というのは設計的にはすでに限界に来ており、クロックを上げることで数%の性能向上が細々と果たされてきたというのがここ最近の実情でした。
30%の性能向上が見込めるというのがどれだけものすごいインパクトがあるか理解していただけるのではないかと思います。
上はCinebench R15でのデスクトップ向けCPU Core i7/i9シリーズとRyzen7のシングルスレッド性能の比較です。
Ryzen7 1800Xは2014年に発売されたCore i7-4790K以下、最新のRyzen7 2700Xでも2015年に発売されたCore i7-6700K以下の性能しかなかったのがよくわかるのではないかと思います。
ここが現在のRyzenの最大の弱点で、intel CPUに対してゲーミング性能で後れを取っていた最大の要因と言われています。
今回のZen2ではここが大幅に改良されます。
Zen2が発売されれば、「ゲームをやるならRyzenの方がよい」と言われるようになるかもしれません。
もう一つ、注目なのはPCI Express 4.0が搭載される点です。
Ryzen ThreadripperはPCI Expressレーンが60レーンもありますのでPCI Express経由接続デバイスにかなり余裕があります。
PCI Expressが4.0になって帯域が倍増すればNVMeのSSDがまた高速化すると思います。
現在は3500MB/sくらいで頭打ちになっていますが、今後は7000MB/sくらいまで行くんじゃないでしょうか。
今後の気になる要因
実は2019年末にDDR5の生産が開始されると言われています。
このDDR5は同クロックのDDR4より1.36倍高速と言われており、DDR5が登場するとあるゲーミング向けのCPUの性能が飛躍的に向上する可能性があります。
それはRyzen5 2400GなどのGPU内蔵型CPUです。
GPU内蔵型のRyzenはRaven ridgeと呼ばれています。
この次のGPU内蔵型RyzenにDDR5が採用されれば爆発的に速度が上がることが見込まれます。
現在のGPU内蔵型CPUの最大のボトルネックはメモリの速度なので、現在のRyzen5 2400GはCore i3 8100+GT1030のやや下程度の性能ですが、DDR5が出ればGT1030とGTX1050/Tiの中間くらいの性能は出せるようになるかもしれません。
そうなるとGPU内蔵型のCPUでFullHDまでのゲームがかなり快適に動作する可能性が高くなってきます。
将来的には「PUBGくらいのゲームならRyzen5 4X00Gくらいで楽勝」と言われるようになるかもしれません。
この7nmを使ったZen2コアとDDR5に対応したGPU内蔵Ryzenも恐らくそう遠くない未来に登場すると思いますが、ゲーミングの世界に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
APUの登場によって64bitのバス幅の低価格単体GPUは殆ど死滅してしまいましたが、今度はGT1030クラスのGPUもその存在価値を失うかもしれません。
Zen2を使ったGPU内蔵型Ryzenは早くても2020年以降の発売となるでしょう。
ただ、いまだ正式に発表されているわけではありませんので、その旨お断りしておきます。
今だ姿を現さないRyzen3000シリーズが秘密のヴェールから少し姿が垣間見えた状態です。
2019年の発売に向けて楽しみに待ちましょう。
ソース:Impress - 後藤弘茂のWeekly海外ニュース - AMD、7nmで最大64コアの「ZEN2」とNVIDIA Voltaを上回る「Radeon Instinct M60」