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NVIDIA CMP 170HXの価格が一夜で100ドルから1,000ドル超に急騰 隠れた64/80GB VRAMを解放するツールが原因

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産業用パッシブ冷却シュラウドを持つデータセンター向けグラフィックカード。暗いサーバールームを背景にしたプロダクト写真風の構図

※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージです。必ずしも現実を反映しているわけではありませんのでご注意ください。

■事実

WCCFtechが2026年8月7日夜(JST 8月8日未明)に報じたところでは、NVIDIA CMP 170HX(8GB/10GBモデル)の実売価格が、数週間前の100〜200ドルから、非公式アンロックツール公開直後に1,000ドル超へ急騰しました。

eBayなどの二次流通市場では現在1,200〜2,000ドルの値がついています。

価格急騰の引き金となったのは「CMPUnlocker」というGitHub公開ツールです。(開発者amoghmunikote、リポジトリ公開は約2週間前)

ツールの説明では、ファームウェア/OTPで制限されていたSM(Streaming Multiprocessor)のフルコンピュートスループットと、HBM2eメモリのロックを解除すると謳われています。

報告によれば、8GBモデルは最大64GBへ、10GBモデルは最大80GBへ拡張可能とされています。

ただし全個体が満額まで解除できるわけではなく、ダイの品質・メモリスタックの不良により、実効的には32GB〜40GB程度が現実的なラインと報告されています。

解除作業にはLinux環境・root権限・nvidia-open 610.43.0xドライバ・Secure Boot無効化が必須で、一般ユーザーが気軽に行える作業ではありません。

CMP 170HXの正体は、NVIDIAのデータセンター向け旗艦GPU「A100」と同一のGA100ダイ(Ampereアーキテクチャ、7nmプロセス、ダイサイズ約826平方mm)を使った製品。中身はほぼA100そのものです。

NVIDIAはこのダイのうち、A100としての品質基準(歩留まりテスト)に通らなかった、あるいは意図的に選別した個体をマイニング専用カードとして再利用したとされています。

A100最大の特徴の一つはFP64(倍精度浮動小数点)演算に対応し、専用のFP64 Tensorコアまで搭載している点。これにより気象シミュレーション・流体力学(CFD)・核融合研究などの科学技術計算(HPC)分野で根強い需要があります。

しかしCMP 170HXはこのFP64性能がファームウェアレベルで大幅に制限されており、実測ベンチマークでは182GFLOPS程度しか出ません。(真のA100のFP64性能は9.7〜19.5TFLOPS規模とされ、桁が2桁以上異なる)

この制限は既知のソフトウェア的手法では解除できないと報告されています。CMPUnlockerなどのアンロックツールが解除するのはあくまでメモリ容量・PCIe帯域・FP32/FP16パスであり、FP64はそもそも解除の対象外です。

つまりCMP 170HXは制限解除後も、A100が本領を発揮するFP64ベースのHPC用途には使えない。あくまで「メモリ容量とメモリ帯域」を活用できるワークロード(LLM推論、メモリ帯域律速の一部シミュレーションなど)に限定されています。

表示出力なし、CUDA計算機能なし、公式のコンピュート向けドライバなしという仕様で出荷されており、「A100からゲーム・AI用途としての価値を意図的に奪った状態のGPU」として設計されています。

ファームウェア/OTP(ワンタイムプログラマブルメモリ)によって、メモリ容量(8GB/10GBのみ)・PCIe世代(実質Gen1相当)・FP32/FP16などの演算パスが恒久的に制限されており、これはNVIDIAがデータセンター向けA100・A100 40GB/80GBモデルの市場を、安価なマイニングカードに侵食されないよう防衛する目的だったと分析されています。

CMP 170HXは当時のMSRPは4,299ドルで、CUDAコアは4,480基、HBM2eメモリ帯域は約1,493GB/sです。

解除後もFP8/FP4には対応せず、演算性能はINT8中心の48TOPS程度にとどまります。

ローカルLLM(大規模言語モデル)の推論実行はLLM推論はGPUの演算性能よりもメモリ帯域に律速されることが多く、1,493GB/sという帯域は現行のRTX 4090(約1,008GB/s)を上回るため、大容量メモリと組み合わせれば魅力的な選択肢になり得ます。

メモリ帯域律速型の科学技術計算(CFD=数値流体力学、FDTD=時間領域差分法などのシミュレーション):計算量よりデータ転送量が支配的な処理で有利とされています。

パスワードクラッキングなどメモリ帯域依存の演算:ただし純粋な計算性能(compute-bound)が必要な用途では、RTX 3080など通常のゲーミングGPUの方が高速との報告もあり、万能ではありません。

PCIe接続もGen2 x4相当までしか解除できないとの報告があり、最新GPUと比べてホスト側とのデータ転送速度は大きく見劣りします。

一方で、FP8/FP4など昨今のAI推論で標準的な低精度演算フォーマットには対応しないため、最新の量子化モデルを効率良く動かす用途には向かない。あくまで「メモリ容量とメモリ帯域だけは本物」という限定的な強みを生かす用途に絞られています。

比較表

項目CMP 170HX
(制限状態)
CMP 170HX(解除後・主張値)NVIDIA A100 40GBRTX 4090
GPUGA100(Ampere)GA100(Ampere)GA100(Ampere)AD102
VRAM8GB/10GB HBM2e最大64GB/80GB HBM2e
(実効32〜40GB程度が現実的との報告)
40GB HBM2e24GB GDDR6X
メモリ帯域約1,493GB/s約1,493GB/s約1,555GB/s約1,008GB/s
FP8/FP4非対応非対応(解除後も)対応対応(一部)
PCIeGen1相当に制限Gen2 x4相当まで解除と報告Gen4 x16Gen4 x16
中古相場
(数週間前→現在)
100〜200ドル1,200〜2,000ドル

ソース:

  • WCCFtech: https://wccftech.com/nvidia-cmp-170hx-8-10-gb-prices-explode-over-1000-usd-as-tool-unlocks-hidden-64-80gb-vram/
  • CMPUnlockerツール本体(GitHub): https://github.com/amoghmunikote/cmpunlocker

 

解説

5年前にマイニングブームの残骸として二束三文で売られていたカードが、ツール一つで実売価格が10倍以上に跳ね上がるという現象自体が、いまのAI/VRAM不足の異常さを象徴している。

解除後の実効容量には明確な個体差があり、「64GB/80GB」という表示は最大値の主張にすぎず、実際に安定動作するかは開封するまで分からない“ロトくじ”的な博打商品になっている。

1,493GB/sという帯域自体は本物であり、メモリ帯域律速のワークロード(LLM推論など)では魅力的な数字だが、FP8/FP4非対応・PCIe帯域制限という制約とセットで評価する必要がある。

GDDR/HBMメモリの世界的な逼迫という文脈で見ると、この現象は「AIがすべてを民主化する」という物語の裏側を映す好例だ。AIデータセンター向け需要がメモリ価格全体を押し上げ、5年前の産業廃棄物同然のカードすら投機対象に変えてしまった。

ファームウェアロックの解除は、同一ダイを価格帯で意図的にセグメント化するメーカー側のビジネスモデルに対する、ユーザーコミュニティ側からの実力行使とも言える。

マイニングブームの「産業廃棄物」が、AIブームの「都市鉱山」に変わったというのは、なかなか皮肉が効いているる

安物買いの銭失いならぬ「安物買いの一攫千金」、ただしハズレを引く確率もそれなりに高い、という話だ。

A100がHPC分野で選ばれる本質的な理由はFP64性能にあるが、CMP 170HXはそこだけは頑として解放されない。つまり「A100が格安で手に入る」という理解は二重の意味で誤りで、AI推論用途としても限定的、HPC用途としては最初から蚊帳の外ということになる。

FP64ロックだけがどうしても外れないという事実は、NVIDIAがこのカードを「AI・ゲーム市場を荒らさない範囲でメモリ帯域だけは使わせる」よう相当作り込んで設計していたことの裏返しとも言える。

要するに、「AI向けの演算能力」ではなく「AI向けの器(メモリ)」だけを安く手に入れる裏技という位置づけ。演算そのものはRTX 3080クラスにも劣る場面があるため、「A100が5万円で買えた」という単純な話では決してない。

この用途の限定性を理解せずに「A100が格安で手に入る」と早合点して飛びつくと、FP8非対応やPCIe帯域の細さで期待した性能が出ず、痛い目を見るユーザーが一定数出てくると見ている。

 

 

産業用パッシブ冷却シュラウドを持つデータセンター向けグラフィックカード。暗いサーバールームを背景にしたプロダクト写真風の構図(参照用) ※実在製品を模した写実的画像のため、AI生成画像である旨の開示注記が必要です

 

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