
■事実
VRAMを16GBから32GBのGDDR6Xに倍増させた改造版GeForce RTX 4080が、中国の中古プラットフォームに多数出品されています。
出品価格はおおむね1万元(約1,480ドル)超です。
これは同時期に話題となったVRAM22GB改造版RTX 2080 Tiの価格(約499ドル)のほぼ3倍に相当します。
中国国内における改造版RTX 40シリーズの流通が、再び拡大している状況とされています。
ベースとなっているのは正規品のRTX 4080そのもので、追加のメモリ容量を持たせる改造が施されたものです。
正規のRTX 4080は16GB GDDR6X・256ビットインターフェース・CUDAコア9,728基という仕様です。
容量を倍増させても256ビットのバス幅自体は変わらず、メモリ帯域幅も増加しません・
改造の手法は、メモリチップの交換・追加とボード上のメモリ構成変更により、GPU側に32GBとして認識させるというものです。
長期的な安定性は、PCBの状態・メモリの実装品質・改造を担当した業者の技術力に左右されるとされています。
VRAM容量のみを重視する購入者にとっては、32GB版RTX 4080は正規の24GB版RTX 4090よりも大きなメモリを持ちながら、プロ向けの32GBないし48GB搭載カードよりも大幅に安く入手できる計算になります。
表(比較)
| GPU | 元VRAM | 改造後VRAM | 時期 | 実勢価格目安 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| RTX 2080 Ti | 11GB | 22GB | 2026年8月(直近) | 約499ドル | 香港拠点セラーがeBayで箱単位出品 |
| RTX 4080(無印) | 16GB | 32GB | 2026年8月(今回) | 約1,480ドル(1万元超) | 中国中古プラットフォームで多数出品 |
| RTX 4080 SUPER | 16GB | 32GB | 2025年10月 | 約9,200元(当時) | CT AIブランド、ブロワー型クーラー |
| RTX 4090 | 24GB | 48GB | 2025年春頃〜定着 | 約3,300〜3,400ドル | クラムシェル基板、署名済みVBIOS使用との報道 |
■解説
そもそも「ゲーミングGPUの改造でVRAMを盛る」こと自体は今に始まった話ではなく、中国では2024年前後からRTX 3090・RTX 4090系列を皮切りに続いてきた流れの延長線上にある。
直近の時系列:2025年10月に「RTX 4080 SUPER」の32GB改造版(CT AIブランド、9,200元前後)がすでに登場しており、今回は無印RTX 4080にも同じ改造が広がった、という位置づけだ。
さらに遡ると、RTX 4090の24GB→48GB改造(3,300〜3,400ドル前後)がすでに定着した「業態」として存在する。NVIDIA証明書の流出を利用して署名済みVBIOSを用意しているとの報道もあり、単なる素人細工ではなく組織的な生産ラインになっている。
直近ではTuringアーキテクチャのRTX 2080 Ti(11GB→22GB、約499ドル)も改造品が箱単位で出回っており、6〜8年落ちのGPUまでもがAI用途で「延命」させられている。
改造GPUが後を絶たない最大の要因は、米国による対中輸出規制。2026年5月には中国専用設計だったRTX 5090D v2が中国側の措置で輸入禁止になるなど、規制の綱引きが続いている。
正規の高性能AIチップに頼れない中国国内の中小事業者・個人開発者にとって、ゲーミングGPUの改造品は「規制の網をすり抜けたVRAM調達手段」として機能している側面がある。
技術的に興味深いのは「容量は倍増したが帯域幅は据え置き」という点。AI推論はVRAMをストリーミング的に読み書きするワークロードのため、キャッシュヒット率で帯域不足を補えるゲーミング用途とは違い、容量が増えても実効性能は素直に帯域幅に律速される。
信頼性面のリスクも軽視できない。メーカー保証は一切効かず、過去にはRTX 3070の16GB改造版がドライバ更新後に旧容量しか認識しなくなった事例も報告されている。
正規品を買うより先に「メモリチップを盛る職人」に発注する方が早いというのは、もはや自作PCというより臓器移植の域ではないか。
規制と価格高騰が続く限り、この「改造GPU業」は当分なくならないだろう。