
※ 画像は記事の内容を基にしたイメージです。
グラフィックスカード市場に激震が走っている。NVIDIAとAMDの両社がAIC/AIBパートナーに対してGPUメモリバンドルの価格引き上げを正式に通知したことが明らかになった。台湾のテック系メディアBenchlifeの報道によれば、NVIDIAは2025年1月16日付けでパートナー各社に対し、GDDR6およびGDDR7メモリを含むすべてのバンドルパッケージの値上げを通知した。興味深いことに、両社が値上げに踏み切る中でも、NVIDIAの新価格はAMDがAIBパートナーに通知した価格よりも依然として低い水準に設定されているという。
NVIDIAは現在、GDDR6メモリとして256Mb×32bitバス構成と512Mb×32bitバス構成の2種類※、加えてGDDR7メモリ1種類の計3種類をパートナーに供給しており、今回の値上げはこれらすべてに適用される。
※原文では「256×32」「512×32」と記載
一方でNVIDIAもAMDも、GPU自体の希望小売価格については変更しない方針を示している。NVIDIAは「MSRP」(Manufacturer's Suggested Retail Price)、AMDは「SEP」(Suggested Etail Price)という呼称を用いているが、いずれも希望小売価格を据え置くという点では共通している。
しかしメモリ価格が上昇し、希望小売価格が据え置かれるという状況下では、各ボードパートナーのエントリーモデルが市場から姿を消していく可能性が高い。利益を確保できないモデルを製造し続ける理由がないためだ。この構図は消費者にとって厳しい選択を迫ることになる。
メモリ危機の背景:AI需要がすべてを飲み込む
今回のGPU価格上昇の根本原因は、AI産業の急成長に伴うDRAM需要の爆発的増加にある。データセンター向けの高帯域メモリ需要が急増し、GDDR6やGDDR7といったグラフィックスメモリの供給も圧迫されている。TrendForceやDRAMeXchangeのデータによれば、2025年後半にはDRAMおよびNANDフラッシュの価格が15~25%上昇した。Samsung、Micron、SK hynixといった主要メーカーは旧世代の生産ラインを縮小し、AIおよびサーバー向けの生産能力増強にリソースを振り向けている。
この影響は深刻だ。DDR5メモリの価格は2025年を通じて急騰し、5月時点で約95ドルだったDDR5-6000 32GBキットは、12月には約410ドルまで上昇した。242%という異常な上昇率である。DDR5-5600 64GBキットに至っては約180ドルから約710ドルへと294%も跳ね上がった。この状況を受けてSamsungは12月中旬、下流メーカーに対して「在庫なし」という衝撃的な通達を行い、大手OEMですらスポット市場でのパニック買いを余儀なくされている。
現代のハイパフォーマンスGPUにおいて、GDDR6やGDDR7メモリは総製造コストの20~25%を占める。一部の報道では、メモリコストがGPU製造コスト全体の80%近くを占めるようになったという指摘すらある。こうした状況下でメモリ価格が上昇すれば、最終的なGPU価格への転嫁は避けられない。
NVIDIA:供給調整の波紋
NVIDIAはメモリ危機への対応として、2026年前半にGeForce RTX5000シリーズの供給量を2025年同期比で30~40%削減する計画があると報じられている。中国のBoBantangからの情報をBenchlifeが裏付ける形で、複数のAICパートナーおよびコンポーネントサプライヤーがこの供給調整についてコメントしている。
特に影響を受けるとされるのがGeForce RTX5070 TiとGeForce RTX5060 Ti 16GBモデルだ。いずれも16GB GDDR7を搭載しており、NVIDIAとしてはこのメモリをより利益率の高い製品に再配分したいという思惑がある。RTX5060 Ti 16GBはRTX5080と同じ16GBの容量を持ちながら、より低価格帯に位置するため、ギガバイトあたりの粗利が最も低いモデルとなっている。
この状況は2026年1月中旬に一時的な混乱を引き起こした。オーストラリアのYouTubeチャンネルHardware Unboxedは、NVIDIAの最大のAIBパートナーであるASUSがRTX5070 Tiを「End of Life」(EOL、生産終了)ステータスに指定したと報じた。しかしNVIDIAとASUSは迅速にこの報道を否定。NVIDIAは公式声明で「GeForce RTX GPUの需要は強く、メモリ供給は制約されている。我々はすべてのGeForce SKUの出荷を継続しており、サプライヤーと緊密に連携してメモリの可用性を最大化している」と述べた。
ASUSも続いて声明を発表し、「RTX5070 TiおよびRTX5060 Ti 16GBは製造終了やEOL指定されていない。ASUSはこれらのモデルの販売を停止する予定はない。現在の供給変動は主にメモリ供給制約によるもので、一時的に生産量と再入荷サイクルに影響を与えている」と釈明した。つまり製品自体の終了ではなく、メモリ不足による一時的な供給制限というのが公式見解である。
とはいえ、NVIDIAが8GBモデルへの供給シフトを進めているという報道は複数のソースから確認されている。HEKPCの報告によれば、NVIDIAはVRAM構成に応じて在庫調整を行い、一部の16GBモデルを優先度の低い位置に置く方針だという。具体的には、RTX5060 TiとRTX5070が同じ8GBと16GBバージョンを持つ場合、8GBバージョンが優先される。また同じ16GB構成であれば、RTX5060 Ti、RTX5070 Ti、RTX5080の中で最上位のRTX5080が供給優先される形となる。
AMD:RX 9070 XTへの出荷集中という謎
一方のAMDについても興味深い動きが報告されている。Benchlifeによれば、Radeon RX 9070 XTの出荷量がRadeon RX 9070を一貫して上回っているという。これは一見すると不可解な戦略に見える。両製品は同じNAVI 48チップを使用しており、XTX、XT、XL、XTWといったバリエーションの違いがあるだけだからだ。
より高価格帯のRX 9070 XTに出荷を集中させることは、利益率の観点からは理解できる。しかし、より手頃な価格のRX 9070への需要も確実に存在する市場において、上位モデルへの傾斜は消費者の選択肢を狭めることになる。NVIDIAが同様に16GBモデルよりも8GBモデル、あるいは高マージンの上位モデルへと供給をシフトさせていることと合わせて考えると、GPU市場全体でミドルレンジからメインストリーム向けの選択肢が減少していく可能性がある。
AMDはRX 9000シリーズの発売以来、価格面で苦戦してきた。RX 9070 XTは599ドルの希望小売価格に対して、発売当初から200ドル近いプレミアムが付けられて販売されるケースも多かった。最近ようやく希望小売価格付近に価格が安定してきたところで、今回のメモリ価格上昇が追い打ちをかける形となった。
AMDの値上げはNVIDIAよりも早く、2026年1月から始まるとされている。NVIDIAの本格的な値上げは2月からと予想されており、両社とも年内を通じて段階的な価格上昇が続く可能性が指摘されている。
希望小売価格は据え置き、だが現実は…
今回の発表で重要なのは、NVIDIAもAMDも公式の希望小売価格を変更しない方針を示している点だ。つまり、メーカーが提示する価格としては従来通りの金額が維持される。しかし実際の市場価格は別の話である。
メモリコストの上昇分はAIBパートナーが吸収しなければならず、その分は最終製品の価格に転嫁される。特にエントリーモデルや、利益率の低いバリエーションは市場から姿を消す可能性が高い。「希望小売価格を変えない」というのは、あくまで公式発表上の数字であり、店頭で実際に購入できる価格とは乖離していく構図が予想される。
Overclockers UKは顧客に対して「今すぐGPUを購入すべきだ。2026年には現在の在庫が売り切れ次第、大幅な値上げが行われる」と警告している。報道によれば、VRAM構成に応じて15~30ドル程度の値上げが見込まれているという。
供給危機はいつまで続くのか
業界関係者の見通しは厳しい。Micronの副社長は「メモリ不足は2028年まで改善しない」と発言している。一方でSapphireの担当者は「DRAMの危機は6ヶ月程度で安定し始める」との見方を示しており、見解は分かれている。
TrendForceやDRAMeXchangeの予測では、メモリ価格のピークは2026年中盤、供給不足は2027年第4四半期まで続くとされている。GDDR7の歩留まり改善や旧世代メモリの在庫消化により、GPU価格への影響は急激なものよりも緩やかな形で現れる可能性があるが、値下げを期待できる状況にないことは明らかだ。
NVIDIAはCES 2026でRTX5000シリーズのSUPERバリアントを発表しなかった。これはGDDR7メモリ不足、特に大容量モデルに必要な3GB GDDR7チップの深刻な不足が背景にあると見られている。SUPERシリーズは当初2026年第1四半期に予定されていたが、第3四半期まで延期される可能性が報じられている。
ゲーマーへの影響:8GB時代への回帰か
今回の一連の動きで最も影響を受けるのは、予算を抑えつつも最新世代のGPUを手に入れたいと考えるゲーマーだ。NVIDIAが8GBモデルへの供給をシフトさせ、16GBモデルの供給を絞るという戦略は、現代のゲーミング環境を考えると問題がある。1080pの高設定、あるいは1440p以上の解像度でプレイする場合、8GBのVRAMでは不足するケースが増えているためだ。
RTX5060 Ti 16GBは2025年発売時点で「最もコストパフォーマンスの高いモデル」として期待されていた。しかし供給制限により市場から消えていけば、消費者は8GB版を購入するか、より高価な上位モデルに手を伸ばすかの選択を迫られる。
AMDのRX 9070シリーズは16GB GDDR6を搭載しており、NVIDIAのGDDR7モデルとは異なる供給チェーンの制約を受けている。しかしGDDR6もまた価格上昇の波から逃れられておらず、AMD製品も値上げは避けられない状況だ。
まとめ
AI産業の急成長がもたらしたメモリ需要の爆発は、ゲーミングGPU市場に深刻な影響を与えている。NVIDIAとAMDの両社がメモリバンドル価格の引き上げをパートナーに通知し、2026年を通じて段階的な価格上昇が予想される。公式の希望小売価格は据え置かれるものの、実売価格の上昇とエントリーモデルの消失は避けられない見通しだ。
メモリ供給の制約は少なくとも2026年後半まで、最悪の場合2028年まで続くという予測もある。GPU購入を検討しているユーザーにとっては、現在の価格と在庫状況を慎重に見極めながら、タイミングを判断する必要がある局面と言えるだろう。旧正月明けまでは両社からのさらなる価格調整の発表はないと見られているが、その先の市場環境は依然として不透明だ。
ソース:Benchlife - GDDR6、GDDR7 記憶體價格調漲,NVIDIA GeForce RTX 50 系列建議售價不變