電源の選び方
私は電源は自作PCにおいて最も重要なパーツと認識しています。
電源は一般家庭に来ている交流100Vの電気を12Vや5Vなどの直流に変換するのが役目です。
最近ではあまりひどい電源は売られていませんが、「電気」と言う目に見えないものを供給するパーツであり、どれだけ安定した電源を供給できるかによってパソコン全体の動作の安定性に影響を及ぼします。
最近の最上級のPCパーツは常識外れの電源容量を要求するものもあり、あまり安物の電源は選択しない方がよいでしょう。
電源には230Vや115Vなどと書かれていることがありますが、これは外国の電圧です。
日本で販売されている電源はきちんと交流100Vに対応していますので安心してください。
電源の規格
パソコン用の電源には主にATX電源とSFX電源、SFX-L電源の三種類があります。
SFX電源とSFX-L電源に関しては小型PC向けの小さな電源になります。
ここではATX電源のみを解説します。
ATX電源のサイズ
ATX電源は幅(W)と高さ(H)は決まっていますが、長さ(L)には規定はありません。
幅(W)は150mm、高さ(H)86mmです。
長さ(L)は標準が140mmと言われており、140mm~200mmを超えるようなものまであります。
長さ(L)は短ければ短いほど組み立てがしやすくなりますが、当然ですが、熱がこもりやすくなり、ファンが高速で回転すると言うことになります。
また、ケースによってはあまり長さ(L)が長い製品は入りません。
しかし、140mmならすべてのATX電源対応ケースに無理なく収めることが出来ます。
Seasonicは古くから長さ(L)140mmサイズの電源を発売しており、現行モデルのFocus-GXは140mmで国内では850Wの容量まで販売されています。
※ PRIMEシリーズは170mmです。
静粛性にも定評があり、高効率で低発熱と言うSeasonicの技術力の高さを証明する製品になっています。
最近になって他のメーカーも長さ(L)140mmや130mmと言った小さいサイズの電源を販売していますが、これはSeasonicの製品哲学が正しかったと証明されたと言ってもよいでしょう。
電源の効率によるランク付け
電源負荷率 | アイコン | 10% | 20% | 50% | 100% |
80 Plus スタンダード (STANDARD) | 80% | 80% | 80% | ||
80 Plus ブロンズ (BRONZE) | 82% | 85% | 82% | ||
80 Plus シルバー (SILVER) | 85% | 88% | 85% | ||
80 Plus ゴールド (GOLD) | 87% | 90% | 87% | ||
80 Plus プラチナ (PLUTINUM) | 90% | 92% | 89% | ||
80 Plus チタン (TITANIUM) | 90% | 92% | 94% | 90% |
電源は容量がありますが、表記されている100%の容量が使えるわけではありません。
電源には変換効率があり、グレードによって違います。
当然変換効率の良い電源は高価です。
使用量が少なければ変換効率が良いわけではなく、概ね50%程度が一番変換効率が良いとされています。
上の表のように、80Plus STANDARDから始まって、最高が80Plus TITANIUMとなっています。
TITANIUMのみ使用量10%時の変換効率が決まっています。
なお、現在においては80Plus GOLD電源がそれなりの価格になりましたので、80Plus SILVERはほとんど見かけません。
80Plus STANDARDと80Plus BRONZEは安価な電源としてある程度流通しています。
今から電源を買うならば、80Plus GOLD以上のものをお勧めします。
どのようなメーカーの電源でも80Plus GOLD以上のものならば品質も比較的良好で安心できる上に価格も抑えめでお得感が高いからです。
電源の使用率100%時の最大使用量(W)
電源容量 (単位:W) | ||||||
300 | 240.0 | 246.0 | 255.0 | 261.0 | 267.0 | 270.0 |
450 | 360.0 | 369.0 | 382.5 | 391.5 | 400.5 | 405.0 |
500 | 400.0 | 410.0 | 425.0 | 435.0 | 445.0 | 450.0 |
550 | 440.0 | 451.0 | 467.5 | 478.5 | 489.5 | 495.0 |
600 | 480.0 | 492.0 | 510.0 | 522.0 | 534.0 | 540.0 |
650 | 520.0 | 533.0 | 552.5 | 565.5 | 578.5 | 585.0 |
700 | 560.0 | 574.0 | 595.0 | 609.0 | 623.0 | 630.0 |
750 | 600.0 | 615.0 | 637.5 | 652.5 | 667.5 | 675.0 |
800 | 640.0 | 656.0 | 680.0 | 696.0 | 712.0 | 720.0 |
850 | 680.0 | 697.0 | 722.5 | 739.5 | 756.5 | 765.0 |
1000 | 800.0 | 820.0 | 850.0 | 870.0 | 890.0 | 900.0 |
1200 | 960.0 | 984.0 | 1,020.0 | 1,044.0 | 1,068.0 | 1,080.0 |
1500 | 1,200.0 | 1,230.0 | 1,275.0 | 1,305.0 | 1,335.0 | 1,350.0 |
今まで説明してきた通り、電源を100%使っても数字通りの出力は得られません。
80Plusの各グレードで100%使った時にどのくらいの容量が使えるのかを一覧表にしましたので、参考にしてください。
表の見方を説明すると、例として1500Wで、80Plus TITANIUMの場合、最大でもPCパーツには1350Wまでしか供給できませんが、この場合でも電力自体は1500W消費します。10%少ないですが、この10%が変換ロスになります。ここは「電源のランク付け」の表の通りになります。
購入すべき電源の目安は使用量の倍が良い?
このようにずっと言われてきましたが、80Plus規格ができる前は電源はまさに百鬼夜行のような状態で、書いている容量の半分程度しか出力できない製品もあったため、このように言われてきました。
そこから徐々に品質が上がり、粗悪な製品はあまり見かけなくなりました。
現代の電源は品質がかなり上がりましたので、上の表「電源の使用率100%時の最大使用量(W)」の90~95%くらいは使用しても問題ありません。
ただし、CPUの電源使用量は定格でTDP表記の約1.5倍と言われていますので、その点だけ注意してください。
マザーボードによってはCPUの性能を最大に発揮するように上の1.5倍以上使うように初期設定されている場合があります。
また、OCする場合は、出来るだけ余裕を見た方がよいでしょう。
電源は何年使える?
電源はかなり長く使えます。
私が推奨しているSeasonicの電源は10年保証でも10年以上使えました。
別のメーカーの5年保証の電源でも10年は軽く使えました。
ただし、初期不良はありますので、その点は注意して初期不良に当たったら遠慮なく保証を使いましょう。
私の経験で言えば、寿命が尽きる前にATX20Pから24Pに変更になったりなど、内部の規格が変更になって使えなくなると言うことの方が多かったです。
長く使っていると、ヘタってきますので、特に不具合が無くても保証期間に準じて5-10年程度で交換したほうが無難です。
そのくらい使えば完全に元は取れているのであまりケチらないようにしてください。
プラグイン電源と直付け電源
電源には必要な分だけ付属のケーブルをつなげて使うプラグイン方式と、最初から電源に直接取り付けられていて、取り外し出来ない直付け電源があります。
直付け電源の方が安価ですが、余分なケーブルは外して使えるプラグイン方式の方が組み立てや配線がしやすいので、初心者の方はプラグイン方式を選びましょう。
当サイトの推奨電源は全てプラグイン方式(セミプラグイン方式を含む)です。
直付け電源(写真はThermaltakeのSmart 350W -STANDARD-)
プラグイン電源(写真はSeasonicのFocus GX 650)
メーカーで選ぶならSeasonicで決まり
どの電源を買ったらよいかよくわからないというならば、Seasonicを選んだ方が無難です。
Seasonicは台湾に本社がある業歴40年以上の老舗電源メーカーです。
日本ではOwltech社がSeasonicの代理店になっています。
様々な電源が売られていますが、日本で売られている電源で自社生産を行っているのはSeasonicのみです。
国内で販売されているほとんどの電源は別のメーカー(OEM元と言います)が生産しています。
※ Corsair、Thermaltake、玄人志向など。
高価に感じるかもしれませんが、電源周りのトラブルと言うのは非常にわかりにくいので、安心、安全を買いたいならば、自作PCの黎明期にはすでに高品質メーカーとしての地位を確立していたSeasonicをお勧めします。
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参考記事:電源にまつわる話
あまり触れられていない電源とコンセント・ブレーカーに関することが書いてありますので、参考にしてください。
推奨電源 450W-650W
電源容量650Wと言えば、ひと昔前までは上級と言ってもよいような容量でしたが、最近のCPUのマルチコア競争とGPUの電源大容量化によって中級程度のグレードになってしまいました。
450W
玄人志向 KRPW-BK450W/85+
Seasonicのモデルチェンジにより、低用量のモデルが無くなりましたので、玄人志向のKRPW-BK450W/85+を推奨します。
80Plus BRONZE認証でOEM元のメーカーはHECと言われています。
当サイトの推奨電源の中では唯一ATX24Pが直付けのセミプラグインタイプの電源となります。
550W
玄人志向 KRPW-GK550W/90+
80Plus GOLD認証でOEM元のメーカーはEnhanceと言われています。
650W
玄人志向 KRPW-GK650W/90+
こちらもOEM元のメーカーはEnhanceと言われています。
650Wで予算が無くてSeasonicが買えないという人はこちらを選んでもよいでしょう。
650W
Seasonicの新世代電源 FOCUS-GX-650です。
80Plus GOLD認証を誇る高品質電源
日本の代理店はOwltechで10年保証です。
安物の電源では安心できない人は必要容量が450~550Wだったとしてもこちらを選択しましょう。
推奨電源 750W~850W
このあたりから最上位のGPUと組み合わせて使う最上級電源となります。
750W
Seasonicの新世代電源 FOCUS-GX-750です。
80Plus GOLD認証を誇る高品質電源
日本の代理店はOwltechで10年保証です。
850W
Seasonicの新世代電源 FOCUS-GX-850です。
80Plus GOLD認証を誇る高品質電源
日本の代理店はOwltechで10年保証です。
850W
このあたりの容量になるともう少し品質にこだわった方がよいかもしれません。
Seasonicの新世代電源 FOCUS-PX-850です。
80Plus PLUTINUM認証を誇る高品質電源
日本の代理店はOwltechで10年保証です。
推奨電源 1000Wクラス
こちらはRyzen ThreadripperやIntelの Core-XなどのHEDT用の電源になります。
このあたりになってくると、何十万とするパーツをぶら下げることになりますので、出し惜しみはしないようにしましょう。
1000W
Seasonicの最上位電源、PRIMEシリーズのPRIME-PX-1000です。
80Plus PLUTINUM認証を誇る最上位クラスの電源です。
日本の代理店はOwltechでなんと12年保証です。
1200W
1200WからはSeasonicの電源がラインナップされていませんので、Corsairの製品を推奨します。
Corsairの電源のOEM元は大部分が台湾のCWT社です。
80Plus PLUTINUM認証を誇る最上位クラスの電源です。
保証期間7年
1300W
型番はAX1600iですが、100Vで使うと1300Wまでとなるようです。
Corsairの製品です。Corsairの電源のOEM元は大部分が台湾のCWT社です。
日本で販売されている事実上の最大容量電源だと思います。
80Plus TITANUM認証を誇る最上位クラスの電源です。
保証期間10年