前回、2022年12月のSteamハードウェア調査をもとにVRヘッドセットの状況を分析しました。
今回また半年がたちましたので、VR市場にどのような変化が起きたのかを紐解いてみましょう。
※ Steamハードウェア調査に関する注意
Steamハードウェア調査の対象は調査に同意したユーザーになります。
決してSteamの全ユーザーが対象であるわけではありません。
またその性質上、Steamのみのユーザーしか対象になっておらず、必ずしも実態を反映しているわけではありません。
調査は月ごとに行われていますが、標本数が月ごとに増加すると言った保証はありませんし、調査の総数も公開されていないようです。
以上のことから、一種の指標であり、絶対に正確というわけではないことに注意してください。
2023/6使用率 | 2022/12使用率 | 増減 | |
Oculus Quest 2 | 42.05% | 41.35% | 0.70% |
Valve Index HMD | 18.38% | 17.24% | 1.14% |
Oculus Rift S | 11.78% | 13.41% | -1.63% |
HTC Vive | 6.24% | 7.05% | -0.81% |
Windows Mixed Reality | 5.48% | 5.57% | -0.09% |
Oculus Rift | 5.43% | 6.03% | -0.60% |
Oculus Quest | 1.86% | 2.63% | -0.77% |
その他 | 8.33% | 6.72% | 1.61% |
Steamユーザー ヘッドセット 使用率 | 1.73% | 2.05% | -0.32% |
VR市場に起きた大きな変化
後で触れますが、今般VR市場には大きな変化が起きました。
全体的にPCVRの市場は低調で特に大きく使用率を伸ばしているヘッドセットはありません。
Quest2はQuest3が今秋に発売されるという報道を受けて買い控えが起きているのかかなり低調です。
Quest2は上がったり下がったりを繰り返しており、40%台をキープしています。
メジャーなメーカーのうち唯一大きく使用率を伸ばしたのはValve Indexで
1.14%と1%以上使用率を伸ばしているのはSteam公式の強みかなと思います。
Viveをはじめ、PCVRのクラッシックなモデルは徐々に使用率を減らしています。
サポート打ち切りが発表されたQeust1はかなり使用率を落としました。
Metaは製品のサポート打ち切りが早いですから、台数を売ったQuest2を同じように扱ったらユーザーに警戒されるかもしれませんね。
初代QuestやOculus GOはあっという間にサポートが打ち切られてしまいました。
Quest2ではもう少しサポートを長くしてほしいものです。
その他のヘッドセットが使用率を少し伸ばしています。
Quest2の価格が上がってVRヘッドセットの使用率は多少分散傾向にあると言ってよいでしょう。
メーカーごとの内訳
2023/6使用率 | 2022/12使用率 | 増減 | |
Meta(Oculus)合計 | 61.18% | 63.45% | -2.27% |
Oculus Quest 2 | 42.05% | 41.35% | 0.70% |
Oculus Rift S | 11.78% | 13.41% | -1.63% |
Oculus Rift | 5.43% | 6.03% | -0.60% |
Oculus Quest | 1.86% | 2.63% | -0.77% |
Oculus Rift DK2 | 0.04% | 0.02% | 0.02% |
Oculus Rift DK1 | 0.02% | 0.01% | 0.01% |
Valve合計 | 18.38% | 17.24% | 1.14% |
Valve Index HMD | 18.38% | 17.24% | 1.14% |
HTC合計 | 9.82% | 10.27% | -0.45% |
HTC Vive | 6.24% | 7.05% | -0.81% |
HTC Vive Pro | 1.55% | 1.51% | 0.04% |
HTC Vive Cosmos | 1.17% | 1.15% | 0.02% |
HTC Vive Pro2 | 0.86% | 0.56% | 0.30% |
WindowsMR合計 | 5.48% | 5.57% | -0.09% |
Windows Mixed Reality | 5.48% | 5.57% | -0.09% |
その他 | 5.14% | 3.47% | 1.67% |
総計 | 100.00% | 100.00% | 0.00% |
Meta社一強時代の終わりなのか?
私がこのレポートを始めてから、初めてMeta社の使用率が減りました。
ちょっと衝撃的な結果です。
減った使用率はValve Indexとその他が吸収した形になっています。
実は数字には出てきていませんが、Pico4が1.86%とジリジリとシェアを伸ばしています。
やはり価格が安いというのは大きなアピールポイントになるようです。
Metaは今秋にQuest3を発売しますが、74,800円とQuest2で見られたような戦略的な価格ではなくなります。
Quest2と価格差があるのでQuest2も併売していくのではないかと思います。
また、独自プラットフォームなので集計には入っていませんが、PSVR2が発売されています。
こちらは74,980円ですが、やはり売れゆきは低調のようです。
前回のVRハードウェア調査後におきた大きな変化
今まで少し触れてきましたが、ここで時系列順にみていきましょう。
PSVR2の発売
2023年2月22日、PSVR2が発売されました。
価格は74,980円です。
フォービエイテッドレンダリング、アイトラッキングなど、先進的な機能を搭載してこの価格は安いですが、絶対的な価格としては高いです。
初代PSVRが発売時価格49,800円だったことを考えるとかなり苦しいです。
初代PSVRは500万台を売り上げましたが、数々の進化を遂げ、ケーブル一本で本体と接続できるなど利便性も向上していますが、本体と併せると130,000万円近くになるのはもはや玩具とは言えない価格になっています。
現在までに60万台を売り上げているといわれています。
PSVR2は予定販売台数を下回っているわけではないと言われていますが、転売屋の餌食になっていた初代PSVRと比較すると人気という点ではやはり今一つと言わざるを得ません。
Meta Quest3発表
2023年6月Meta Qeust3が発表になりました。
Qualcomm Snapdragon XR2 Gen 2、パンケーキレンズ搭載で本体が薄くなるなど数々の先進的な機能を搭載していますが、やはり価格は高くなります。
日本では74,800円とほぼPSVR2と同じ価格になります。
Qeust2もMeta社のストア以外からソフトがプレイできるため、囲い込みが完全ではなく、ビジネスモデルが崩壊しましたが、Qeust3の価格を見ると、キッチリと囲い込みをして自社のストア以外からゲームをプレイできないようにしないとなかなか元は取れないようです。
PSVR2の売れ行きを見ると、74,800円ではQuest2のように売るのはなかなか難しいと思います。
Quest2値下げ
Quest3の発表に合わせてQuest2の値下げが発表されました。
これで128GB版が37,180円から59,400円なり、そこからまた更に47,300円になることになります。
Quest3とは価格差がかなりあるので、併売されるんじゃないかと思います。
AppleがVRヘッドセットを発表
Appleが「空間コンピューター」なるVision Proを発表。
3499ドル、日本円で約48万円と売る気の全くない価格です。
価格を聞いただけで「解散」と言いたくなるレベルです。
もっともこれはいわゆる「開発機」のようです
「開発機」と言うことは後から普及機も予定されているのだと思います。
48万円のヘッドセットを売って終わりと言うことは無いと思います。
私の興味は普及機がどのくらいの価格で売られるのかと言うところに尽きます。
日本円で50,000円以上なら、普及はしないでしょう。
Vision Pro自体来年の発売になるようで、普及機が準備されていたとしても発売は3年以上後になるのではないでしょうか。
総評:
VRは時代の仇花だったのか?
残念ですが、次世代のVRが多数、発売、発表されたにも関わらず、どれも7万円台と普及は難しい価格になってしまいました。
確かに性能が上がっているのは素晴らしいのですが、7万円以上の値札を付けてもPSVR2を見ると売れないことは明らかでしょう。
MetaがQuest2の値上げを決めたのはVR Chatを無料でプレイするユーザーがかなり多かったからだという話を聞いたことがあります。
この辺にキッチリと課金をする仕組みを作って、本体は逆ザヤで安く売って、ロイヤリティーや何らかのサブスクで元を取るというようなビジネスモデルを確立しない限りはVRがこれ以上普及することは難しいと思います。
Metaもメタバースと言う海のものとも山のものともつかない技術に投資するのではなく、きちんと収益化が可能なVRゲームの開発に注力すべきではないかと思います。
このまま進むとVRはのちの時代に「時代の仇花」だったと言われることになってしまうのではないでしょうか?