
■事実
米調査会社Circana(旧NPD)が発表した2026年7月の米国ゲーム市場データによると、新作パッケージソフトの売上高は8500万ドルにとどまり、同社が集計を開始した1995年以来の月間最低額を記録しました。
7月は大型新作の発売が比較的少ない月だったが、2026年1月も同様に歴代1月最低を記録しており、単月要因だけでは説明しきれない継続的な下落傾向が続いています。
ハードウェア売上は前年比29%減の2億8200万ドルにとどまり、2020年7月(コロナ禍の供給混乱期)以来最悪の水準です。
ハードウェアの販売台数は前年比39%減。一方で新型ゲーム機の平均販売価格は前年比16%上昇し542ドルに達しました。(RAM・部品価格高騰の影響)
2026年通年のパッケージソフト売上シェアはNintendoが63%、PlayStationが32%、Xboxが約4%です。
Circanaのアナリスト、Mat Piscatella氏によると、7月11日に終わる週でPS向けタイトルの物理版が1万本以上売れたのはわずか2作品のみ。年初来10万本以上売れたのも7作品にとどまります。
PS5は7月の据置機売上をドルベースで首位維持したが、ユニット販売数は前年比6%減でした。
米国のゲームコンテンツ支出全体も前年比9%減。主にモバイル支出の落ち込みが要因です。
表(2026年米国パッケージソフト売上シェア)
| プラットフォーム | シェア(2026年通年) |
|---|---|
| Nintendo | 63% |
| PlayStation | 32% |
| Xbox | 約4%(PC限定版含む) |
解説
そもそもこの話の前提には、ソニーが2026年7月1日に発表した「2028年1月以降、新作タイトルのパッケージ版生産を終了する」という方針転換がある。発表直後はファンから猛反発を受け、Change.orgの署名は18万件に迫り、小島秀夫氏も「恐ろしい」とコメントするなど、業界の反応は好意的とは言い難かった。
ソニー自身も決算会見でCFOのLin Tao氏が「現時点でビジネスへの悪影響は見えていない」と説明していた。今回のCircanaデータは、まさにその主張を裏付ける材料としてタイミングよく出てきた形になる。
今回の数字で象徴的なのは、PS向けタイトルで週間1万本以上売れたパッケージ版がわずか2作品しかなかったという点。年間10万本超えも7作品のみで、パッケージ版は既に「一部の熱心なファン層向けのニッチ商品」になりつつある。
ただし7月は大型新作が少ない月でもあり、Circana自身も単月の数字だけで断定はできないと留保をつけている。とはいえ1月も歴代最低を記録していることを踏まえると、季節要因では説明しきれない構造的な下落と見るのが妥当だ。
Nintendoが年間シェア63%を握る一方、PlayStationは32%、Xboxはわずか4%。任天堂のパッケージ需要が相対的に強いのは、Switchシリーズの携帯機的な性質に加え、中古市場・小売店との結びつきが今も強く残っているためと考えられる。
Xboxの4%という数字は特に象徴的。Game Passによるサブスクリプション戦略が長年かけてユーザーの購買行動をディスクからデジタルへ完全にシフトさせた結果とも読める。「ソニーがディスクをやめるなら、ここでXboxがパッケージ重視に舵を切れば差別化になる」という声も一部にあったが、この数字を見る限りその賭けは分が悪そうだ。
パッケージ販売の縮小は、GameStopのような実店舗チェーンの経営にも直結する。過去2会計年度で1300店舗以上を閉鎖したとされるGameStopにとって、この傾向はさらなる逆風になる。
パッケージ版が持つ「所有権」「貸し借り」「中古売却」という価値は、デジタル配信では原理的に再現できない。ソニーのCFOが「ユーザーには愛着があることを理解している」と述べつつも方針を撤回しない姿勢は、企業側の経済合理性とユーザー側の感情的価値のズレを象徴している。
正直なところ、「8500万ドル」という数字だけでソニーの判断が「正しかった」と結論づけるのは早計。ハードウェア価格の高騰(RAM危機による+16%)や7月の新作不足という一時的要因も重なっており、これは複合的な下落トレンドの一断面に過ぎない。
ディスクの是非を巡る議論は感情的な炎上を呼びやすいが、数字だけ見れば「もう議論の余地なし」と言わんばかりの落ち込み方をしている。ファンの声とマーケットの現実は、必ずしも同じ方向を向いていないらしい。