前回、2023年6月のSteamハードウェア調査をもとにVRヘッドセットの状況を分析しました。
今回また半年がたちましたので、VR市場にどのような変化が起きたのかを紐解いてみましょう。
※ Steamハードウェア調査に関する注意
Steamハードウェア調査の対象は調査に同意したユーザーになります。
決してSteamの全ユーザーが対象であるわけではありません。
またその性質上、Steamのみのユーザーしか対象になっておらず、必ずしも実態を反映しているわけではありません。
調査は月ごとに行われていますが、標本数が月ごとに増加すると言った保証はありませんし、調査の総数も公開されていないようです。
以上のことから、一種の指標であり、絶対に正確というわけではないことに注意してください。
2023/12使用率 | 2023/6使用率 | 増減 | |
Oculus Quest 2 | 37.87% | 42.05% | -4.18% |
Valve Index HMD | 18.17% | 18.38% | -0.21% |
Oculus Rift S | 9.84% | 11.78% | -1.94% |
Meta Quest3 | 9.27% | N/A | 9.27% |
HTC Vive | 5.40% | 6.24% | -0.84% |
Windows Mixed Reality | 5.04% | 5.48% | -0.44% |
Oculus Rift | 4.85% | 5.43% | -0.58% |
その他 | 9.56% | 10.64% | -1.08% |
Steamユーザー ヘッドセット 使用率 | 1.84% | 1.73% | 0.11% |
Quest3発売
2023/10にQeust3が発売されました。
VR市場をけん引するMetaの普及機の新型ということもあり、かなり大きく伸びました。
しかし、よくも悪くも初代・Quest2発売時のような大きな話題をさらうことはできなかったように思います。
それでも、クリスマスシーズンを挟んで10%弱の使用率は大きな成果だと思います。
Quest2は品薄状態がしばらく続き、入手が難しかったですが、Quest3は非常に購入しやすい状態でした。
74,800円という価格はやはりインパクトとして弱かったと言わざるを得ません。
メーカーごとの内訳
2023/12使用率 | 2023/6使用率 | 増減 | |
Meta(Oculus)合計 | 63.70% | 61.18% | 2.52% |
Meta Quest 3 | 9.27% | N/A | 9.27% |
Oculus Quest 2 | 37.87% | 42.05% | -4.18% |
Oculus Rift S | 9.84% | 11.78% | -1.94% |
Oculus Rift | 4.85% | 5.43% | -0.58% |
Oculus Quest | 1.37% | 1.86% | -0.49% |
Meta Quest Pro | 0.44% | N/A | 0.44% |
Oculus Rift DK2 | 0.04% | 0.04% | 0.00% |
Oculus Rift DK1 | 0.02% | 0.02% | 0.00% |
Valve合計 | 18.17% | 18.38% | -0.21% |
Valve Index HMD | 18.17% | 18.38% | -0.21% |
HTC合計 | 8.56% | 9.82% | -1.26% |
HTC Vive | 5.40% | 6.24% | -0.84% |
HTC Vive Pro | 1.22% | 1.55% | -0.33% |
HTC Vive Cosmos | 1.13% | 1.17% | -0.04% |
HTC Vive Pro2 | 0.81% | 0.86% | -0.05% |
WindowsMR合計 | 5.04% | 5.48% | -0.44% |
Windows Mixed Reality | 5.04% | 5.48% | -0.44% |
その他 | 5.41% | 5.14% | 0.27% |
総計 | 100.00% | 100.00% | 0.00% |
Quest3発売の影響
Quest3が発売され、Meta社のヘッドセットからの買い替えが進んだことが表から見て取れます。
また他社のヘッドセットも微妙に使用率を落としており、VR HMDの目玉であるQuest3への買い替えが進んでいることが想像できます。
毎回書いていますが、特にHTC Viveは使用率を毎回1%以上落としており、今回も1%近く落としています。
VR HMD全体が2016年発売の初期型製品が初代Riftと初代Vive合わせて10.25%と1割以上残っています。
また、新規参入が増えるような格安製品もしばらく登場していません。
新規参入者がいない世界は最後は先細って消えていくだけになりますから、やはり新規参入を促すような格安の新製品とVR市場全体が活気づくようなキラータイトルを期待したいところです。
前回はMeta社のシェアが一時的に落ちましたが、今回、Quest3の発売で一気にシェアが高くなったのは見事というほかはありません。
もはや横綱相撲といってもよいでしょう。
しかし、Steam使用率はあくまでもPCVRの使用率であり、PCを持ってないスタンドアローンで遊んでいるライト層の新規参入者はQuest3の価格を見ると激減したといってもよいと思います。
2024年にMetaはProject Venturaという低価格ヘッドセットを出す予定ということですので、それが発売されれはまたライト層にアピールできるかもしれません。
今のところはVRの新規参入者やライト層向けのアプローチを失っている状態でしょう。
前回からの主なニュース
Quest3発売
2023/10にQeust3が発売されました。
11月のハードウェア調査までは使用率が振るいませんでしたが、12月に一気に3.94%も使用率を伸ばして驚きました。
VRのクリスマス商戦の覇者はQuest3なのでしょう。
しかし、Quest3の売り上げ台数は2023年は予測700万台にたいして200-250万台と低調で、来年の売り上げも100万台程度と予測されています。
時代はAI/MLに大きく注目が集まっており、VR/MRはかなり苦しい状況に置かれているといってよいでしょう。
Metaは2023年上期にレイオフを行いましたが、10月にまたレイオフの計画が持ち上がっています。
VR/MRの苦境を表しているといえるでしょう。
WindowsMRが非推奨リスト入り
WindowsMRが非推奨リスト入りしました。
将来的に削除される機能としてリストアップされたということです。
マイクロソフトはVR/ARは法人向けの用途に力を入れており、ゲーム向けやホビー用途の自社製品にはもう投資しないということなのでしょう。
残念です。
Steamの使用率調査に5.04%ありますが、こちらも徐々にフェードアウトするのでしょう。
Quest3が発売される一方で、徐々にVRの世界が狭まっているような錯覚を覚える話です。
ByteDanceがVR事業再編
ByteDanceと聞いてもすぐにはどんな製品を出しているのか思いつかない方も多いと思いますが、TikTokを運営している企業で、Picoシリーズを出しています。
VR事業の継続は明言しているものの、数百人規模のリストラを行っており、どうなるのか予断を許さない状況でしょう。
Steamのハードウェア調査を見る限り、存在感を示せているとはいいがたい状況です。
Quest2が7700円の値下げ
11月にセールを行い以下の価格で販売していました。
・Meta Quest 2 128GB:定価47,300円→39,600円
・Meta Quest 2 256GB:定価53,900円→46,200円
2024年1月1日から上の価格がセールではない通常価格になるようです。
総評:
Quest3発売もQuest2発売時のインパクトは示せず
2023年10月にQuest3が発売されましたが、74,800円という価格からQeust2発売時のようなインパクトは示せなかったように感じます。
当面はQeust2を値下げして入門機とし、Project Venturaが正式に販売されれば、そちらが入門機として新規参入者やライトユーザーの受け皿になるのでしょう。
しかし、今年の頭に発売されるという噂でしたが、いまだに話が出てこないのは気になるところです。
CESで発表されるのでしょうか。
現在テック系のトレンドは完全にAI/MLに移ってしまいVR/AR関連はかなり影が薄くなってしまいました。
次回の調査までにどのような変化が訪れるのかを注目していきたいところです。