大ヒットしているNintendo Switchですが、そのCPUがどんなものなのかここにきているような方ならご存知のことと思います。
PCでゲームを楽しむときは性能が非常に重要で、一番気を付けなくてはならないところです。
ではNintendo Switchの性能はどのくらいなのでしょうか?PCを超えるのでしょうか?
過去の記事でも何度も説明していますが、Nintendo SwitchはnVidiaのTegra X1というSoCを使っているといわれています。
ここで、Nintendo Switchのスペックを確認してみましょう
Nintendo Switch | Apple ipad(第6世代) | Android タブレット MediaPad M5 SHT-W09 | |
SoC | Nvidia TegraX1カスタム | Apple A10 | HiSilicon Kirin 960 |
CPU | Cortex-A57X4 2.37GHz Cortex-A53X4 | HurricaneX2、Zephyr X2 2.33GHz | Coretex-A73X4 2.36GHz Coretex-A53X4 1.84GHz |
GPU | Maxwell 256CUDAコア | PowerVR GT7600、6コア | Mali-G71 MP8 |
メインメモリ | LPDDR4 4GB(25.6GB/s) | LPDDR4 2GB | LPDDR4-1800 4GB(29.8GB/s) |
ストレージ | 32GB | 32/128GB | 32GB |
ディスプレイ | 6’ 1280X720 | 9.7’ Retinta 2048x1536 | 8.4’ 2560x1600 |
ネットワーク機能 | 802.11 a/b/g/n/ac,BT4.1 | 802.11a/b/g/n/ac,BT4.2 | 802.11a/b/g/n/ac,BT4.2 |
コネクタ | USB-Type-CX1、ヘッドホン・マイク兼用端子X1、ROMカートリッジスロットX1 | LightningコネクタX1 | USB Type-CX1 |
バッテリー容量 | 4310mAh | 8827mAh | 5100mAh |
サイズ | 239 x 102 x 13.9 mm | 240×169.5×7.5mm | 212.6×124.8×7.3mm |
メモリカード | microSD | 無し | microSD |
重量 | 368g(joy-Con取付時) | 469g | 約320g |
価格(円・税込) | 30,686 | 33,980(32GB) | 33,060 |
発売時期 | 2017'3 | 2018’3 | 2018’5 |
備考 | ソフトの供給はROMカード、インターネット経由でのダウンロードもあり 付属のドックに接続するとFullHD出力でTV接続可能 | ソフトの供給はインターネット カメラ付属 | ソフトの供給はインターネット カメラ付属 |
よくほかの据え置き型ゲーム機と比較されていますが、あれは全く意味がないので、今回はiPadとAndroidタブレットと比較しました。
幾つか違う点がありますが、サイズから重量、スペックまでタブレットと非常によく似ているのがわかるのではないかと思います。
スイッチはゲーム機ですが、分類としては完全にタブレットというのがわかる結果なのではないかと思います。
また基本的に1年で世代交代されるライフサイクルの短いタブレットと違い、ゲーム機は5年1周期といわれていますので、2017年の発売になっており、ここが総合的な性能に影響を与えています。
比較対象に関しては同価格帯の製品を選んでいます。
性能に関しては後述します。
Switchの成功に見るNintendoの割り切り
任天堂社内でSwitchのスペックを決めるときは非常に紛糾したらしいです。
開発者からは「できる限り高スペックにしてほしい」という要望が上がったそうですが、タブレットというほかのゲーム機とは違ったデバイスのため、据え置き型のゲーム機と同等のスペックにはできません。
おそらくPCゲーマーの方なら、発売以前のスペックを見て、「任天堂は終わった」と思っていた方もいたのではないかと思います。
実は私もそう思っていました。
PCゲームもそうですが、PS4やXobx Oneなどのゲーム機をお持ちの方はおそらく、「性能」というのが基本的な物差しであると思います。
これは多分、PCの世界にかかわっている方ならば、どんなにリテラシーの高い方でもはまってしまう思考だと思います。
よって、発売前のSwitchを高く評価することはできなかったのではないでしょうか。
モノではなく、コトを売った任天堂
今回、今更のように発売から2年経ったSwitchを取り上げたのは、この図式がPCがスマホやタブレットにIT機器の主役を座を譲り渡した構図とよく似ていたからです。
それを少し考察してみたいと思います。
多くの据え置き型ゲーム機と違って、Switchの購入層は誰でしょうか?
マリオやポケモン、ゼルダで遊ぶのは主に小学校3年生くらいからの子供たちだと思います。
上の年齢層に関してはゲームファンならば社会人でも購入するので、ここでは考えません。
任天堂が積極的にSwitchを売りたいと考えている子供たちは
・経済力がない(保護者の経済力に依存)
・TVを所有していない
・ネット環境もあるかどうかわからない。自由にならない。
という非常に制限が大きい環境にあります。
そのため、比較的安価でTVに接続しなくても単独でフルスペックのゲームソフトをプレイできる環境というのは任天堂の長年の悲願だったと思います。
技術が進歩してようやく実現したということです。
それは古くからゲームボーイなどを発売してきたことからもうかがい知ることができるのではないかと思います。
それは即ち、「TVを持ってないのが普通の子供たちに自由にゲームをしてもらうために、スペック競争から降りた」ということを意味します。
PCの世界に住んで、スペック至上主義に陥っている我々には決して超えられない壁だと思います。
私はよく「パラダイム」という言葉を使いますが、パラダイムが違うというのはまさにこんな感じです。
性能という物差ししか持ってない人にとってはなぜSwitch売れたのかわからない、予想もできなかった、そういう感覚が強いのではないかと思います。
私がもしSwitchの開発にかかわっていたら、「スペックを捨てる」という決断は決してできなかったと思います。
社内でも根強く反対する人たちは大勢いたのではないかと思います。
Switchで一番すごいのは開発者という大半がスペック至上主義の人間の集団において、違ったパラダイムのゲーム機を発売すると決定した決断だったと思います。
もし社会人の方がこれを読んでいたら、多数派を占める反対派の人々を説得して社運を賭けたプロジェクトの稟議を通すということがどういうことなのか理解できると思います。
それがどんなに困難なことか想像に難くないでしょう。
自分がゲーム機を売りたい顧客は何を一番望んでいるのか?
どんな悩みを抱えているのか?
そこに徹底的にフォーカスして余計なものをそぎ落とした結果がSwitchの成功ではなかったかと思います。
こういったことがまさにモノではなく、コトを売るということです。
パソコンが出始めたころならいざ知らず、今のゲームファンは大人も子供も、ともすれば現実を超えるようなリアルで長大で壮大なゲームというものに慣れきっています。
慣れ切ったところに同じようなものをいくら見せてもすぐに飽きられてしまうだけであまり意味はありません。
スペック競争から降りるという決断をした瞬間、スペックは追求しないし、ブラウザのように文字を表示するのがメインではないので、解像度はHQ(1280X720)でよい
解像度が1280X720ならば、内蔵GPUでも普通に画面の美しいゲームが制作できる・・・
こんな風に今まで見えてこなかった景色がどんどん広がっていくことになります。
また、副産物もあるでしょう。
子供に買い与えたかつてのゲームファンであった親も、子供がゲームをするのを見て、一緒にゲームをするためにもう一台Switchが欲しくなる、据え置き機と違って普通の家庭で共有しているTVにつながないため兄弟がいれば一人一台というのが当たり前の感覚になる、そのため、今でセールスできなかった層にもアピールできたのではないかと思います。
PCやゲーム機の世界はすでにコモディティ化しており、既存の方法論をなぞるだけでは利益を出すのが難しくなっています。
最近のPCゲームの大型タイトルが次々に爆死しているのを見てもそれは理解できるのではないかと思います。
知っている方も多い思いますが、すでにGoogleはAndroidのタブレット事業からは撤退したのではないかと疑われており、Switch発売時点で成功したとはいいがたいタブレット型デバイスを発売するのは相当勇気がいる決断だったと思います。
ましてやPS5は今のミドルレンジクラスのゲーミングPCをはるかにしのぐスペックになるといわれていました。
これを踏まえた上でSwitchに採用されているTegraX1の性能を見てみましょう。
比較対象は上で挙げたタブレット製品です。
注意していただきたいのは、ベンチマークのスコアは(おそらくはandroid上の)TegraX1であってSwitchに搭載されているものとまったく同一ではないということです。
SwitchはOSも独自でしょうし、APIもゲーム機に最適化されているものでしょう。
この辺はnVidiaが協力している上に、Switch発売時点で、最新とはいいがたいスペックのSoCだったため、おそらくかなり最適化が進んでいるのではないかと思います。
また、AppleのみOSがiOSのため、オーバーヘッドがかなり小さいのではないかと思います。
AndrodiはUnityでゲームを作ると「シングルスレッドしか使わない」などと言われていますので、ゲームマシンとして比較した場合、ipad(iOS製品)はかなり強いのではないかと思います。
CPU性能ではKirin960に、GPU性能ではA10に遠く及びませんが、SoCが型落ちのTegraX1であることを考えると健闘している方だと思います。
もちろんSwitchはOS、APIなどのソフト環境が全く違いますので、あくまでも目安ということをお断りしておきます。
nVidia Game Worksで多数のゲーム開発を支援してきたnVidiaがかなり力を入れて支援したようですので、プラットフォームとしても優秀なのではないかと予想します。
そういう意味でも参考程度と言ってもよいのではないかと思います。
この決して最高性能とは言えないSoCを採用できたこと(そこに至るまでの決断ができたこと)が成功の最大の要因だと思います。
ITデバイスやゲーム機の世界ではすでに「スペックが売り上げを決める」という世界ではなくなってきているということです。
もちろん当サイトはゲーミングPCのサイトですので、物差しは性能です。
しかし、逆説的ですが、性能という物差しを使って「性能が重要ではなくなってきている」という結果は知ることはゲーム機の世界で何が起きてるのを理解するのに有効ではないかと思います。
ここが即ち、スマホがIT機器の主役になった理由の一つでしょう。
一言お断りさせていただきますが、PCゲームの世界は性能に特化したニッチですので、この法則は当てはまりません。
マスマーケティングの対象になるような世界ではないからです。
PS5や次期Xboxはさらにスペックを強化して恐竜的な進化を遂げようとしています。
Switchが見せた可能性と従来のスペックをさらに強化したこれらの据え置き機、どちらが正解とは現時点では言えませんが、PS5や次期Xboxが発売されれば審判は下ると思います。
一つだけはっきり言えることは、PS5と次期Xboxは競合するが、Switchはこれらとは競合しない世界に行ったということです。
PS5と次期Xbox、両方買う人はかなりの少数派でしょう、しかし、どちらかを持っていてもSwitchを欲しいと思うユーザーはそれなりの数いると思います。
最後にSwitch版とPC版、PS4、Xbox Oneすべてで発売されているSkyrimを比較してみましょう。
SkyrimのPC版、PS4番、Switch版の比較
PS3/PS4、Xbox360/Xbox ONE
PC
Nintendo Switch
Skyrimの概要
2011年11月11日発売
推奨スペック
オペレーティングシステム: Windows XP/Vista/7(32ビット・64ビット)
CPU: 2.0GHz デュアルコアCPUプロセッサー
メモリ: 2GB
ハードディスク: 6GB以上
GPU: DirectX 9.0cに対応しているVRAM 512MB以上のビデオカード
DirectXに対応しているサウンドカード
Skyrimは実に8年前のゲームなので、Skyrim SEではない初期版は動作スペックはかなり低くなっています。
性能的にはSwitchに移植するのにそれほど苦労はしなかったのではと思います。
当然、MOD山盛りで4K当たり前のPC版で最新スペックのPCでプレイした画面とは比較になりませんが、1280X720という画面も相まって、それほど貧弱には見えません。
Switchが見せたような可能性が、これからのPCゲームの世界にも大きな影響を与えるものと思います。
今回の記事を執筆するにあたって参考にさせていただいたサイト様
IT Media News - Nintendo SwitchはNVIDIAのカスタマイズTegra搭載 任天堂とゲームAPI「NVN」も共同開発
PC Watch - NVIDIA、次期モバイルSoC「Tegra X1」のベンチマーク結果を公開
他多数
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