
■事実
市場調査会社Mercury Researchが2026年第2四半期のx86 CPU市場レポートを発表しました。
x86・Arm合計のCPU出荷台数は前四半期比10%超増加、通常の季節性を上回る伸びています。
一方でデスクトップ向けx86 CPU出荷は前年同期比20%超の大幅減少しました。
Mercury Researchは、PC価格の上昇・GPU供給の逼迫・通常の季節要因をデスクトップ不振の要因として指摘しています。
2025年中にエンスージアスト層が購入を前倒ししたことも、2026年のハイエンド需要減少の一因とされています。
AMDのデスクトップCPUシェアは34.9%(前四半期33.2%、前年同期32.2%から上昇)、Intelは65.1%です。(前四半期66.8%、前年同期67.8%から低下)
AMDのクライアント市場(デスクトップ+モバイル、IoT除く)シェアは初めて30%を突破し30.3%です。(前四半期29.6%、前年同期23.9%)
x86全体(IoT/SoC込み)でもAMDは過去最高の34.1%でした。(前四半期32.6%、前年同期比+4.7pt)、Intelは65.9%(前四半期67.4%、前年同期70.6%)
サーバー分野でもAMDのシェアは34.5%まで上昇し、EPYCがXeonに迫る勢いです。
AMDの2026年Q2決算では、クライアント部門売上高が31億ドル(前年同期比+23%)、出荷台数は同+34%の一方、平均販売価格(ASP)は同▲6%でする
AMD側は、ASP下落の要因として製品構成の変化(デスクトップRyzenの販売比率低下含む)を挙げていまする
Intel側のノートPC+デスクトップ合算のクライアント売上高は77億ドルで前年同期比+11億ドル増です。
AMDのRyzen Proは前年同期比50%超の成長、法人向け顧客獲得が寄与しています。(CEOリサ・スー氏コメント)
ゲーム機向けなど半カスタムSoC事業の縮小も、AMD全体の出荷台数を押し下げる一因となっています。
背景要因として、Samsung・SK hynix・MicronがDRAM生産能力をAI向けHBMへ再配分していることが指摘されています。(HBM1ビット生産にDDR5の約3倍のウエハ容量を要するとの試算)
2026年のDRAM供給量の伸びは前年比16%程度にとどまる見通し(IDC)で、この容量再配分は「一時的な需給ギャップ」ではなく構造的とされています。
比較表(Mercury Research調べ、単位:%)
| 区分 | AMD 2026年Q2 | AMD 2026年Q1 | AMD 2025年Q2 | Intel 2026年Q2 |
|---|---|---|---|---|
| デスクトップ | 34.9 | 33.2 | 32.2 | 65.1 |
| クライアント(デスクトップ+モバイル、IoT除く) | 30.3 | 29.6 | 23.9 | 69.7 |
| x86全体(IoT/SoC込み) | 34.1 | 32.6 | ※前年比+4.7pt | 65.9 |
| モバイル | 28.9(前四半期比+0.6pt) | - | - | - |
| サーバー | 34.5 | - | - | - |
解説
そもそも「デスクトップだけ20%減、AMDは絶好調」という一見矛盾した見出しの構造を最初に解きほぐす必要があります。
需要側の主犯はメモリ危機。HBM優先の生産能力再配分でDDR4/DDR5が品薄・値上がりし、PC本体価格そのものが押し上げられています。
自作erという当事者から見ると、これは「CPUが欲しくない」のではなく「PC一式の総額が跳ね上がって買えない」という話であり、CPU単体の魅力とは無関係な需要蒸発しています。
2025年に前倒し購入した層が2026年に息切れしている、という需要の「前借り」構造も見逃せない。メモリ高騰を見越して駆け込み需要が起きていた可能性があります。
AMD・Intelという製造側の当事者で見ると、両社とも同じメモリ高騰という逆風を受けているのに、Intelの方が下げ幅が大きい非対称な結果になっています。
Intel側は今回、供給制約がかなり改善したとされる中でもシェアを落としており、「供給さえ戻れば取り返せる」という言い訳が使いにくくなってきています。
AMD側の内訳を見ると、出荷台数は前年比34%増なのにASPは6%減。これは「売れているが安いモデル中心」というミックスシフトであり、単純な「絶好調」と呼んでいいのか慎重に見る必要があります。
デスクトップRyzenの販売比率低下という開示は、AMDにとっても高付加価値帯の自作需要が痩せていることを示す数字であり、AMD自身もメモリ危機の影響から無傷ではありません。
サーバー・ノートPC・デスクトップという3セグメントの明暗が分かれた点も重要。企業向け予算やAI関連投資で吸収できるサーバー・法人ノートと、個人の可処分所得に直結するデスクトップ自作の耐性の差が数字に出ています。
ゲーム機向け半カスタムSoCの縮小も同時に起きており、「AIの恩恵を受けにくい民生・エンタメ向けシリコン全般」が構造的に割を食っている構図が透けて見えます。
「メモリが高くて自作PCが組めない」というのは冗談みたいな話だが、2026年は本当にそれが統計データとして出てきてしまった年です。
AMDの出荷絶好調ぶりを手放しで喜べないのは、中身が「安いモデルが売れているだけ」かもしれないという点。勝っているのに手放しで喜べない珍しいケースです。
「CPU戦争」の勝敗を語る記事だが、実際に自作erの財布を締め上げているのはCPUメーカーではなくメモリメーカーだったりします。