
■事実
Intelの次世代デスクトップ向けCPU「Nova Lake」(Core Ultra 400シリーズ、開発コード名)について、キャッシュ構成に関する新たなリーク情報が8月12日(現地時間)に浮上しました。
リーク元は著名なIntelリーカー@jaykihn0(X/Twitter)。快科技(8月13日)を含む複数の海外メディアが同リークを報じています。
従来の観測では、Eコア(効率コア)クラスタを一部無効化したモデルはL3キャッシュも比例して削減されるとされていました。
例:8P+12E+4LPE構成(Pコア8+Eコア12+低電力Eコア4)は、フル構成の8P+16E+4LPE(36MB)からEコアが16→12に削減されるため、L3キャッシュも33MBに縮小すると予想されていました。
今回の修正リークでは、この8P+12E+4LPE構成のL3キャッシュは33MBではなく36MBを維持し、フル構成と同じ容量になるとされていました。
同様に4P+4E+4LPE構成も、当初予想の15MBではなく18MBを維持し、フル構成の4P+8E+4LPE(18MB)と同容量になるということです。
リーカーは当初「単一のEコアクラスタを無効化したモデルは、無効化前の構成のL3キャッシュ容量をそのまま維持する」という一般法則を提示しました。
ただしこの法則には例外があり、6P+12E+4LPE構成は当初の投稿で「30MBを維持」とされたが、その後の訂正投稿で「27MBのまま」と修正されました。(フル構成の6P+16E+4LPEに対しEコアクラスタが2つ無効化されているため)
リーカーは、この構成変更がNova Lake-HX(モバイル/ハイパフォーマンス版)にも適用されるとコメントしています。
Intel自身はNova Lakeの仕様について現時点で公式発表・技術文書を出しておらず、今回の情報も未確認のリークの域を出ません。
Nova Lakeは2026年後半(Q4想定)の発売が見込まれており、新ソケットLGA1954を採用します。
表(構成別L3キャッシュ容量比較)
| コア構成(P+E+LPE) | フル構成のL3 | 旧リーク(削減想定) | 新リーク(今回) |
|---|---|---|---|
| 8+16+4(フル) | 36MB | - | 36MB(変更なし) |
| 8+12+4(Eコア削減) | - | 33MB | 36MB(上方修正) |
| 6+12+4(Eコア削減・訂正あり) | 30MB相当 | 30MB→27MBに訂正 | 27MB(確定) |
| 4+8+4(フル) | 18MB | - | 18MB(変更なし) |
| 4+4+4(Eコア削減) | - | 15MB | 18MB(上方修正) |
※このL3キャッシュ数値は、Intelが別途検討しているとされる大容量キャッシュ技術「bLLC(big Last Level Cache、最大288MB)」とは別枠の、ダイ本来のネイティブL3キャッシュを指す。bLLCは一部の上位アンロック(K系統)モデル限定という観測が強く、本リークの対象である通常構成のL3とは区別が必要。
ソース:
- Jaykihn氏 X投稿: https://x.com/jaykihn0/status/2087464143309930834(訂正投稿: https://x.com/jaykihn0/status/2087480722688983415)
解説
そもそもの背景:AMDが3D V-Cacheで「ゲーミング性能はコア数よりキャッシュ容量」という流れを作ったのに対し、Intelは長らく有効な対抗策を持てずにいた。
Intelは技術的に大容量キャッシュを実装できなかったわけではない。Randhir Hallock氏は2026年4月、AMD流の大容量キャッシュ戦略を「brute force hammer(力任せの一撃)」と評し、Thread Director・APO・BOTといった自社独自のソフトウェア最適化で対抗する方針を明言していた。
このAPOなどのソフトウェア路線は、他社には提供できない「Intel専用の付加価値」を作ることで差別化したいという狙いがあったのだろう。しかし結果として、Intelはその後の大赤字を受けて事業全体の見直しを迫られ、こうしたソフトウェア最適化路線を維持しきれなかった。
実際、Intelは2024年に約19億ドルの年間赤字(1986年以来初)を計上し、2024年8月に1.5万人、2025年4月にはさらに2万人規模のレイオフを断行。2025年の再建計画では「コア事業へのリソース再配分」「優先度の低いプログラムへの投資削減」が公式方針として明記されている。
APOやBOTが名指しで縮小対象になったという公式発表はないが、対応タイトルの少なさや目立った後継展開の乏しさを見る限り、「地道な効果は出るがコストに見合わない周辺プロジェクト」として優先順位を下げられた可能性は高い。
結果論で言えば、くだらないプライドは早々に捨てて、AI方向への転換とSYCLの普及に全リソースを投じるべきだった、というのが率直な感想。NVIDIAのCUDAエコシステムがここまで強固になった今、後追いでの巻き返しは年々難しくなっている。ソフト最適化やアダマンタインのような差別化技術に割いていたリソースを、もっと早い段階でAIエコシステム構築に振り向けていれば、今のような後手対応にはならなかったのではないか。
もう一つの伏線として、Copilot+ PC規格の制定(2024年5月)ではQualcomm Snapdragon X Eliteが先行し、x86勢(Intel Lunar Lake・AMD Ryzen AI 300)の対応は数ヶ月遅れとなった。ARM優遇という「屈辱」を味わったタイミングと、大容量アダマンタインキャッシュ計画(Arrow Lake Halo向け)がキャンセルされた時期は重なっている。
ただしこれは状況証拠に基づく推測であり、「NPUのためにキャッシュ計画を犠牲にした」という直接の因果関係をIntelが公式に語ったことはない。リーク元が挙げるキャンセル理由は「3Dスタッキングの複雑さ」であり、限られた開発リソースの中でNPU優先の判断が働いた可能性は否定できないものの、確定した事実として書くことはできない。
今回リークされたNova Lakeでの「Eコアを削ってもL3は削らない」という方針転換は、こうした紆余曲折とプライドの空回りを経た末に、Intelがようやく“地味だが着実な”キャッシュ増量路線に軌道修正した結果とも読める。
GPU業界ではAMDがRDNA2のInfinity Cacheで「大容量キャッシュがあれば、メモリ帯域が多少劣っても実効性能への影響は小さくなる」ことを証明した。CPU・GPU問わず業界全体が「足りない帯域をキャッシュで補う」流れにある中、Intelだけがソフトウェアでの独自路線に固執し、その間に赤字転落という現実に足元をすくわれた格好になる。
「力任せの一撃はダサい」と言い放った数年後、大赤字で足元をすくわれて結局キャッシュを積み増す方向に戻ってくる——プライドを貫き通せなかった典型例と言えそうだ。
ソフトウェアでの差別化そのものは間違った発想ではなかったはずだが、それを貫き通すだけの体力がIntelに残っていなかった、というのが今回の顛末の本質かもしれない。