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AMDの新メモリ機能「EXPO ULL」、非X3D CPUで最大15%のフレームレート向上

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DDR5メモリモジュールを装着したゲーミングPCマザーボードのクローズアップ写真。青と赤のRGBライティングが効いた、クリーンな自作PCの雰囲気

 

■事実

AMDが2026年6月のCOMPUTEXで、新しい低遅延メモリプロファイル規格「EXPO ULL(Ultra Low Latency)」を発表しました。

EXPO ULLは既存のEXPO規格を拡張する「EXPO 1.2」アップデートの一部として提供されています。

対応プラットフォームはAM5、対象CPUはRyzen 7000/8000G/9000シリーズです。

AMD公式発表では、非X3D CPU(Ryzen 7 9700X使用)において、無OCのJEDEC標準メモリ比で平均フレームレートが最大13%、1%Low(低下時の最低フレームレート)が最大15%向上すると主張しています。

同じくAMD公式発表では、既存の標準EXPOメモリプロファイル比較では、平均フレームレート向上幅は約4%にとどまるとしています。

EXPO ULLは動作周波数を上げるのではなく、セカンダリ・ターシャリタイミングをより厳しく詰めることでメモリレイテンシを5〜7ns短縮する技術です。

G.Skill、Kingston FURY、KLEVV、Lexar、TeamGroup、V-Color、XPG(ADATA)、Origin Codeなどのメモリベンダーが対応キットを2026年6月以降順次投入します。

独立検証を行ったPC Games Hardware(ドイツ)は、DDR5-6000のEXPO ULL認証キット(CL30/CL36)を30本以上のゲームで検証し、標準EXPOキット比で平均9〜10%のフレームレート向上を確認しています。

一方、HardwareLuxxの検証ではタイトルによる差が大きく、F1 25やCyberpunk 2077では4%前後の向上に留まり、Baldur's Gate 3やCounter-Strike 2などでは2%未満とほぼ変化がなかった

Tom's Hardwareの検証でも同様に、タイトルごとの向上幅は3.7〜4.2%程度とばらつきがありました。

メモリベンダーのG.Skillは公式に、EXPO ULLは主に非X3D系Ryzenプロセッサ向けの技術であると説明しています。

理由は、3D V-Cacheを搭載したX3Dプロセッサは大容量L3キャッシュによりメモリへのアクセス頻度自体が少なく、レイテンシや帯域への感度が相対的に低いためです。

初期に登場したEXPO ULL認証キット(G.Skill Trident Z5 NeoX、DDR5-6000)の実売価格はドイツで約589〜708ユーロ、米国では一部モデルが1,099ドルに達した例も報告されています。

動作にはマザーボード側のファームウェア対応(AGESA 1.3.0.1b以降)が必要です。

背景として、2026年に入りAIデータセンター向けHBM需要の急増でDRAM生産能力が圧迫され、コンシューマー向けDDR5価格がQ1だけで50〜110%超上昇するなど、メモリ市場全体が記録的な高騰局面にあります。

比較表

※比較対象(JEDEC標準/標準EXPO)が媒体ごとに異なる点に注意

検証元比較対象使用CPU平均フレームレート向上1%Low向上
AMD公式JEDEC標準(無OC)Ryzen 7 9700X約13%約15%
AMD公式標準EXPO(OC済み)Ryzen 7 9700X約4%約4%
PC Games Hardware(独自検証)標準EXPO CL30Ryzen 7 9700X約9〜10%
HardwareLuxx(独自検証)標準EXPO CL30Ryzen 7 9700Xタイトル差大(2%未満〜4.5%)約3.8〜5.5%(一部タイトル)
Tom's Hardware(独自検証)標準EXPO CL26Ryzen(非X3D)約3.7〜4.2%(タイトルによる)

 

解説

「Ultra Low Latency」という名前だけ聞くと大きな技術革新のように思えるが、実態は「タイミングをきつく詰めた高品質認証済みキット」というだけの話だ。

公式が謳う「13%/15%向上」はあくまで無OC状態のJEDEC標準メモリとの比較であり、すでにEXPOでオーバークロックしている既存ユーザーにとっての伸びしろは、公式発表ベースでもわずか4%程度だ。

独立検証でも9〜10%程度の伸びを確認したメディアがある一方、タイトルによってはほぼ誤差レベルという結果もあり、「劇的に速くなる」というより「気持ち快適になる」程度の改善というのが実情だ。

X3Dプロセッサで恩恵がほとんど出ないのは、Ryzenの大容量L3キャッシュがメモリへのアクセス回数自体を減らしているため。GPUのInfinity Cacheに近い発想がCPU側でも起きているとも言える。

ただしこれをGPUのL2/Infinity Cacheの話とそのまま同一視するのは早計。X3DのL3キャッシュはゲームのワーキングセットを丸ごと抱え込めるほど大きいわけではなく、あくまで「メモリアクセス頻度を減らす」効果にとどまる点は区別しておきたい。

AMDは「実質無料の技術」と謳っているが、実際の初期実売価格は数百ユーロ〜1,000ドル超と、通常のEXPOキットからさらに上乗せされているケースが目立つ。

これは技術そのものの問題というより、AI向けHBM需要がDRAM生産能力を奪い、コンシューマー向けDDR5全体が値上がりし続けている構造的な背景の影響が大きい。EXPO ULLの「プレミアム」がどこまで技術由来で、どこまで市場環境由来なのか切り分けにくい状況だ・

非X3D CPUユーザーにとっては「BIOSで手動チューニングする手間なしに、認証済みの詰めたタイミングが手に入る」という利便性の意味はある。

ただし、すでに自力でメモリタイミングを追い込んでいる自作erにとって、この価格差を払ってまで買い替える価値があるかは微妙なところだ。

「Ultra Low Latency」という大仰な名前の割に、実際の体感は「気のせいかもしれないけど、ちょっとキビキビしてる気がする」レベル。ネーミングが期待値を煽りすぎている感は否めない。

次世代のCUDIMM世代でようやく本領発揮という声もあり、今回のEXPO ULLは「本番前の肩慣らし」くらいの位置づけで見ておくのが妥当かもしれない。

 

 

 

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