
■事実
快科技(GPU)の報道によると、NVIDIAのジェンスン・ファンCEOがモルガン・スタンレー主催の非公開投資家ロードショーに出席しています。
同ロードショーで、次世代GPUアーキテクチャ「Rubin Ultra」の出荷が2028年へ延期されるという市場の噂を直接否定しました。
Rubin Ultraは従来計画通り2027年内に市場投入される見通しであると説明しています。
この延期の噂は半導体業界専門メディアSemiAnalysisの報道が発端で、Rubin Ultra向けラック「Kyber」が2028年にずれ込むという内容でした。
NVIDIAは今回のロードショーで「チップロードマップは維持されている」との立場を公式にも表明しています。
NVIDIAの四半期売上高は近く1000億ドル規模に達する見通しです。(2026年度通期の売上高は2159億ドル、純利益は1200億ドル、直近の四半期ガイダンスは910億ドル)
NVIDIAはCPU事業「Vera」について、今会計年度(2027年度、2027年1月期)中に単体CPU売上高が約200億ドルに達するとの見通しを示しています。
前年度のCPU売上高がほぼゼロだった状態から1年での急拡大となります。
VeraはMediaTekと共同設計したArmベースのCPUで、オーケストレーション・ツール呼び出し・長期コンテキスト管理など「AIエージェント」向けワークロードに最適化されています。
Veraは新型GPU「Rubin」とセットになった「Vera Rubinプラットフォーム」の一部として提供されるほか、CPU単体のサーバー製品としても販売されています。
NVIDIA CFOのコレット・クレス氏は、Vera単体とVera Rubin/Grace Blackwellを合わせたCPU関連売上高が、今年度合計で200億ドル規模になるとの見通しを説明です。
NVIDIAはVera CPUにより、従来手つかずだった2000億ドル規模のCPU市場に新規参入するとしています。
アナリスト試算では、Vera CPU1基あたりの単価は構成により約5000ドル~2万数千ドルとされ、200億ドル規模の売上には年間400万基前後の出荷が必要と見積もられています。
現行のGrace CPUは既にNVIDIAのGPUサーバー(NVL72など)に組み込まれる形で採用が進行中です。
IDC調査によると、Armベースのサーバーは2026年第1四半期時点でサーバー売上高の45%超を占めたとされています。
x86サーバー市場では、AMDがEPYC「Venice」でシェアを伸ばし、2026年に入りサーバー市場シェアが40%台(一部報道では46.2%)に達したとされています。
Intelのサーバー市場シェアはAMDの追い上げにより67%程度まで低下したとの報道があります。
モルガン・スタンレーのアナリスト、ジョセフ・ムーア氏はロードショー後のレポートでNVIDIA株の「オーバーウェイト」判定を継続し、目標株価288ドルを設定しています。
ムーア氏は、NVIDIAが直面する主な課題はAI需要の有無ではなく、メモリ・ネットワーク・電力・データセンター用地といった制約の中で受注残を実際の売上高へどう転換するかだと指摘しています。
データセンター向け主要CPU比較(2026年時点の報道ベース)
| ベンダー | 主要製品 | アーキテクチャ | コア数目安 | 2026年のサーバー市場動向 |
|---|---|---|---|---|
| NVIDIA | Vera(Grace後継) | Arm (MediaTekと共同設計) | 非公開 (Olympusコア×88基との報道あり) | Rubin GPUとセット販売が中心、 単体CPU売上高は今年度200億ドル規模を見込む |
| AMD | EPYC「Venice」 | x86 | 最大256コア/512スレッド | サーバー市場シェア40%台に上昇、 2nmサーバーCPUを他社に先駆け出荷 |
| Intel | Xeon 6+ | x86 | 最大288コア | サーバー市場シェアはAMDの追い上げで 67%程度まで低下との報道 |
※各数値は報道時点のものであり、四半期ごとに変動する点に注意。
■解説
要するに、NVIDIAは「GPU一本足打法」から「CPUでも稼ぐ会社」への転換を本気で進めているってことだろう。
前年度ほぼゼロだった事業が1年で200億ドル規模になるという数字は、正直かなり異様なペースだ。
ただしこれはあくまで「見通し」であって確定した実績ではない点は割り引いて見る必要がある。
VeraがArmベースである点も見逃せないポイント。NVIDIAはx86ではなくArmで殴り込みをかけている構図だ。
IntelとAMDにとっての本当の脅威は、NVIDIAが「GPUを買うならCPUも一緒に」という抱き合わせに近い形でCPU市場を切り崩せる立場にいることだ。
サーバーを買う側からすれば、GPUとCPUを同じベンダーから一括調達できたほうが管理も楽で、これがNVIDIAにとって強力な参入障壁になっている。
一方でIntelやAMDも指をくわえて見ているわけではなく、AMDはEPYCでサーバーシェアを着実に伸ばしている。
Rubin Ultra延期の噂を火消ししたタイミングも興味深いところ。CPU事業の勢いをアピールする裏で、GPUロードマップへの不安も同時に払拭したい思惑が透けて見える。
「CPUはオマケ」のはずが、気づけばそのオマケの売上高が中堅半導体メーカー1社分に匹敵するというのはちょっとした冗談みたいな話だ。
個人的には、200億ドルという数字そのものより「NVIDIAがCPU市場に本気で参入したという既成事実」の方が業界に与えるインパクトは大きいと見ています。
GPUの巨人が牙を研いでいるのはGPU市場だけじゃない、というのが今回の一番の教訓かもしれない。