
■事実
RTX 3060 12GBの再登場
Colorful(彩虹)製「Battle-Ax GeForce RTX 3060 DUO 12GB V2」が中国本土の流通に入荷、販売開始です。
卸売価格は2,199人民元(約325ドル/約4.8万円)。Colorful公式ストアでは2,349人民元(約347ドル)の表示です。
初回の地域別割当は数十台規模と少なく供給は逼迫しているが、毎週の定期補充を予定しており一過性の在庫放出ではありません。
新規製造は旧在庫の放出ではなく、Samsung 8nmプロセスでAmpereチップを新たに製造したものとされています。
AICパートナーはASUS、MSI、Colorful、GALAXなどが参加。PCB設計を新規起こすか旧設計を流用するかは未確認です。
RTX 3060 12GBのスペック(再掲)
- 2021年2月発売。GPUはAmpereアーキテクチャ(GA106)、3,584 CUDAコア
- VRAM:12GB GDDR6、192ビットメモリバス
レイトレーシング・DLSS対応(ただしDLSSフレーム生成には非対応)です。
発売当初のMSRPは329ドルと、今回の卸売価格とほぼ同水準です。
製造再開の背景
Samsung側の視点では、8nmプロセスノードの稼働率向上と収益改善につながる。同ノードはNintendo Switch 2向けのカスタムGPUも製造しています。
NVIDIAにとっては、TSMC 4N/5nmプロセスとGDDR7メモリの余力をBlackwell世代の上位GPU・データセンター製品に振り向けるための戦略的な措置です。
米国の対中輸出規制でH100/H20系AIアクセラレータの中国向け販売が制限されるなか、輸出制限の対象外となる旧世代GPUの需要が中国で生じているという背景もありまする
現在のGPU市場との価格比較
RTX 5060 8GBの発売時MSRP:299ドル。ただしGDDR7メモリ不足と価格高騰により、現在の実勢価格は350ドル前後まで上昇しています。
RTX 5000シリーズはRTX 5070 Ti・RTX 5080の供給が特に逼迫しており、RTX 5060・RTX 5060 Ti(8GB)はMSRP近辺で入手できる状況です。
Intel Arc B580は12GB VRAMを搭載し、より低価格帯で流通中です。
補足:主要GPU比較表(2026年6月時点・中国市場)
| 製品 | アーキテクチャ | VRAM | バス幅 | CUDAコア | 実勢価格 |
|---|---|---|---|---|---|
| RTX 3060 12GB(再販) | Ampere(Samsung 8nm) | 12GB GDDR6 | 192bit | 3,584 | ~$325(¥47,000前後) |
| RTX 5060 8GB | Blackwell(TSMC 4N) | 8GB GDDR7 | 128bit | 3,840 | ~$350(市場価格) |
| Intel Arc B580 | Battlemage | 12GB GDDR6 | 192bit | — | $249前後 |
解説
「5年前のGPUが新品で帰ってくる」という異常事態
GDDR7メモリを巡る争奪戦でAIアクセラレータが優先される結果、ゲーマー向けGPUは製造コストが上がり、供給も絞られる構造になっている——RTX 3060の返り咲きはこの歪みの産物だ。
Samsung 8nmを使う理由は明快:TSMCの先端ノードを空けたいから。NVIDIAにとってRTX 3060は「費用をかけずに市場の穴を塞げる駒」だ。
RTX 5050 9GBの開発が棚上げされたことと合わせると、エントリー帯を旧世代で埋めるという方針が見えてくる。
価格は正直「微妙」
325ドルはRTX 5060 8GBの実勢価格350ドルより安いが、差はわずか25ドルだ。
RTX 5060はパフォーマンス面では概ねRTX 3070相当であり、純粋なフレームレートではRTX 3060を大きく上回る。8GBのVRAM制限が問題になるのは1440p高設定などの特定シナリオだ。
VRAMが12GBある点は確かにアドバンテージだが、NVIDIAの「帯域の問題は小さくなったが、容量の問題は依然残る」という構図と同じ——速いが少ないか、遅いが多いかを選ぶことになる。
元々「理想的な再登場価格は200ドル前後」と言われていた。325ドルはその期待を大きく裏切っている。
5年前のGPUが「新品」で出てきて発売当時とほぼ同じ値段というのは、インフレのお手本のような話だが、それをNVIDIA自身がやっているのが興味深い。
VRAMの話をもう少し掘り下げると
RTX 3060 12GBはGDDR6・192ビットバスで帯域は約360GB/s。RTX 5060 8GBはGDDR7でより高帯域——VRAMが多くても帯域差がある。
生成AIのローカル推論用途(LLMのモデルウェイト全体をVRAMに展開する用途)では12GBの意味は出てくる。ゲームとは文脈が違う。
「古くても12GB」を選ぶか「新しいが8GB」を選ぶか——これを消費者に迫る状況を作り出したのはNVIDIA自身だということは忘れずに。
データセンター向けA100(Ampere):はFP64ネイティブ演算対応、しかも全CUDAコアの1/2レートでFP64が動く設計。HPC・科学計算向けに本格的に使えるスペックだ。
一方Ada Lovelace(L40S):はFP64演算自体はできるが、レートが1/64まで大幅に削減されている。事実上「できないも同然」の性能。
そのためHPC用途で需要が強く、中古市場でもなかなか価格が落ちない。
今回のRTX3060 12GBの復活も理由は全く違うがそれを彷彿とさせる。しかも、価格が落ちてないのも同じ。
全方位でNVIDIA強し・・・としか言いようのない状況だ。