
■事実
AMDのFSR(FidelityFX Super Resolution)バージョン4は、現行のRDNA4アーキテクチャ搭載GPU、すなわちRX 9000シリーズのみに対応しており、RDNA3(RX 7000シリーズ)およびRDNA2(RX 6000シリーズ)は公式サポート対象外となっている。
Hardware Unboxedの最新Q&A動画でティム・ネルソン氏は、AMDの現行フレームジェネレーション機能が可変リフレッシュレートディスプレイでのカメラパン時に深刻なフレームペーシング問題を抱えていることを指摘し、マルチフレームジェネレーションよりも現行のフレームジェネレーション修正とFSR4のRDNA3向けINT8モデル提供を優先すべきだと述べた。
同氏はまた、RDNA3ユーザーへのFSR4 INT8モデル提供を「より高い優先事項」と明言し、現状のAMDの対応に苛立ちを示した。
AMDのGPUソフトウェア部門を統括するアンドレイ・ズドラフコビッチ氏はCES 2026のインタビューで、FSR4のRDNA3対応について「現時点では計画にない」と回答しつつも、実験的なサポートパスの可能性は否定しなかった。
AMD副社長のデイビッド・マカフィー氏もCES 2026において「技術的に非常に困難な課題」とコメントしており、現時点では旧世代GPU向けFSR4の公式リリースは見込めない状況だ。
一方でAMDは2025年8月、誤ってFSR4のINT8版DLLをソースコードに含めた形で流出させており、この流出コードによってコミュニティはRDNA2・RDNA3でのFSR4動作を実証済みだ。
技術的な背景を整理すると、FSR4はFP8(8ビット浮動小数点)命令を標準的に使用するが、この命令はRDNA4でのみネイティブサポートされている。
RDNA3はFP8をネイティブサポートしないが、INT8(8ビット整数)によるエミュレーションでFSR4を動作させることが可能であり、パフォーマンスコストはFSR4比で10〜15%程度増加するものの、画質はFSR3.1のQualityモードを上回ることがコミュニティの検証で確認されている。
RDNA2はさらに制約が大きくWMMA(Wave Matrix Multiply-Accumulate)命令のネイティブサポートがなく、より重いエミュレーションが必要となるが、動作自体は可能との報告がある。
LinuxおよびProton環境ではRedditユーザーによるMODが公開されており、RDNA3でのFSR4フレームジェネレーション動作が確認されている。
AMD自身はコミュニティによるMODを禁止しておらず、ズドラフコビッチ氏は「モッダーがRedstoneを旧カードに移植することに反対していない」と述べている。
競合NVIDIAはCES 2026でDLSS 4.5を発表しており、新世代トランスフォーマーモデルをRTX 20シリーズ(2018年発売)まで遡って対応させている。FP8アクセラレーションはRTX 4000シリーズ以降に限定されるものの、旧世代ユーザーにも選択肢が与えられている点でAMDの対応とは対照的だ。
AMDはFSR4のRDNA2/3対応についてHardware Unboxedのコメント依頼に対し「現時点で共有できる情報はない」と回答するにとどめており、VideoCardzの報道によればコミュニティの間では沈黙そのものが問題視されるようになっている。

ユーザーの反応は厳しい。Redditではこんな声が代表的だ——「RX 7900 XTXが私の最初で最後のAMDカードになりそう。信頼を完全に失った」。AMDがかつて誇っていた「ファインワイン」戦略(長期にわたってドライバとサポートを改善し続ける姿勢)は、少なくともRadeonユーザーの間では過去の話になりつつある。
解説
正直に言うと、このFSR4問題はAMDが自分で自分の首を絞めているとしか思えない案件です。
私はRadeonユーザーとして、ROCmのスクリプトを公開するくらいにはAMDのGPUエコシステムに肩入れしています。だからこそ、今回の件は非常に残念です。
技術的な障壁の話は理解できます。RDNA4はFP8命令をネイティブサポートしており、そこを基準に設計されたFSR4がRDNA3で最大性能を発揮できないのは事実です。
でも問題はそこじゃない。
コミュニティはすでにINT8版でFSR4をRDNA3に動かして「FSR4のPerformanceモードがFSR3.1のQualityモードより画質が良い」ことを確認しています。RX 6700 XTでFSR4を有効化したユーザーは「速度は落ちるが追加のグリッチも不安定さもなく、RDNA4でのエクスペリエンスと同様だった」とまで言っています。
さらに言えば、AMDは2025年8月にうっかりINT8版のDLLをソースコードごと流出させているわけで、「技術的に困難」という言い訳はほぼ通用しない状態になっています。
技術的に動くと証明されているものを、公式サポートしないだけで「存在しないもの」として扱い続けているのは、技術的判断ではなくビジネス上の判断です。
要するに「RX 9000シリーズを買わせたい」ということなんでしょう。
個人的にはこれが悪影響をもたらすとは思えません。むしろ逆です。「AMDカードを買えばずっとサポートしてもらえる」という実績こそが、RDNA4以降への買い替えを促す最も強力な動機になるはずです。
NVIDIAはDLSS 4.5をRTX 20シリーズまで対応させました。2018年のGPUです。7年前の製品にも選択肢を与えることで「GeForceを買い続けると得をする」というサイクルを強化している。
AMDはその逆の行動をとっています。
ティム・ネルソン氏がQ&Aで述べていた「マルチフレームジェネレーションより先にやるべきことがある」という指摘には完全に同意します。現行のフレームジェネレーションのフレームペーシング問題を修正し、INT8版FSR4をRDNA3ユーザーに届けること——これがAMDが今すぐやるべきことであって、マルチフレームジェネレーションはその後の話です。
FSR自体がオープンソースで誰でも使えることを誇りにしてきたAMDが、自社のGPUユーザーには機能を絞って提供するというのは、ブランドとしての一貫性という観点でも筋が通りません。
RDNA2/3ユーザーへのFSR4対応は「悪影響がない」というより、やらないことによるブランドへのダメージのほうがはるかに大きいと思います。
ズドラフコビッチ氏が「実験的なパスを検討するかもしれない」と発言したのは一縷の望みですが、AMDには「計画はある、でも出てこない」という前例がいくつかあります。今回も同じにならないことを願うばかりです。