電源に強くなろう
今回は普通の自作サイトではなかなか詳細まで解説されていない電源のスペックについて解説したいと思います。
ネット上の解説ではあまりに詳しく解説しすぎて逆に理解できないものと簡単すぎて知りたいことがわからないという両極端の解説しかありませんので、知ったかできる最低限の知識を解説していきたいと思います。
対象は電源にハマっている通ぶりたい厨二的な電源オタクです。
ガチ勢には対応してませんので、そういう人は己の道を究めてください。
オシロスコープ持ってるようなガチ勢は対象外です。
電源には製品の解説ページに上のような表があります。
この表が無い製品はまず120%ク〇だと考えて差し支えありません。
安物電源の雄K〇IANの動物電源にはこの表は一切ありません。
詳細スペックを明かしたら避けられるので明かさないといういっそすがすがしいほどの逃げっぷりです。
この電源のスペックにはいくつかの電圧が載っています。
最初にこの公式を覚えておいてください。
掛け算ですのでとても簡単です。
W=V*A
電力=電圧×電流です。
知ってるよという人もいると思いますが、この公式をすぐに引っ張り出せるようにしておきましょう。
各電圧の電流量の配分表ですが、MAXが500Wですので、各電圧を合計すると500W以上になりますが、500Wを超えないようにしなくてはなりません。
使えるのは500Wまでですので注意してください。
例を挙げると、
+3.3Vだと3.3*16=52.8W
+5Vだと5*15A=75W
で合計すると52.8+75=127.8Wとなります。
このうち使えるのは+3.3Vと+5Vの下に書いてある103Wまでとなり、合計で500Wまでとなります。
ピーク時600Wはあくまでも一時的な容量ですので計算は通常の500Wで行ってください。
それではATX電源の表に書いてあるスペックの解説をします。
ATX電源コネクターのピンアサインにある電圧
+3.3V=PCIスロット用と古いCPU(486DXや初代Pentium)用の電源
+5V=古いPCIカードやISAカードで使われる
+12V=CPUやGPUの低電圧回路用電源。非常に重要。
-12V=パラレルポートやPCIオーディオカードで利用される。最近ではほとんど使われない。
-5V=ISAバス用の電源。すでに使われなくなっているので省かれている製品もある。
+5VSB=スタンバイからの復帰用。電源ケーブルを抜くと切れます。CMOSにも供給されているため、電源ケーブルを抜くとボタン電池の減りが早くなるので注意です。
SATA電源コネクタ
+3.3V/+5V/+12Vを使用する。各1.5Aを供給する。
どの電圧を使用するかは個別の機種(HDD)によって違う。
3.5HDDは+5V/+12Vを2.5HDDやSSDは+5Vを使用する
4ピン/6ピン/8ピンコネクタ
マザーボードやGPUに接続するコネクタ。+12Vを供給する。
二系統に分かれていてそれぞれにMAX値が表記されている物がありますが、一系統の方が使いやすく性能が高いと考えてもらって差し支えありません。
USBコネクタ
+5Vを使用する
USB3.1Gen2(Type-C PD):5V*20A=100W
USB3.1Gen2(Type-C 1.2):5V*3A=15W
USB3.1Gen2(BC 1.2):5V*1.5A=7.5W
USB3.1Gen1:5V*0.9A=4.5W
USB2.0:5V*0.5=2.5W
※ USB3.1Gen2はコネクタ形状、ケーブルの品質やマザーボードの対応状況によって給電できる電力が変わります。
このほかパラレルATA(IDE)のペリフェラルコネクタとFDD用のコネクタがいまだについている電源もありますが、みなさん使いますか?おそらく90%以上の人は使わないと思いますので、解説は省略します。
この講座は楽して通ぶれるための説明なのでいわゆる本物を目指す人のための説明ではありません。必要ないものに関しては省きます。
マザーボードに取り付ける24ピンのコネクタの各電圧がどこのデバイスに電源を供給するためのものなのか説明してきました。
このような簡易な形での説明は恐らくネット上にはありません。
後は+5VSBはスタンバイ用途です。
他は使われなくなったデバイス向けのものですが、互換性維持のためについています。
※ ATX12V電源(普通のパソコン電源)とサーバー・ワークステーション用のEPS電源はコネクタなどは全て同じですが、POWER-OK信号(コンデンサの充電が出来たら出力される信号)のタイミングが違うのでEPS対応と書いてない電源をEPS用途向けに使うのはやめておいた方が無難です。
ATX12電源のコネクタとは別にユーザーが取り付けるデバイスやモジュールで使うのは+5Vと+12Vで重要なのは+12Vになります。
実践編
今まで説明してきたもののうち、容量が求められるのは+12Vになりますので、+12Vの容量に余裕のある電源が良い電源と言ってもよいでしょう。
過去の記事で盛んに+12Vについて触れてきましたが、こういう意味です。
具体的に計算してみましょう。
GTX1080Tiを使いたい場合、消費電力250Wですから、250÷12=約21Aの電流が必要ということになります。
※ nVidiaのHPで確認しましたが、TDPではなく消費電力表記となっています。
CPUの場合、TDP=サーマルデザインパワーとはイコール消費電力のことではありません。熱設計に使う目安のことです。
CPUの場合の実消費電力は約1.5倍と言われています。
この数値はネット上の有志による実測値になります。
絶対にこうなるというものを保証するわけではありませんので、ご了承ください。
一応の目安と考えていただいたほうがよいでしょう。
OCして電圧をあげるともちろんこの限りではありません。
電源の容量はシステム合計の消費電力の約2倍と言われていますが、CPUのTDPをそのまま消費電力として計算していることを考えるとシステムによっては70%くらいまで達している可能性もあります。
50-70%が電源の効率が一番高くなることを考えると結構ギリギリな考え方と言ってもよいかもしれません。
Core i7-8700Kの場合95W*1.5で143Wになります。
143÷12=約12Aということになります。
この電流(A)の合計が上の表で上げた各電圧(V)の下に書いてある数字を下回っていなければなりません。
掛け算、割り算で出せますので簡単ですよね。誰にでもできます。
まとめ
消費電力の2倍の容量の電源を選択しろと言うのが常識ですが、これだと日本ではコンセント1個口当たりの電力が1500Wまでとなりますので、750Wまでのシステムしか組むことが出来なくなってしまいます。
合計の消費電力が750W以上になった場合、+12VのA(電流)が電源の供給量を超えないように注意しましょう。
こういったシステムを組む時は80Plus Titanium電源を使って+12Vに余裕のある電源を選ぶようにしましょう。
それでも電源の寿命と引き換えにするような使い方になると覚悟しておいた方がよいでしょう。
マージンを削るというのはそういうことです。
※ただし、現代のGPUやCPUはフルロード時以外はあまり電力を消費しないように省電力システムが発達していますので、学術計算やマイニングなどでフルロードつけっぱなしにしない限りは電源の寿命が極端に縮むほどの状況はほとんどないでしょう。
こういう使い方の場合、どのくらいのマージンを取るかはその人の考え方によります。
上で説明したCPUのTDPと消費電力の関係などを理解していない方は危ないのでこうしたシステムを組むのはやめておきましょう。
どっちにしても1500Wという上限は決まっていますので、電源の連携を行わない限りはこのような使い方になります。
運が悪ければあっという間に電源が壊れたり突然死する可能性もありますので、覚悟しておいた方がよいでしょう。
1500Wのドライヤーをずっとつけっぱなしにするのと同じですから、一般家庭でこのようなPCを使おうという人はそういう認識を持っておいた方がよいでしょう。
こういう使い方をよしとする人はある意味選ばれた人だと思います。
SLi関して何度も注意喚起しているのはこういうことです。
3-Way SLiや4-Way SLiのシステムを供給している業者が無いのはこのためでしょうね。
完成品としての保証はとてもできないので、ユーザーが自己責任でやってくれと言うことなんだと思います。
※ 私は寡聞にして知りませんが、もし3-Way SLiや4-Way SLiのシステムを完成品として供給して、一般消費者向けに1年保証や3年保証などガレリアやG-tuneと同等のサービスを行っている業者があったら教えてください。
仮想通貨マイニング用のリグを組む時などは完全にこういう計算方法になります。
こういうギリギリの用途に使う方はあまり多くは無いと思いますが、慣れてない方は危ないのでやらないほうが無難です。
これだけ覚えておけば貴方も家族・友人・親戚の前で電源通として鼻もちならない人間を演じることができます(笑