既にご存知の方も多いことと思いますが、
9月15日、東京ゲームショウ2019内で執り行われたeスポーツ大会「『ストリートファイター5』カプコンプロツアー2019スーパープレミア日本大会」において、本来優勝者に提供される予定とされていた賞金500万円が、またも10万円に減額される問題が発生しました。賞金の減額対象となったのは、ストリートファイター5の国内有力プレイヤーである「ももち」選手。ももち選手は、大会主催者が賞金の満額支払いの「条件」として設定している、日本eスポーツ連合(以下JeSU)の発行するプロライセンスをその制度の発足当初から受け取り拒否しており、大会規定に基づき賞金の満額支払いが出来ないとして最大10万円への賞金減額となりました。ももち選手への賞金が減額されるのは、2018年12月に行われた同ゲームタイトルの大会に引き続き2度目となります。
引用:国内有名eスポーツ大会:優勝賞金500万円がまたも10万円に
国内のeSports大会で優勝の賞金が払われないという事態が起きているとのこと。
こういったことは去年の大会でも起きているのと、
京ゲームショウ2019では9月14日にも、人気スマホゲーム「パズドラレーダー」の賞金制大会においてJeSU規定に基づいて予定されていた賞金500万円が優勝者に付与されないという事案が発生しており
上のような未成年が優勝した際に賞金が払われなかったという事案もあるようです。
金払いが悪い人・企業はどこに行っても嫌われる
知っている方も多いと思いますが、日本では景品表示法の関係で永らくeSportsの賞金を受け取ることが出来ないということになっていました。
※ 景品表示法の制限では10万円まで
海外の大会でも日本の優勝者や入賞者にだけ賞金が払われなかったりなどの事案が多発して有望なeSportsを国や行政が制限する事案として問題視されていました。
近年のeSportsの盛り上がりや、オリンピックにeSportsが入るかもしれないなどの期待感からこうした日本社会特有の状態に対して、賞金を「報酬」と解釈すれば受け取ることが出来るという解釈を消費者庁が行ったため、日本でのプロゲーマーという存在の認知やeSportsの活発化に大きな弾みがついた矢先の出来事でした。
日本のプロゲーマーの業界団体JeSUはもともと景品表示法の制限を回避するために設立された団体とされていましたが、消費者庁の判断では一定の要件をクリアした大会ならばプロゲーマーのライセンスが無くても賞金を支払う・受け取ることに問題はないというものでした。
にもかかわらず、今回話題に上がった、話では500万円の賞金が10万円に制限され、さらにそこから副賞の代金を差し引かれて6万円ほどしかしはらわれなかったとのこと。
この話を聞いて私は非常に残念な気持ちになりました。
ゲームが上手い人、プロゲーマーが尊敬される世界というのは私たちの世代にとっては悲願であり、ずっと目指し、あこがれてきた一種理想の状態なわけですが、優秀な人たちがプロゲーマーを目指すにはやはり高額な報酬が必須だと思います。
国や行政が問題ないと解釈しているものを業界の団体を立ち上げたからと言ってライセンスの有無で差別して払わないというならば、最初から賞金無しでやった方がなんぼかましです。
「日本の大会では賞金が払われない」という評価が定着してしまえば、日本のeSportsそのものが死んでしまうことになりかねません。
優秀な人たちはみな海外に行ってしまうことでしょう。
そもそも、日本の大会で使われるゲームは日本メーカーのゲームであり、海外で主流になつているFPSやバトルロワイアル系のものは種目になっていません。
この辺も日本のeSportsがガラパゴス化している原因の一つなのですが、この上金払いすらも悪いということであれば、世界から取り残されることは必至でしょう。
数ある問題の中でもこの「賞金を払わない」というのは最悪で、信用問題にもかかわってくると思います。
プロを目指すような方たちは人生すべてをゲームに捧げて高額な費用を使ってゲームの腕だけではなく、集中力を維持するために必要な体力も鍛えています。
勝つためにはやはり「金」が必要なわけです。
その、ゲームの技術を上達するのに必要な原資が払われないということであれば、そもそもプロになろうとしても道が閉ざされてしまいます。
これからプロゲーマーを目指そうという若者が賞金が払われないかもしれないeSportsの世界に飛び込もうとするでしょうか?
中には熱心なゲーマーもいるかもしれませんが、難しいと言わざるを得ないと思います。
「未成年に賞金を払うことが出来ない」、「JeSUのプロライセンスを持ってないと金を払うことが出来ない」というならば、参加資格に最初から加えればよいだけです。
金が払われなかったという事実が表に出ることだけは絶対に避けなければいけません。
こうした制限を加えることによって参加者の質が下がり、大会の格が落ちてしまうかもしれません。
それでも「賞金をキャンセルした」という事実が表に出て来るよりは1億倍マシです。
恐らく、こうした事態になったのは、開催側がeSportsの賞金付き大会の運営に慣れていないということもあるのだと思います。
「JeSUのプロライセンスを持ってないと賞金が支払えない」にもかかわらず、登録プロ以外の選手を出場させたのは、著名選手のネームバリューによって大会のクオリティを上げたかったという思惑もあったのだと思います。
しかし、著名な選手がプロのライセンスを持ちたがらないというのは制度そのものに問題があると思いますし、とりあえず、面倒ごとは後回しにして、大会のエントリーだけは受け付けるというのは非常に問題の多い運営方法だと思います。
問題を先送りにする日本社会の非常に悪い点が端的に出ている例だと思います。
「なんやかんやイチャモンをつけてあの企業は金を払わない」という評価が定着してしまえば、企業イメージにも大きなマイナスですし、ひいては日本のeSPortsの存在意義にも関わってきます。
資本主義において、金というのは絶対の物差しであり、500万円という賞金がきちんと支払われたという事実には実態以上の大きな意味があります。
賞金のためにプロゲーマーを目指す方も出てくるでしょう。
今からでもすぐに支払いを行うか、運営側がきちんと謝罪を行い、登録プロだけの大会を改めて開いて、実況を行い世間の注目や大会のクオリティがどのくらいなのかははっきりさせておく必要があると思います。
そこで世間から無視される程度のクオリティの選手しか集まってこないのであればJeSUの制度そのものを見直すしかありません。
もちろん今度こそきちんと賞金を支払う必要があります。
確実に支払われたという事実を宣伝するためにできれば現金を手渡しした方が良いと思います。
これがファイナルアンサーであり、これ以外の答えはないです。
この方法を取れば主催社であるカプコンやJeSUの組織や関係者の誰かが傷つくと思います。
しかし、走り始めたばかりの日本eSPortsの世界で間違いが糺せなかったら、今後どのようにしてよちよち歩きのeSports界を運営・発展させていくのでしょうか?
また現状でも世間から厳しい批判にさらされています。
誰もが自分が損をすることは嫌だと思いますし、世間から批判を浴びることもeSports業界の仲間から嫌われるのも辛いでしょう。
しかし、だからと言って身内の論理ばかりを優先させていては、スポーツとしての規範を社会にわかりやすい形で示すことが出来るのでしょうか?
何度も言っていますが、スポーツは社会の生産性に何ら寄与しません。
ルールを守りスポーツマンシップを体現することによって、社会の規範意識に資する、それがスポーツの存在意義です。
そのスポーツを主宰する側が言ったことを守らないのでは道理が通りません。
「なぜゲームはスポーツでなくてはならないのか?」この言葉の意味を業界の方一人一人がかみしめてそこに答えが出せないならば、日本でeSportsを行うのは無理ですのでいっそ諦めた方が良いと私は思います。
かなり厳しい意見ですが、1ゲームファンとして是非とも盛り上がってきたeSportsがますます発展し、プロゲーマーが尊敬される社会がやってくることを祈念します。