
■事実
経緯・入手方法
米TechPowerUpフォーラムのユーザー「Fouquin」氏が、未発表のMicrosoft Surface Laptop Ultra試作機(型番ラベル「EV1.5」)を、Microsoft本社(ワシントン州レドモンド)付近の路上で6月中旬に拾得したと投稿しています。
「ゴミだと思って拾った」との本人談。約1ヶ月間にわたり実機を使用・検証したといわれています。
「路上で偶然拾った」という経緯そのものについて、コミュニティ内では真偽を疑う声(内部リークではないかとの憶測)も出ています。
ハードウェア仕様
搭載SoCはNVIDIA RTX Spark N1X(開発コード名)の最上位構成:20コアArm CPUです。(Cortex-X925×10+Cortex-A725×10のbig.LITTLE構成)+Blackwell世代GPU(48基のストリーミングマルチプロセッサ、6144 CUDAコア)
統合メモリ24GB、SSD512GBというエントリー寄りの構成です。(NVIDIAの公式仕様では統合メモリは最大128GBまで対応)
TSMC製造・MediaTekとの共同設計によるArmベースSoCとされています。
Surface Laptop Ultraは15インチのMini-LEDディスプレイ、持続負荷向けに強化された冷却機構を搭載予定です。(Microsoft公式情報)
NVIDIAはRTX Sparkプラットフォーム全体の仕様として、最大20コアCPU・最大6144コアBlackwell GPU・最大128GB統合メモリ・FP4性能で最大1ペタフロップスを謳っており、ASUS・Dell・HP・Lenovo・MSI・Microsoftが対応パートナーに名を連ねています。
RTX Spark搭載ノート・小型デスクトップは2026年秋発売予定とNVIDIAが表明済みです。
ドライバ・検証環境
当初は2025年11月付という古いWindows on Arm(WoA)版グラフィックスドライバで起動しており、GPUクロックの乱高下・頻繁なスタッター・特定のGPU計算処理やゲームでのクラッシュが発生しています。
その後NVIDIAのプレビュードライバ(バージョン616.00、CUDA 13.4対応)に更新し、CUDA機能を有効化。ただし新たに「画面ロックアップ」バグが発生するなど、根本的な改善には至りませんでした。
CUDAベースのAIベンチマークは正しく動作せず、より低速なCPUベース処理やVulkan Computeへのフォールバックを余儀なくされました。
CPUベンチマーク結果
Cinebench 2024:マルチコア1,386点/シングルコア123点です。
Cinebench 2026(10分間の持続負荷モード):マルチコア5,771点/シングルコア540点、MP比10.68倍です。
この結果はデフォルトの電力制限(PL1 37.5W/PL2 64W)ではなく、Fouquin氏が発見した隠しの「High Performanceプロファイル」(PL1 80W/PL2 95W)を適用した状態で計測されたもの。消費電力は最大約50W程度だったとされています。
Cinebench上ではプロセッサ名が「JMJWOA-Generic-CPU」・クロック1.01GHz固定と誤認識されており、プラットフォーム・ドライバともに未成熟であることを示す一例とされています。
参考として、Apple M5 Pro(18コアCPU)はサードパーティによる10分間持続負荷のCinebench 2026テストでマルチコア約8,600点前後を記録したとする報告があり、これに照らすとN1Xのスコアはなお大きく及ばない水準です。
別の報道では、N1Xのマルチコアスコアは14コア構成のApple M3 Max相当に近いともされており、比較対象や検証条件によって評価が変動する状況です。
GPU・ゲーム性能
- 3DMark Port Royal:旧ドライバで26〜31FPS
- 3DMark Nomad:旧ドライバで20〜21FPS
- Unigine Superposition:新ドライバ(616.00)適用後に最大56〜58FPSまで改善
『ヘルダイバー2』はシステムクラッシュを引き起こし、GPGPU整数演算テストも同様にクラッシュしています。
Fouquin氏は、これらの不具合は「N1Xというプラットフォーム自体の問題というより、この個体固有の実装上の問題」との見方を示しています。
ゲームの多くはArmエミュレーションレイヤー経由での動作とみられ、これも不具合要因の一つとして考えられています。
ディスプレイ・筐体・使用感
ディスプレイには、ローカル調光ゾーンの不具合、NVIDIA G-Sync非対応、タッチ入力時のノイズ、HDR表示の問題など、量産前個体特有の不備が複数確認されました。
一方でキーボードの打鍵感は「MacBook以外では最高」と高評価、タッチパッド・ヒンジ機構も高く評価されています。
筐体は削り出しアルミで、Microsoftが競合視するMacBook Proを強く意識した外観です。
ユーザーによる分解・修理は一応可能だが、「薄いアルミ製の化粧パネルが多数貼り重ねられている」構造で、公称されていた「修理しやすさ」は限定的です。
カメラでユーザーの存在を検知して自動点灯するキーボードバックライトなど、細部の作り込みは評価されています。
表(比較表)
| 項目 | RTX Spark N1X(今回の試作機) | Apple M5 Pro(参考) | Apple M3 Max(参考) |
|---|---|---|---|
| CPU構成 | Cortex-X925×10 + Cortex-A725×10(計20コア) | 18コア(Pコア+Eコア構成) | 16コア |
| GPU | Blackwell、48SM/6144 CUDAコア | 20コアGPU | 40コアGPU |
| メモリ構成(試作機) | 24GB統合メモリ・512GB SSD | ― | ― |
| メモリ最大構成(公称) | 128GB | 最大128GB(構成による) | 最大128GB |
| Cinebench 2026 マルチコア | 5,771点(特別電力プロファイル時) | 約8,600点(10分持続負荷・参考値) | N1Xとほぼ同等との報道あり |
| Cinebench 2026 シングルコア | 540点 | 非公表(本稿では未取得) | 非公表(本稿では未取得) |
| 製造プロセス | TSMC(MediaTek共同設計) | TSMC 3nm | TSMC 3nm世代 |
| 発売時期 | 2026年秋予定 | 2026年3月発売済み | 発売済み(旧世代) |
ソース
- TechPowerUp(ouquin氏の投稿元): https://www.techpowerup.com/351122/nvidia-rtx-spark-laptop-found-on-roadside-gets-reviewed-before-official-launch
解説
タイトルにある「CPU性能がM5 Proに届かず」は、Cinebench 2026のマルチコアスコア比較(N1X: 5,771点 vs M5 Pro: 約8,600点)が根拠。ただし比較対象がM3 Max(14コア)だとほぼ互角という報道もあり、「どのAppleチップと比べるか」で印象が変わる点は要注意だ。
そもそも今回のスコアはデフォルト電力制限ではなく、隠しプロファイルで電力枠を引き上げた「特別な条件下」での結果。量産版・正規ドライバでどこまで再現できるかは未知数だ。
CUDAが正常動作しない、AIベンチマークがCPUフォールバックを強いられるという状況は皮肉。RTX Sparkは本来「ローカルAI」「CUDA開発」を売り文句にしているプラットフォームであり、看板機能がまだ機能していないとも言える。
「拾ったら動いた」ではなく「拾ったら動かない機能だらけだった」というのが実情に近い。
ゲームでのクラッシュや性能の乱高下は、x86からArmへの移行に伴うエミュレーション層の課題が透けて見える。Windows on Armという土俵そのものの難しさが依然として残っている。
筐体・キーボード・ディスプレイなど「ハードウェアの作り込み」は好意的に評価されている点は見逃せない。Microsoftが本気でMacBook Proを意識した工業製品を作ってきたことは伝わる。
出どころ不明な「拾った」という体験談スタイルの記事は、リーク文化として近年よく見られる手法。真偽はさておき、情報の信頼性としては「非公式・個体差あり」の前提で読むべきだ。
「路上で拾ったのがまさかベンチマーク結果まで込みで“未完成”だったとは」という皮肉めいた一言だ。
正式発売(2026年秋予定)までにドライバ・電力管理がどこまで詰められるかが、この製品の評価を大きく左右するとの見立てで締めても良い。
路上で偶然拾ったとのことだが、海外では動作する高級ノートPCが偶然落ちているものなのだろうか?
私もこのようなPCを偶然拾ってみたいものだ(苦笑。
さて、予想通りのWindows on ARMの動作だが、焦点はこれが、実売いくらになるのかということと、AI用のモバイルワークステーションとして使えるのかということではないだろうか?
Snapdragonの動作状況から、あまりWindows on ARMの動作には期待してない人も多いだろう。しかし、DGX Sparkとほぼ同じSoCが入っていて、安価ならお得感はかなり高い。
前々から言っていたが、一般用のノートPCではなく、AI用のモバイルワークステーションとしての引き合いの方が多いような気がする。