以前にも記事中で少し触れましたが、AMDがついに、ついに、90nmSOI以来、ぱっとした製造プロセスの立ち上げが出来ずにAMDの足を引っ張りまくってきたGF(Global Foundries)を切るようです。
「切るようです」というか、どうも7nmの立ち上げが出来ずにAMDとの交渉を(事実上)打ち切られてしまったというのが真相のようです。
ソース元の記事によるとAMDはGFとWSA(Wafer Supply Agreement)という協定を結んでいます。
この協定は
・AMDが設計したCPUなどは必ずGFを使って生産してね
・AMDはGFで生産するCPUなどは一定量の割り当てを行ってね。割り当て量を満たさなかった場合は罰金を払ってね。
・もしAMDがGF以外で生産するときは一個につきいくらかの罰金を払ってね。ただし、罰金を払った分に関しては年間割当量に含みます。
というものです。
何故こんな不利な協定をAMDがGFを結んだかというと、Bulldozerの失敗で会社を傾かせたAMDが当時まではAMDのFabだったGFをファンドに売却する代わりにAMDの生産するCPUなどにGFを使うと約束せざるを得なかったという事情があります。
確か中東が中心のファンドだったと思いますが、このような協定を結ばない限り相手が納得しなかったということです。
この協定によって、新プロセスの立ち上げがあまり芳しいと言えなかったGFをずっと使わざるを得なかったということです。
正直私もGFのダメっぷりにはイライラしていた時期もあったのですが(笑、これでようやく疫病神から解放されそうです。
GFの技術者はintelに敗北した旧IBM Fabの技術者なども移籍しており、チップ製造界(?)の究極の負け犬軍団というような体裁だったわけですが、やはり同じ業界で負けた側の人間が集まってきても勝てないってことが証明されてしまったという皮肉な結果になりました。
実際にはAMDとGFの間に交わされた協定の内容は明らかになっていません。
しかし、7nmの製造競争から脱落したGFはAMDとの製造に関する協定で、よりAMDに自由度の高い協定を結ばざるを得なかったという推測に基づいて元記事は書かれています。
可能性としてはAMDがより負担を増やす形で協定が更新されるケースも想定しうるそうですが、可能性としては極小になるだろうとしています。
今回の協定の更新(七回目の更新)で、AMDはFabless企業(製造設備を持たない設計のみを行う企業)としての方向性を加速させるだろうとしています。
※ ちなみにコンピューター業界で有名なFabless企業にはあのnVidiaがあります。Fablessでも高い利益率を上げられるという証明ですね。
今後もGFは7nmの製造プロセスを開発するが、もはや最先端にはついていけないということが明らかになったようですね。
次のGFの協定の改定は2020年であるそうです。
ソース元の記事では今回の改定を「最先端の製造プロセス開発レースから脱落するGFから出た希望の光であり、AMDがFabless企業に生まれ変わる最初の兆候」と痛烈な表現で皮肉ってます。
実に欧米人らしい皮肉です。
実際のところ、この違約金とか年間生産割当量の条件が緩くなることによって設計や開発などに資金を回すことが出来るようになり、AMDにとっては明るいニュースと言えなくもないです。
AMDがFab(GF)を抱えたとき、「AMDはintelに挑戦する最初の資格を得た」と大々的に華々しく喧伝されたものですが、あの時にこうなるとはだれも予想しなかったでしょう。
その当のintelも10nmの立ち上げの失敗を繰り返しており、Fabを持つことに対するリスクがそんなに小さなものではないということを裏付けてしまっている形です。
半導体業界というのは三年後どころか一年先の未来すらもわからない動きの速い世界ですが、意外性があってかなり面白い世界です。
少なくともGPUに関しては、これでAMDはnVidiaと対等な土俵に立ったと言ってもよいです。
intelやAMDが製造プロセスや設計で失敗を繰り返す中、nVidiaはほとんど失敗をせずにここ数年は急成長してきました。
GPUに関しては、TSMCがあるにも関わらず、ダメっ子のGFを使っていては話にならなかったわけですが、これで「少なくとも」製造プロセスに関しては対等の土俵に立ったと言ってもよいでしょう。
nVidiaに追いつく最初の資格を得たと言ってもよいです。
GFは7nmそのものを諦めるわけではないようですので、最先端ではなくなるだけで、周辺チップなどには相変わらずGFを使う可能性は残っていますが、少なくともRyzenやRadeonなどの様にその時代の最先端の製造プロセスを使わなければ勝負にならない製品をGFに使うことは無くなりそうな感じです。
AMDがGFを切り離したことによってGFはリストラなどを進めていかざるを得なくなるでしょう。
しかし、最先端の開発競争についていけない企業と敢えてパートナーシップを組めるような余裕のある世界ではないので、AMD自体とAMDファンにとっては明るいニュースだと思います。
ゲーミングPCに関しては、Radeonにちょっとだけ明るいニュースであると解釈してください。
今後Radeonの予定が狂うことはほとんどなくなりそうです。
Radeonの予定が狂ったとしてもnVidiaも一緒のスケジュールでしょうから、条件は一緒です。
nVidiaも同じ製造プロセスを使いますのであくまでも「ちょっとだけ明るいニュース」です。
ソース:wcfftech - AMD Is Negotiating A 7th Amendment To The WSA (Wafer Supply Agreement)