キヤノンの顧客は、今年か来年に最初のナノインプリント・リソー・ツールを試運転用に入手する予定である。
キヤノンは昨年、同社初のナノインプリント・リソグラフィー（NIL）装置を発表したが、これはASMLの極端紫外線（EUV）および先進的な深紫外線（DUV）リソグラフィー装置に対抗できるものである。
今週、同社は、最初の顧客は今年か来年に最初のNILマシンを受け取る予定であると発表したが、これは試運転のために使用されるとFinancial Timesは報じている。
この新しい装置は、一般的なリソグラフィ技術で特徴をエッチングするのではなく、ウェハに刻印を押すことで動作し、業界の雄であるASMLの競合するEUV装置よりも消費電力が90％少ないとされている。
キヤノンのオプティカル・プロダクツ・オペレーションズの責任者である武石宏明氏は、フィナンシャル・タイムズ紙に、キヤノンが2024年と2025年にこれらの装置の出荷を開始することを熱望していると語った。
独自の技術により、シンプルで低コストの最先端チップの製造が可能になる。
キヤノンのナノインプリントリソグラフィ技術は、15年以上にわたって開発が続けられてきたもので、チップデザインをシリコンウェーハに直接スタンプすることで、チップ製造に新たなアプローチを提供する。
この根本的に異なる方法は、レーザーとレジストに依存する従来のDUVやEUVリソグラフィー技術とは対照的であり、大幅なコスト削減とエネルギー効率の向上を約束する。
実際、キヤノンは、自社のNILツールの消費電力はASMLのEUVツールより最大90％少ないとまで言っている。
また、NILは現在5nmクラスのプロセス技術でチップを製造するのに使用できるが、最終的には2nmクラスのノードまで進化する可能性があるという。
キヤノンは、ナノインプリントリソグラフィ装置の戦略について、DUVやEUV装置に取って代わるものではなく、既存の装置と共存するものであると述べている。
Financial Timesによると、ロジックチップ用でなければ、NILは3D NANDの製造に使われる可能性があるという。
キヤノンのナノインプリント・リソグラフィの導入は、リソグラフィ・システムに対する需要が高い時期に行われた。
さらに、NILはより安価なツールを提供し、より安価なチップ製造を可能にする可能性がある。
その結果、キヤノンの最先端ファブツール市場への参入は、ASMLが紛れもなくリソグラフィのリーダーである現状を破壊する可能性がある。
しかし、NILはDUVとEUVの両方と互換性がないため、現在の設計フローへの挿入は控えめに言っても複雑である。
一方、ナノインプリント・リソグラフィーのみに依存できる製造プロセスを開発できるかどうかも不明である。
そのため、キヤノンのナノインプリント・リソグラフィーの成功は保証されておらず、業界アナリストからは懐疑的な声が上がっている。
調査会社Radio Free Mobileの代表であるリチャード・ウィンザー氏は、Financial Timesとのインタビューで、「もしナノインプリント技術が優れた技術であれば、今頃は立ち上がって大量に市場に出回っていると思います」と語っている。
解説：
Cannonのナノプリント技術が半導体の微細化を進める。
元記事を見ると、3D NAND Fashに向いているというようなことが書いてありますので、ロジックチップはあまり得意ではないのかな？という印象を受けました。
しかし、EUVやDUVなどの現在の製造手法とは全く別のため、現場がすんなり受け入れられるかどうかは不透明とされています。
日本企業発の技術ですから、ぜひとも躍進してほしいところですが、元記事を見るとなかなかに難しそうです。
現在の製造技術は2nmあたりで頭打ちになり、それ以降は素材や配線技術を見直すことによって微細化を進める方針のようですが、このナノプリントが頭打ちになっている壁を突破する契機になるのか、あまりにも毛色が違いすぎて受け入れられないのかはっきりしていないところです。
アナリストはナノプリント技術が一般に使われることに対しては懐疑的のようです。