ゲーミングPCを検討されている方にとってはすでに知っている事実かもしれませんが、GPD WIN2というフル機能Windows10を搭載し、ゲームパッドのついた超小型のWindowsコンパクトサイズのノートPCが発売予定です。
私はこうした超小型のノートPCをあまり推奨していませんが、ちょうどよい機会なのでスペックなどをチェックしてみましょう。
GPD WIN2スペック
型番 | GPD WIN2 | |
OS | Windows 10 Home (64bit) | |
プロセッサ | プロセッサ | Intel® Core™ m3-7Y30 |
コア数/スレッド数 | 2/4 | |
ベース動作周波数 | 1.00 GHz | |
ブースト動作周波数 | 2.60 GHz | |
L2キャッシュ | 4 MB | |
グラフィックス | グラフィックス | Intel® HD Graphics 615 |
ベース動作周波数 | 300 MHz | |
バースト動作周波数 | 900 MHz | |
メモリ | 規格 | LPDDR3-1866 |
容量 | 8 GB ※メモリの拡張や増設はできません | |
ストレージ | 規格 | M.2 2242 (SATA 6G) |
容量 | 128 GB | |
液晶パネル | 6インチ、1280×720 ゴリラガラス4採用H-IPS液晶パネル (10点マルチタッチ対応) | |
入力デバイス | キーボード | QWERTYキーボード |
マウス | ジョイスティックコントロール (ゲームパッドモード/マウスモード切り替えスイッチ搭載) | |
ジョイスティック | 日本アルプス製 ダブル3Dジョイスティック | |
D-Pad | 十字キー | |
ゲームファンクションボタン | A/B/X/Y (△○×□併記) | |
ゲームアクセサリボタン | L1/L2/L3/R1/R2/R3 | |
フォースフィードバック | ダブルバイブレーションモーター | |
有線LAN | – | |
無線LAN | Wi-Fi 802.11a/b/g/n/ac (2.4G/5G Dual-band wifi, 867Mbps) | |
Bluetooth | Bluetooth 4.2 | |
オーディオ | 2chステレオスピーカー内蔵 / マイクロフォン内蔵 | |
カメラ | – | |
インターフェース | 1×Micro HDMI 1.4 (4096×2304 @24Hz) 1×USB 3.0 Type-A 1×USB 3.0 Type-C 1×Micro SDカードスロット (UHS-I/microSDXCサポート) 1×4極3.5mmコンボジャック | |
冷却方式 | ファンシンク | |
バッテリー容量 (リチウムポリマー) | 2×4,900 mAh | |
連続稼働時間 | 最大8時間 | |
本体サイズ | 162mm × 99mm × 25mm | |
本体重量 | 約460g | |
注意事項 | M.2 2242 SSDの交換に伴う本体分解時の破損やその他不具合は保証対象外となります。 |
「あれっ?」と思われた方も多いと思いますが、最近のゲーミングPCと比較すると特に語るべきところのないスペックです。
ではゲームにおけるフレームレートを見てみましょう。
GPD WIN2フレームレート | |
World Of Warcraft | 30 |
TES5 Skyrim | 52 |
DOTA2 | 70 |
LoL | 90 |
OverWatch | 82 |
Heros of the storm | 49 |
GTA5 | 38 |
意外と快適に遊べる数字に驚かれた方もいると思います。
何故なのでしょうか?
それは解像度と選択しているタイトルにあります。
これがこのコンパクトゲーミングノートのウリなのでしょう。
解像度は実用上ほぼ最低の1280×720ドット、テストに使用されているタイトルはひと昔前のものばかりです。
付属モニターの6インチという大きさを考えると特に問題ない解像度だとは思います。
要するに持ち歩ける代わりに解像度をギリギリまで落として妥協しているということです。
PCの絶対性能はメモリ帯域である程度決まってしまう。
ノートとデスクトップで差がついてしまうのは「PCの絶対的な性能はメモリの帯域である程度決まってしまう」からです。
巨大なデータを転送する必要のあるGPUの処理には莫大なメモリ帯域が必要になります。
そうしなければ現在のゲーミングPCの最大のウリである美麗なゲーム画面を維持することはできません。
メモリの帯域をあげれば、それらを生かせるCPUなりGPUなりのプロセッサを搭載せねばならず、処理能力の高いプロセッサは発熱が大きくなります。
メモリ帯域を計算するだけで慣れていればどのくらいの性能なのかある程度予測がついてしまいます。
では、具体的に見てみましょう。
メモリ | CPUメモリ帯域 | GPUメモリ帯域 | CPU:TDP+GPU消費電力 | |
GPD WIN2 | LPDDR3-1866 | 29.8(14.9*2) | 15W | |
GALLERIA DS | PC4-21300 | 46.6(23.3*29) | 65W | |
GDDR5 | 112 | 75W |
※ 当サイト推奨PCの一覧はこちらから。GALLERIA DSの詳細スペックはこちらから。
比較には大体同程度の価格になる当サイト推奨の最低スペックのゲーミングPCを対象としました。
ゲーミングPCにはモニターが、GPD WIN2にはGPUが搭載されていないことを考えるとコスト的な妥協点はこんなものだと思います。
結果はCPU+GPUのメモリ帯域で次の通り(単位はGB/s)
GPD WIN2=29.8
GALLERIA DS=46.6(CPUのみ)、112(GPUのみ)
大量に処理を行う画像関係のメモリ帯域に専用のメモリ(GDDR5)を使って莫大な処理能力を受け止めているGeforceGTX1050とは比較するべくもありません。
CPU内蔵タイプのGPUはまずメモリ帯域の関係で高い処理能力を発揮することは出来ず、そのため設計自体もそのようになっています。
唯一の例外はパソコンではありませんが、PS4ぐらいですかね。
PS4のCPUはGPU内蔵型ですが、GDDR5を使ってメモリ帯域をあげています。
しかし、OSはFreeBSDベースの独自仕様でプラットフォームそのものが違います。
当然ですが、GDDR5はバス幅が広い分、設計が難しくあとからの増設もできません。
このGPD WIN2も増設はあきらめているので、GDDR5が使えたらもっと性能をあげられると思いますが、今度はそれに向いたプロセッサがありません。
メモリにGDDR5を使うことを前提としたPC向けのGPU内蔵プロセッサというのは需要が見込めませんので、存在しません。
PS4はプラットフォームをソニーという大企業が保証することによって大量の需要が見込め専用の設計を行って立ち上げているので成立しているのです。
その保証もソニーがPSシリーズを成功させてきたという実績によるものです。
この点に着目して、今後、AMDと協力してGDDR6を使ったゲーミング向けの超省電力のモバイルプラットフォームが出来れば面白いとは思いますが、こういう大きなプロジェクトはintelが絡んでいなければ成立させるのはかなり難しいでしょう。
このようにスペック上でメモリ帯域に明確な差がついている場合、埋められない性能差が存在します。
演算を行うにも高解像度のテクスチャー処理を行うにも性能が上がれが上がるほど莫大なデータの転送が必要になるからです。
キャッシュで見かけ上のデータ転送速度を上げることは可能ですが、最終的にはメモリの帯域が決め手になります。
私は特にこうしたゲーミングノートを否定しているわけではなく、初心者向けじゃないということが言いたいだけです。
こうしたゲーミングノートの特性がわかっていて購入されるならよいですが、普通のゲーミングPCの様に万能に使えることを期待して購入するのはお勧めしません。
また当然ながらメモリの増設もできませんので使える分野はますます限られてくるのではないかと思います。
比較的世代交代ごとに大きな差がつく傾向のあるGPUだけを交換することのできるデスクトップPCと比べるとコストパフォーマンスも極端に悪くなります。
※ フルサイズのゲーミングノートは最近のものはあまりデスクトップと差がつかなくなってきましたが、この点に関しては同様です。
こうしたPCは特定の用途に資金を投入できるごく限られた人向けのものです。