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マイニング戦線異状あり

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ゲームにしか興味の無い人たちでも仮想通貨のマイニングという言葉を一度は耳にしたことがある人もいると思います。

仮想通貨のマイニングとは、仮想通貨の取引台帳(ブロックチェーン)の追記と整合性の確認(あっているかどうかの確認)にコンピューターの演算能力を提供することによって報酬として仮想通貨がもらえる仕組みのことです。

仮想通貨の取引台帳(ブロックチェーン)は暗号化されており、これらに新しくされた取引の追記と整合性の確認には莫大な演算が必要となります。

これによって仮想通貨の信頼性を確保している重要な仕組みです。

実際に仮想通貨を掘り出しているわけではないのですが、仮想通貨の取引に協力することによって仮想通貨がもらえるため、マイニング(採掘)と呼ばれています。

ゲームやAIディープラーニングのほかに、この仮想通貨のマイニング需要によって本来ゲーム用に使われるはずのGPUをマイニング用に複数枚買う人たちが現れました。

かつては、GPUは発売から時間が経つと値段が落ちていくのが常識だったのですが、マイニング需要によって現在では時間が経つほどに品薄になって値段が上がる傾向が強くなりました。

為替で円安方向に動いているのも値段が上がっていく一因だと思います。

ゲーム用としてはnVidia製品に水をあけられているAMDのGPUも値段が下がりませんので、マイニング需要はかなり大きいものと思います。

※ ちなみにAMDのGPUはnVidiaよりマイニングに向いていると言われています。

しかし、最近、この状況に変化があるようです。

 

マイニング専用GPUの発売

ここに来て、マイニング専用バージョンのGTX1080Tiが発売されています。

チップ自体の性能は変わりませんが、メモリが5GBに減らされ、画面の出力端子が省かれています。

※ 知らない方のために解説するとマイニングに使う場合、GPUは画面に出力させません。画像処理をさせるとそちらに演算能力がとられてマイニング性能が落ちてしまいす。また、ゲームの様に大量に画像処理をする必要がありませんのでメモリもゲーム用ほど必要ありません。ゲーム用のGPUをマイニングに使うと完全に無駄になってしまうメモリがあるということです。

これらのカードはマイニング・アクセラレーターと呼ばれ、通常のGTX1080Tiを使うよりも高いマイニング性能を発揮するようです。

ソース:ComputerBase - GTX 1080 Ti „Hybrid“ Mining: Nvidia P102-100 mit 3.200 Shadern und 5 GB GDDR5X

 

こうしたマイニング専用GPUの発売はマイニング需要の高まりを象徴するものですが、近年、ASICのマイニングアクセラレーターを販売する企業が出てきました。

ソース:Bloomberg - 米AMDとエヌビディアに脅威-仮想通貨マイニングで中国企業が攻勢

このASICのマイニングアクセラレーターはマイニング専用のハードウェアで、専用の回路を搭載することによって通常のPCとは比較にならないほどのマイニング性能を発揮します。

記事中にあるASICのマイニングアクセラレーターを販売している企業は中国北京に本社のある企業でビットメイン・テクノロジーという会社のようです。

参考:Bitmain Technologies公式HP

ブルームバーグの記事ではAMDとnVidiaの業績に大きな影響を及ぼすという指摘がされています。

この通りになれば、発売とともに値段が上がっていたGPUのパーツ価格も少しは落ち着くかもしれません。

 

ASICが普及したらGPUの価格は下がるのか?

最後にちょっと悲観的な話をしますが、仮想通貨にはビットコインのほかにも様々な種類があり、このASICが使える仮想通貨もありますが、そうでない仮想通貨もあります。

単純な話として仮想通貨(マイニング)の世界ではASICが万能の剣というようにもろ手を挙げて歓迎されていないということです。

実際にASICが善か悪かについてはいろいろな議論があるのですが、仮想通貨の開発者の中にはASICは一部の大規模な事業者が独占的にマイニングを行うことによって仮想通貨の信頼性が崩壊すると忌み嫌っている開発者もおり、そうしたポリシーを持っている仮想通貨はASICが使えないように定期的にマイニングのアルゴリズムを変更しています。

ASICを善とする開発者は仮想通貨のマイニングに使われる電力を問題視しており、できる限り効率の高いマイニング方法を選択すべきだとする人たちもいて、どちらが正しいかというのは結論が出ていません。

実際に一番メジャーなビットコインではマイニングではこうしたASICを搭載したマイニング専用のハードウェアを使わない限りはすでに全く儲けが出ないというような状況になっています。

中国は日本よりもかなり電気料金が安いので、そうした国で小型のデータセンターのようなものを建てて、ASICを大量に投入してマイニングを行っているのが現状です。

ASICが一般的になるともう普通のPCでGPUをいくつつけても電気料金分も稼ぐことは難しくなります。

提供される演算能力が増えれば増えるほど演算能力当たりの報酬が落ちていくようになっているからです。

こうなるとやはり大規模な設備投資ができる業者がマイニングを独占してしまうような状況も考えられます。

仮想通貨自体が世の中に対してどのような影響があるのかというのがはっきり評価が定まっていないこともあり、こうした「専用のハードウェアを使うべきか否か」という議論の結論はいまだにはっきり出ていません。

現状、大規模な実験を行っているような状況であると言えば理解してもらえるでしょうか?

ブルームバーグに記事が掲載されるほどですので、大きな流れとしてはASICを使うという方向に行くのかもしれません。

なお、今回の記事に出てきたASICのマイニングアクセラレーターは日本でもamazonで検索すれば多数ヒットします。

仮想通貨やマイニングに縁が無い人にとっては遠い世界の話の様に感じると思いますが、実際にはamazonで簡単に専用のハードウェアを買うことができるかなり身近なものになっていることは確かです。

現在パーツショップの担当者もマイニングに関するPCについて個人的に研究したり、パーツの研究をしたりしてアドバイスを求められたときに備えているかもしれませんが、近い将来、ASICに関する知識も取り入れなければならない日が来るかもしれません。

どちらにしても仮想通貨のマイニングが認知され、需要が高まってくることによってハードウェアが専用化して、少しゲーム用のGPU価格が落ち着いてくれると我々は助かります。

ゲーム用に限らずパソコンの評価というのはコストパフォーマンスも大きな影響を及ぼしますので、マイニング特需が一段落してくれるとゲーマーとしてはかなり安心できるのではないでしょうか。

今回のお話の様に「ゲームに使われている何か」を物差しにして世界を別の側から見るという視点を持ってもらえるとあなたの世界が広がると思いまし、この記事をきっかけにいろいろなことに興味を持ってもらえると嬉しいです。

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