
■事実
埼玉県の修理業者「AI向GPU専門家」が、中古のGeForce RTX 2080 Ti(11GB)を22GBへ増設改造するサービスを提供開始しました。
料金は4万5000円です。(約280ドル、1GBあたり約25.68ドル換算)
施術内容は、元々搭載されている1GB×11枚のGDDR6メモリモジュールをすべて2GB品に載せ替え、基板上のストラップ抵抗を書き換え、対応するBIOSを書き込むという内容です。
8月15日、同店はSamsung製2GB GDDR6モジュール200個(合計400GB相当、RTX 2080 Ti換算で36枚分)の入荷をX(旧Twitter)で報告しています。
入荷から約1時間後には最初の1枚がベンチ上でテスト中である旨を投稿しています。
同店は改造済みの完成品も販売しており、MSI製RTX 2080 Ti 22GB改造品がメルカリで6万5000円で出品され、AIワークロード向け・動作確認済みとして売却済みです。
このメニューはRTX 2080 Tiに限らず、RTX A2000(6GB→12GB)、RTX 3070(8GB→16GB)、RTX 3080(10GB→20GB)、RTX 4080/4080 SUPER(16GB→32GB)、RTX 4090(24GB→48GB)の増設も用意されています。
比較表(同店のVRAM増設メニュー)
| モデル | 標準VRAM | 増設後VRAM | 増設量 |
|---|---|---|---|
| RTX A2000 | 6GB | 12GB | +6GB |
| RTX 2080 Ti | 11GB | 22GB | +11GB(¥45,000) |
| RTX 3070 | 8GB | 16GB | +8GB |
| RTX 3080 | 10GB | 20GB | +10GB |
| RTX 4080 / 4080 SUPER | 16GB | 32GB | +16GB |
| RTX 4090 | 24GB | 48GB | +24GB |
※価格が明記されているのはRTX 2080 Ti分のみ。他モデルの料金は記事内に記載なし。
ソース
- 出品者ページ(メルカリ): https://jp.mercari.com/user/profile/772165952
- 発信元アカウント(X): https://x.com/xingyao74043
■解説
そもそもRTX 2080 Tiの「11GB」という半端な数字自体、Turing世代のTU102ダイが352bit幅・32bitメモリコントローラー11基構成だったことに由来する。1基あたり1GBのGDDR6を担当していたため、単純に全チップを2GB品へ置き換えるだけで綺麗に22GBへ倍増できる、という「たまたま相性の良い設計」だったことは触れておきたい。
誤解されがちだが、この改造でGPUの演算性能(CUDAコア数やクロック)は一切変わらない。TU102-300のカットダウン仕様はそのままなので、ゲーム用途での恩恵はほぼゼロ。あくまで「メモリ容量に律速されるAI推論・ローカルLLM・拡散モデル系のワークロード」に効くという点は明確にしておくべき。
同時期にVideoCardzが報じていた中国でのRTX 3080 20GB改造品の再流行(GA102・320bitはそのままに10GB→20GB)とセットで見ると、「型落ちGPUのメモリ増設」がここ数週間で急に一つの潮流になっていることが分かる。GPU市場が新型より旧型の改造に活気づいている、というのは象徴的だ。
それなりに難易度が高い作業とGDDR6という一般的には手に入らないメモリが必要になるはずで、こうした作業を商売として成立するのは空前のAI需要によるメモリ不足とGPUのチップ不足があるのだろう。
メルカリは詐欺の報告が激増しているので、得というより怖いというイメージが定着してしまった。リスクに見合ったリターンなのかは微妙なところだ。
ただ、こうした情報を収集している身としては非常に興味深いところだ。
中古のRTX 2080 Ti本体が海外相場で250ドル未満で買えることを踏まえると、改造費280ドルを足した「DIY総コスト」は約530ドル。一方、他店の完成品(香港セラーなど)は500ドル前後で流通しており、部品から自分で用意するより完成品を買った方が実質お得というねじれた状況になっている。
この手の改造はメーカー非公認・保証対象外のグレーマーケット製品であり、BGAリワーク32個分+BIOS書き換えという工程を一つでも失敗すれば高額な文鎮と化すリスクがある。今回の店舗はSamsung純正チップ・実働テスト済みを謳っているが、あくまで「腕のいい業者に当たれば」という前提であることは強調しておきたい。
抵抗を1個変えるだけで容量が倍になるなら家電量販店で部品を買ってきて自分でやりたくなるが、その前に32個分のBGAリワークとBIOS書き換えという「地獄の工程」が待っている、というギャップが笑える。
「新しいGPUを買う」から「古いGPUのメモリを盛る」へ——2026年のGPU市場は、値上がりの波に押されて時計の針を逆回しにしている。