※画像はイメージです
一体型VRとして2018年5月1日に日本でも発売された低価格VR HMD Oculus GOですが、高性能な一体型VR HMD Oculus Questが発表されました。
発売は2019年の春を予定。
このOculus Questがものすごい反響を得ています。
PCのVR HMDとそう変わらない性能で価格は$399ドルということですから、それも納得です。
※ 廉価版のOculus GOは$199です。(日本円で23,800円)
発表会の会場で価格が発表された時、大きな拍手が沸き起こったようです。
正直言うとPC VRとあまり関係のない一体型VRを取り上げるつもりはなかったのですが、あまりに凄いので取り上げてみたいと思います。
将来的にはPCとも接続できる一体型に進化してくれるとありがたい感じです。
ただ、今後の普及状況によってはOculus QuestがVR世界の覇権を握ってしまう可能性もあります。
それほどのインパクトを秘めた製品です。
当サイトでは全くノーマークだったOculus Goのスペックとも比較してみましょう。
Oculus GO | Oculus QUEST | |
液晶パネル | 1280X1440X2(両目) | 1600×1440X2(両目) |
リフレッシュレート | 60Hz/72Hz | 72Hz |
プロセッサ | SnapDragon821 | SnapDragon835 |
ストレージ | 32GB/64GB | 64GB |
ヘッドホン・マイク | 内蔵 | マイク内蔵・ヘッドホン不明 |
トラッキング | ヘッドトラッキング(3DoF) | 6DoF |
バッテリー | 内蔵(1.5-2.5程度稼働) | 内蔵・詳細不明 |
コントローラー | 付属 | 付属 |
重量 | 468g | 453g程度? |
価格 | \23,800(32GB) /\29,800(64GB) | $399(45,000円程度) |
搭載されているSoCの性能を比較してみましょう
SnapDragon821 | SnapDragon835 | |
CPU | Qualcomm Kyro | Qualcomm Kyro 280 A73 + A53 |
CPUコア数 | 2+2 | 4+4 |
クロック | 2.15/1.6GHz | 2.45/1.9GHz |
GPU | Ardeno530 | Ardeno540 |
GPUクロック | 653MHz | 710MHz |
AnTuTuベンチ CPU | 59,167 | 72,966 |
AnTuTuベンチ GPU | 67,746 | 88,774 |
組み込み向けのSoCというのは搭載される条件などが違って比較するのが難しいのですが、今回は両方ともVR HMDに搭載されていますので、ほぼ同じ条件とみなしてよいでしょう。
Snapdragon821/835はSoC(PCで言えばCPU、GPUとチップセットを内蔵した統合チップ)なので、イメージ的にはGPU性能はinteのUHD620みたいな感じと考えてもらえればよいです。
「じゃあ大したこと無いじゃん」と感じられる方もいると思いますが、プラットフォームの総合的な性能というのは「どれだけたくさんの人が集まって来るか」によります。
普及して大きなお金が動くようになればどんなに性能がショボいプラットフォームでもたくさんの人員を投入して、労力で本来出来ないことでもなんとか表現しようとします。
ローポリゴンでも愛着の持てるキャラクターや世界を作り、一旦それが広まると性能を超えた評価になるということですね。
プラットフォームの性能^マンパワー(かかわる開発者の数)
基本的にはこれがゲームの世界を貫く法則です。
スマホのゲームがあれだけ発表されているのも人が集まってくるプラットフォームだからです。
たくさんの人を食わせて行けるプラットフォームならそこに開発者が大量に投入されるということです。
ゲーム機もそうですが、一旦マンパワーが集まってきたプラットフォームには性能を超えた強さを持ちます。
話が横道にそれました。
特徴的なのはbig.Little構成と言って高性能CPUと省電力CPUの性能が違うCPUコアが2種類あることです。
バッテリーの持ちも性能の一つとされる組み込み向けっぽい構成になっています。
この辺は電力バカ食いのデスクトップPCのプロセッサとは一線を画するところです。
SnapDragon821と835はCPUで1.25倍、GPUで1.3倍くらいの性能差があります。
特にGPU性能が上がっています。
もっともCPUに限って言えばコア数が倍増していますので、マルチスレッド性能はベンチマーク以上の性能差があると思ってよいと思います。
Snapdragon835は高性能になったと評判ですが、比較は難しいですが、GPU部分は単体GPUであるGeforceには当然遠く及ばないです。
Snapdragon821/835が搭載されたスマホでIceStorm Unlimitedを実行して当サイトのベンチマークスコアと比較すれば無理やり比較はできるとは思いますので、該当機種をお持ちの方は試してみると面白いかもしれません。
ただし、GeforceはGTX1060でもグラフィックのスコアが高すぎて適正に評価出来てない可能性がありますのでその辺は考慮に入れてください。
メモリもGDDR系ではなくLPDDRですので、比較するまでもなく遅いです。
ですので、Oculus Questが狙うセグメントがどのあたりになるのかイメージしてもらえるのではないでしょうか。
本来最上位のSnapDragon845が圧倒的に高性能なのですが、その分コストも上がりますので、Snapdragon835を採用しているOculus Questが志向している製品イメージがおおよそ掴んでもらえると思います。
注意点は発表されたばかりですので、不明なところが多い点です。
ストレージも64GB以上の上位版があるのかどうかや重さなどわかっていないところも多いです。
このOculus Questは当然のことながらケーブルがありませんので、正確な位置トラッキングと合わせて10m程度の範囲を動き回ることが可能なようです。
Oculus Questを見るとPC用のVR HMDは「廃れてしまうのではないか」と危機感を抱くような製品になっています。
こうしたデバイスが一旦普及すると、上に上げたようなマンパワーの集中から(PCも含めた)他のデバイスを一掃してしまいます。
Oculus Questのスペックを見ると「これこそが本物のVR HMDなのかもしれない」と思わせるような製品になっています。
もちろんですが、欠点もあります。それは「1からソフトを作る必要があること」です。Oculus GOの時はスマホVRと互換性を持たせてロンチ時に1,000タイトルほどのコンテンツが用意できたのですが、Oculus Questはロンチ時に50タイトルほどしか用意できないそうです。
※ 但し、これでもOculus GOの専用ゲームタイトルと同程度のタイトル数です。
ともかく、これでVRゲームの開発者が漏らした「VR HMDをユーザーに被らせるようなインセンティブを与え続けるソフトを開発するのが難しい」という問題の一つが解決に向けて一歩を踏み出したと言ってもよいです。
面倒なケーブルマネジメントから解放され、VR HMD側でHMDを被るハードルを下げたという意味でエポックな製品だと思います。
本来、こうした製品はPCゲームとは対極にある製品なので、取り扱うのはどうかとも思いますが、その世界に大きな影響を与えるデバイスの情報は知っておいた方がよいでしょう。
2019年はVRの方向性が大きく変わる年になるかもしれません。
ソース:Oculus - Introducing Oculus Quest, Our First 6DOF All-in-One VR System, Launching Spring 2019