当サイトの記事「SSDを支える技術」でもQLC(Quad Level Cell)については触れましたが、intelがついにそのQLCによるコンシュマー向け製品「intel SSD 660p Seires」の発売をしました。
参考記事:SSDを支える技術
インテルのHPではすでに発売済みとなっていますが、この記事を書いている現在ではまだ日本では出回っていません。
スペックをチェックしてみましょう。
Intel SSD 660p Seires
容量 | 512 GB | 1 TB | 2 TB | |
コントローラー | Silicon Motion SM2263 | |||
使用NAND Flashチップ | Intel 64L 1024Gb 3D QLC | |||
接続規格 | single-sided M.2-2280, PCIe 3.0 x4, NVMe 1.3 | |||
DRAMキャッシュ | 256 MB DDR3 | |||
シーケンシャルリード | 最大 1800 MB/s | |||
シーケンシャルライト (SLC cache) | 最大 1800 MB/s | |||
ランダムリード (4kB) | 最大 220k IOPS | |||
ランダムライト (4kB, SLC cache) | 最大 220k IOPS | |||
保証 | 5年 | |||
TBW & DWPD | 100 TB 0.1 DWPD | 200 TB 0.1 DWPD | 400 TB 0.1 DWPD | |
SLC Write Cache(可変) | 最小 | 6 GB | 12 GB | 24 GB |
最大 | 76 GB | 140 GB | 280 GB | |
発売時価格 | $99.99 (20¢/GB) | $199.99 (20¢/GB) | 未定 |
※ DWPDはTBWに対応する一日当たりの書き込み量を表し「 TBW*1,000/365*5(保証年数)*SSDの容量」となります。表の512GBモデルの場合、約51GBほどになります。
また、IOPSはIO per Secondの略で1秒間当たりの読み書き命令の実行回数を表します。ランダムリード/ライトの性能の指標です。
上の様になっています。
シーケンシャルリードとライトが同一の値になっているのはSLCキャッシュを利用しているためです。
QLCはTLCよりもさらに低速なため、その性能はSLCキャッシュの性能に依存しています。
SLCキャッシュは可変で、現在のテスト方法では容量を正確に把握することは出来ないそうです。
どうもこの可変SLCキャッシュはフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして利用するので可変のようですね。
ドライブがほとんど空の場合、約半分がSLCキャッシュとして利用されるようです。
そのため、速度はSLCキャッシュが切れるとガクっと落ちるようです。
ベンチマークテストではSLCキャッシュが切れて100MB/s程度まで速度が低下する場面が何度があったようですが、通常の使用においてそうなる可能性は極めて低いようです。
「書き込みデータはQLC部分に配置される前に圧縮されてSLCキャッシュに送られる」とあります。
この仕組みを見ると、やはりSSDは半分ほどは容量を残しておいた方が良いでしょう。
最大1800MB/sとあるのはSLCキャッシュが効いている場合の速度です。
最新のSSDに使われている技術というのは凄いですね。
耐久性に関してはTLC採用SSDであるWestern Digital「WD Black PCIe」シリーズの同容量モデルが160TBWですので、62.5%程ということになります。
しかし、保証期間は5年ですので、普通の使い方をする分には問題がないということなのでしょう。
NVMeの512GBで99ドルは日本円に直すと10,395円ほどとなり同容量・同規格のTLCの約半分の価格ということになります。
上記のようなキャッシュ技術が使われていることも合わせて、価格と用途をよく考えて選択したほうがよいでしょう。
知らないと何か騙された気分になるかもしれませんが、よく理解して賢く利用しましょう。
これだけ安いと恐らく、ゲーミングPCのオプションにも降りてくるものと思います。
再び考えたい「コスト」と「信頼性」の関係
上で説明してきた通り、QLCは一部のセルをSLCキャッシュとして利用することによって性能を確保しています。
空き容量が少なくなればキャッシュの容量も少なくなり、性能や耐久性に影響が出ます。
ここをまやかしと見るか技術の進歩と見るかでその評価が変わってきます。
容量当たり1/2のコストで妥協した製品(QLC)を使うか、倍の金額を払うか(TLC)です。
民生用としては問題ない性能を持っているから発売されたわけですが、これが許せない人もいるでしょう。
信頼性や耐久性のためにどのくらいのコストを支払う覚悟があるのか?
そういった判断は自分がどんなふうにPCを使っていくのかという問題で、他人に聞いて答えの出る問いではありません。
私が過去に何度も例に挙げてきたように信頼性や耐久性を重視すればコストが跳ね上がります。
自分はそこにどんなふうに資金を割りあてるのか?QLCのSSDが発売されたことを機会として、もう一度よく考えてみましょう。
コスパ・コストパフォーマンスという言葉がありますが、これはその特性や性能をきちんと理解している人のみが使える言葉ではないかと思います。
QLCが許せるのか許せないのか?人によって答えは違うと思います。
メーカーのスタンスはQLC SSDをエンタープライズ向けとしても出荷しており、大容量低価格化を志向する市場の要求に応えた形でしょう。
全ての人が理解しておいてほしいのは製造プロセスが微細化すればフラッシュメモリの耐久性能は落ちていき、その問題の解決にはある種の妥協が必要ということです。
QLC SSDの登場によってHDDは駆逐されるか?
QLC SSDの登場によってSSDの大容量化がますます進んでいくものと思います。
将来的にはデータストレージ向けのSSDなるものも登場するかもしれません。
現在、SSDの特性からデータストレージはHDDが望ましいとされていますが、SSDは物凄い勢いで進化しており、将来的にはHDDに取って代わる可能性も0ではないでしょう。
PC関連で今一番進化しているデバイスと言ってもよいかもしれません。
昔はフロッピーディスクというものがあって、その手軽さと他のメディアとの速度差からパソコンのストレージの主役でしたが既に生産停止になってしばらく経ちます。
昔からパソコンを使っている方は懐かしい話ではないでしょうか?
今は情報教育の教科書中にのみ出てくるか博物館にでも行かないとその姿を見ることが出来ないかもしれません。
将来においてはHDDもそのような道をたどる可能性は0ではないでしょう。
ソース: Anandtech - The Intel SSD 660p SSD Review: QLC NAND Arrives For Consumer SSDs