■事実
製品概要・発表タイミング
2026年5月15日、ASUS Republic of Gamers(ROG)が台湾・台北よりROG NUC 16を正式発表されました。
前モデルROG NUC 2025(Core Ultra 9 275HX搭載)の後継機にあたり、同社の「最速ゲーミングミニPC」と位置付けられています。
現時点の販売開始は中国市場向けが先行しており、グローバルプレスリリースは未発行です。
NUCブランドはもともとIntelが開発した小型PC規格で、2023年にASUSがライセンス取得し運営継続しています。
CPU
搭載CPUはIntel Core Ultra 9 290HX Plusです。(Arrow Lake HXリフレッシュ世代)
コア構成はPコア8基(最大5.5GHz)+Eコア16基(最大4.7GHz)、計24コア24スレッドでする
L2キャッシュ40MB、L3キャッシュ36MB、NPU 13 TOPSでする(Int8)
275HXとの比較(PassMark)はマルチスレッドで約18%、シングルスレッドで約6%高速です。
アーキテクチャは275HXと基本同一(Arrow Lake HX)だがダイ間接続速度が向上(+900 MHz)しており、実性能向上幅は一桁台パーセントにとどまる見通しです。
製造プロセスはCPUタイルはTSMC N3B(3nm)、GPU/SoCタイルはTSMC N5P・N6、ベースタイルはIntel 22nmです。(Foveros 3D実装)
GPU・AI性能
最上位モデルにNVIDIA GeForce RTX5080 Laptop GPUです。(GDDR7 16GB)を搭載
GPU選択肢はRTX5080 / RTX5070 Ti / RTX5070 / RTX5060の4モデル、いずれも同じCPUでする
NVIDIA DLSS 4.5(Multi Frame Generationを含む)に対応しています。
システム全体のAI処理性能は最大1,334 AI TOPSとASUS公表しています。(RTX5080構成時)
3DMark Time Spy比較でROG NUC 2025比約2.3%のグラフィックス性能向上を主張しています。
メモリ・ストレージ
CSODIMM DDR5-6400デュアルチャネル、最大128GBです。(ユーザー増設対応)
工場出荷構成は最大64GBまでです。
M.2スロットはPCIe 5.0×1、PCIe 4.0×2です。(合計最大9TB、単スロット最大4TB)
SSD専用ヒートシンク搭載、動作温度59℃を実現しサーマルスロットリングを抑制します。
I/O・ネットワーク
背面にThunderbolt 4 Type-C×1、USB 3.2 Gen2 Type-A×4、HDMI 2.1×2、DP 2.1×2搭載しています。
前面にUSB 3.2 Gen2×3、3.5mmオーディオジャックを搭載しています。
ネットワークは2.5GbE LAN、Wi-Fi 7+Bluetooth 5.4です。
最大5画面出力(4K×5)に対応しています。
冷却・電源・筐体
新冷却技術「QuietFlow Cooling」を採用し102×102×17mmファン×3基+デュアルベーパーチャンバーを搭載しています。(熱カバレッジ72%)
CPU熱容量をROG NUC 2025比12%向上、高負荷持続時でも38dB(A)以下の騒音水準しています。
電源アダプタは380W(20VDC / 19A)、ROG NUC 2025比で出力15%増・重量18%軽量でする
筐体サイズは282.4×189.5×56.5mm(容積約3リットル)、重量3.12kgです。
着脱式スタンド採用し、縦・横どちらでも設置可能。内蔵G-センサーが向きを自動検出して冷却設定を最適化しています。
価格・発売情報
中国先行発売:Obsidian Black(黒)が29,999元(約64万円)、Moonlight White(白)が30,499元(約65万円)です。
米国向け価格はwccftechなど複数メディアが$4,400〜$4,500と報道(正式未発表)されています。
ROG NUC 2025の中国発売価格は24,399〜24,999元、米国では後に$3,199に設定された経緯があります。
比較表:ROG NUC 2025 vs ROG NUC 16
| 項目 | ROG NUC 2025 | ROG NUC 16 |
|---|---|---|
| CPU | Core Ultra 9 275HX | Core Ultra 9 290HX Plus |
| CPUブーストクロック(P-core) | 最大5.4GHz | 最大5.5GHz |
| 最大GPU | RTX5080 Laptop(16GB) | RTX5080 Laptop(16GB) |
| 最大メモリ | 96GB DDR5-6400 | 128GB DDR5-6400 |
| M.2スロット | 記載なし(2スロット) | PCIe 5.0×1 + PCIe 4.0×2 |
| 電源アダプタ | 約330W | 380W |
| 冷却 | 3ファン+ベーパーチャンバー | 3ファン+デュアルベーパーチャンバー(72%カバレッジ) |
| 騒音 | 非公表 | 38dB(A)以下 |
| 筐体 | 282×188×56mm / 3.12kg | 282.4×189.5×56.5mm / 3.12kg |
| 中国発売価格 | 24,399〜24,999元 | 29,999〜30,499元 |
| 米国価格 | $3,199(実績) | $4,400〜4,500(推定) |
解説
アップデートの中身をどう見るか
最大の変化はCPUがCore Ultra 9 275HXから290HX Plusに変わった点だが、これは「Arrow Lake HXリフレッシュ」と呼ばれるマイナーアップデートで、アーキテクチャ自体に変化はない
PassMark実測でマルチスレッド+18%は見た目より大きい数値だが、これはPassMarkというツールの特性もあり、実際のゲームフレームレートへの影響はより小さいとみるのが妥当
GPU側は前モデルと同じRTX5080 Laptop GPUのまま据え置き。実質的なゲーミング性能の主役はGPUなので、ゲームベンチの差は数パーセント以内に収まると予想される
実ゲーム性能よりも冷却系の改良(デュアルベーパーチャンバー、72%熱カバレッジ)と電源容量の増強(380W)のほうが長期的な安定性への貢献度は高い
「GPUはそのままでCPUだけ変えてきた」という構成は正直地味だが、3リットル筐体でこれ以上の冷却を実装するには物理的な限界もあり、メーカー側の選択肢は実は少ない
価格上昇をどう見るか
ROG NUC 2025の米国価格$3,199から$4,400〜4,500への値上げは約37〜40%増にのぼる。
ハードウェアの進化幅(CPU小刻みリフレッシュ、GPU据え置き)に対してこの価格差は大きく、割高感が否めない。
一方でROG NUC 2025の実勢価格がAmazonで$2,349〜$4,233と幅広い状況(構成差と流通在庫の混在)を見ると、ROG NUC 16の発売によって前世代の在庫整理も進むとみられる。
個人的には、$4,400という価格帯は「ゲーミングミニPCとしての合理性」を逸脱しつつあると感じる。同額でRyzen 7 9800X3DとRTX5070 Tiを組めばゲームではまず勝てないセルフビルドPCが作れてしまう。
ただし、「3リットルという物理サイズに価値を感じられるか」が全て。スペック論では語れない需要層が存在することは否定しない。
ゲーミングミニPCという市場
ASUSがNUC事業を引き継いで以降、ROG NUC、GR70(AMD版)と展開を広げ、Minisforum AtomMan G7シリーズなどの競合も台頭してきた。ゲーミングミニPCは2026年に明確なカテゴリとして定着しつつある。
ただしMinisforum AtomMan G7 Proが$1,360(ベアボーン)〜$1,680(完成品)でRTX5070 Laptopを提供している事実を考えると、ROG NUCの価格設定はブランドプレミアムを含んでいると解釈するほかない。
「コンパクトなのに$4,400」という事実を聞いたら、財布の中身もコンパクトになる。
DLSS Multi Frame Generationの扱い
発表資料でDLSS 4.5・Multi Frame Generationを大きく推している点は要注意だる
フレーム生成技術は補間(補完)であって外挿ではないため、生成されたフレームには新しいプレイヤー入力が反映されない。レスポンシブネスはネイティブレンダリングレートに縛られたままだ。
コンパクトな筐体のGPU性能をフレームレート数字で大きく見せる手法として使われる可能性があり、「DLSS込みの数値」と「ネイティブ描画の数値」を分けて評価することが重要だ。
今後の展開
現時点ではグローバル展開が未発表で、実質中国先行ローンチで、米国・日本の正式価格と発売時期は不明だ。
次の本命アップデートは「Intel Nova Lake(Core Ultra 400番台)」搭載版になるとみられ、2026年末〜2027年初頭に登場する可能性がある。それまでは290HX Plusが最上位だ。
ROG NUC 16は「進化した」より「仕上げた」という表現が近い。前モデルの冷却・電源の弱点を補い、CPUを最新リフレッシュに換装した、堅実な改良版だ。
ハイエンドゲーミングミニPCのコンセプトアート。ドラマチックなスタジオ照明の下、RGBアクセントと冷却ベントを持つ洗練されたブラック筐体。シネマティックなプロダクト写真スタイル(参照用)