AMDのCEOリサ・スー氏は、同社の2025年度第4四半期決算説明会において、「MicrosoftとAMDのセミカスタムSoCを搭載した次世代Xboxの開発は、2027年の発売を支援するために順調に進んでいる」と明言した。
これはAMDのトップが公の場で次世代Xboxの2027年発売を明確に支持した初めての発言であり、業界内外で大きな注目を集めている。
次世代Xboxのチップは「Magnus」というコードネームで開発が進められており、AMD Zen 6とZen 6cのCPUコアおよびRDNA5ベースのGPUを組み合わせたAPUとなる見込みだ。
リーカーのMoore’s Law is Dead(MLID)によれば、Magnusに搭載されるGPUダイは、2027年にデスクトップ向けに登場するRDNA5フラッグシップGPUと「文字通り同一のチップ」であるとされている。
ただし、Xbox向けのMagnusに搭載されるダイはフラッグシップ仕様ではなく、ミドルレンジに相当するものになると見られている。
リーク情報によれば、MagnusはGPU向けに少なくとも24MBのL2キャッシュを搭載し、192ビットのメモリバスと最大48GBのGDDR7メモリを持つ可能性がある。
GPUのコンピュートユニット数は68 CUと報告されており、これはPlayStation 6(PS6)向けAPU「Orion」の52〜54 CUを上回る数字だ。
MLIDはさらに、Magnusのシリコン設計は実質的に完成しており、テスト用試作機がすでに製造に向けて動き出していることを明かした。
この進捗状況から、2027年後半の発売は「スケジュールより前倒しで進んでいる」と評価されている。
一方でWindows Centralなどの報道では、Microsoftが2027年の発売日をまだ確定させていないという情報も伝えられており、同社はXboxをより完全なWindowsPCに近い環境へと整備するためのソフトウェア面の準備に追加の時間を必要としているとも言われている。
■RDNA5チップレットの共有設計がPC市場へのインプリケーションを確定
RDNA5が次世代Xboxのコンソール向けだけでなく、デスクトップおよびノートPC向けRadeon RXシリーズにも展開されることが、今回のリサ・スー氏の発言によって事実上確認された形となった。
これはチップレット設計の共有に基づいており、コンソール向けとPC向けで基本ダイを流用することでAMDはコスト効率と開発リソースの最適化を図っている。
リーク情報によれば、RDNA5のフラッグシップ向けと見られる「AT2」ダイは最大64 CUを搭載し、18GBのGDDR7メモリを組み合わせると報告されている。
さらに大型の構成については、154 CUに達する「ビッグRDNA5」というリーク情報も存在している。
RDNA5は製造プロセスにTSMCのN3Pノードを採用するとされており、前世代比で最大18%の性能向上と36%の消費電力削減が見込まれている。
アーキテクチャ面では、RDNA4と比較してCU当たりのIPCおよびラスタライズ性能が約10%向上し、レイトレーシング(RT)性能はCU当たりで2倍以上に強化されると伝えられている。
これらの仕様が現実のものとなれば、現在のRDNA4に対して2〜3倍の総合性能向上が期待できるとも試算されている。
複数のリーカーの情報を総合すると、RDNA5のPC向けGPUはComputex 2027での発表、その後2027年中盤のリリースが有力視されている。
■NVIDIAは2027年に反撃できるのか——RTX6000シリーズの行方
AMD RDNA5の2027年展開が現実味を帯びる中、NVIDIAのGeForce RTX60シリーズの動向が焦点となっている。
「Rubin」アーキテクチャを採用するRTX60シリーズについては、当初2027年前半の発売を示すリーク情報が複数存在していた。
しかし最新の報道では状況が変化しつつある。
The Informationなど複数のメディアが報じたところによれば、NVIDIAは2026年中に新たなゲーミングGPUを一切発売しない方針であり、RTX60シリーズも2027年後半から2028年へとずれ込む可能性が高いとされている。
この遅延の主因として指摘されているのが、現在進行中のDRAM危機だ。
RTX5000シリーズ向けに計画されていた「Super」リフレッシュモデルも、GDDR7メモリの3GB/モジュール品の不足を理由に無期延期となっており、この影響がRTX60シリーズにも波及している。
RTX5090がすでに600Wという高い消費電力で動作していることを考えると、仮にRTX5090のTiモデルや性能強化版を投入したとしても、せいぜい20%程度の性能向上にとどまるという見方が多い。
パフォーマンス面では、RTX6090はRTX5090比で少なくとも30〜40%の性能向上が見込まれており、価格については2,000〜2,500ドル、場合によっては3,000ドル超との予測も出ている。
GR20xシリーズとして体系化されるRTX60シリーズのラインナップはGR202からGR207までが予定されており、RTX5000シリーズの対応チップをそれぞれ引き継ぐ形となる見通しだ。
NVIDIAはこの状況についてコメントを求められた際、「GeForce RTX GPUへの需要は強く、メモリ供給は逼迫している。すべてのGeForce SKUを継続出荷しており、メモリの可用性を最大化するためサプライヤーと緊密に協力している」と述べるにとどまっている。
■PS6は2027年の次世代コンソール戦争に参戦するのか
リサ・スー氏の発言はXbox Magnusの進捗だけでなく、PlayStation 6(PS6)の発売タイミングに関する議論も再燃させた。
MLIDが入手した文書によれば、PS6は2027年中盤に製造を開始し、2027年秋から2028年初頭にかけて発売される計画が少なくとも一時点では存在していた。
PS6ポータブル(ハンドヘルド版)のダイサイズは135mm²と非常にコンパクトで、製造コストが低く抑えられる設計となっている。
PS6の搭載スペックについては、コードネーム「Orion」のAPUにRDNA5ベースのGPU(52〜54 CU)、Zen 6 CPU、160ビットメモリバス、最大40GBのRAMサポートという構成が報告されている。
一方でソニーの元幹部や業界アナリストの中には、PS6の最終的な発売は2028年以降になるとの見方も少なくない。
MSの元資料や規制当局への提出文書では、次世代コンソールの発売を「2028年」と想定した記述が存在していたことも確認されている。
コンソール競争の観点からは、XboxとPS6が同年に登場すれば、Nintendo Switch 2(2025年)とあわせ、2025〜2027年にかけて主要プラットフォームがほぼ一斉に更新されるという、近年では例のない状況となる。
解説
今回のリサ・スー氏の発言、正直かなり重要だと思います。
これまでRDNA5とXbox Magnusの関係はリーク情報の域を出ていませんでしたが、AMDのCEOが決算説明会という公式の場で「2027年発売を支援するために順調に進んでいる」と明言したのは別次元の話です。
要するに、「RDNA5は2027年にコンソールだけでなくPCにも来る」がほぼ確定したと見ていいでしょう。
個人的に面白いと思うのはチップレット共有の話です。
コンソール向けと同一のダイをデスクトップGPUに転用するというアプローチは、TSMCのN3Pという高価なプロセスの開発費用をコンソールとPC両市場で分散できるという意味で、AMDにとって非常に合理的な戦略です。
RDNA4でAMDはIntelのBattlemage相手に善戦しましたが、RDNA5の性能予測が正しければNVIDIAとの差を大幅に縮める、もしくは逆転できる可能性があります。
154 CUで10% IPC向上、RT性能は2倍以上——これが実現すればRTX5090を30〜50%上回るという計算になります。
問題はNVIDIAがそれに対してどう動くかですが、正直なところ状況はNVIDIAにとって厳しいです。
RTX50シリーズのSuperモデルすら出せていない現状で、RTX60シリーズが2028年にずれ込む可能性が高まっています。
NVIDIAがゲーミング市場で完全に受け身になるというのは、少なくとも過去10年では記憶にないことです。
ただ、NVIDIAは競合がハイエンドで動きを見せるタイミングで必ず何らかの対応策を打ってきた会社です。
6060や6070などのミドルレンジを先行して出してくる可能性や、RTX5090の在庫最適化で市場シェアを維持しながら時間を稼ぐというシナリオも考えられます。
PS6については「2027年に出すべきか」という問いが本当に難しい。
Xboxが2027年に$1,200近い高価格帯で登場するなら、PS6が同年または近い時期に出て「もっと手頃な次世代機」というポジショニングをとるのは理にかなっています。
ただ、SonyがXboxに対して以前ほど意識的に反応しなくなっているのも事実で、PS5がPlayStation歴代最速ペースで売れ続けている現状を考えると、急ぐ必要はないという判断もあり得ます。
個人的には、PS6ポータブルを先行して2027年に出し、メインのPS6は2028年という「分割投入」戦略が最もソニーらしいシナリオかと見ています。
135mm²というダイサイズの小ささはコスト面で非常に有利ですし、Nintendo Switch 2の成功を見れば、ポータブル市場への早期参入は理にかなっている。
いずれにせよ、2027年はGPU業界とコンソール業界が同時に世代交代を迎える、過去にないほど慌ただしい年になりそうです。
DRAM危機がどこまで引っ張るかが最大の不確定要因ではありますが、その影響がAMDよりNVIDIAを直撃しているという現状は、今の時点ではAMDに有利に働いています。
■追記(2025年2月17日)
なお、本記事の公開後、Bloombergが「SonyはPlayStation 6の発売を2028年または2029年に延期することを検討している」と報じた。
メモリ供給の逼迫が主な要因とされている。
本記事で紹介したMoore’s Law is Deadによる「2027年中盤製造開始・同年秋〜2028年初頭発売」というシナリオは、今朝のBloombergの報道とは情報源が異なる点をお断りしておく。
MLDが入手した文書はあくまで「かつての製造計画」を反映したものであり、足元のDRAM危機を受けてSony側の意思決定が変化している可能性は十分にある。
PS6の発売タイミングについては、引き続き続報を注視していきたい。
画像プロンプト1: 【英文】Futuristic semiconductor chip design render showing an advanced AMD GPU chiplet architecture with glowing circuit traces, a sleek silicon die with visible compute units, dark background with blue and red accent lighting, photorealistic product visualization 【日本語】次世代AMDのGPUチップレットアーキテクチャを表現した未来的な半導体チップのレンダリング。発光する回路トレースとコンピュートユニットが視覚化されたシリコンダイ。青と赤のアクセントライトが映える暗背景の製品ビジュアライゼーション
画像プロンプト2: 【英文】Three next-generation gaming consoles side by side — a sleek black Xbox console, a white PlayStation 6, and a colorful Nintendo Switch 2 — arranged on a dark gaming desk with soft studio lighting, product photography style 【日本語】次世代ゲーム機3台(Xbox Magnus、PlayStation 6、Nintendo Switch 2)が並んで展示されたシーン。暗いゲーミングデスクにソフトなスタジオ照明を当てたプロダクト写真スタイル