■事実
### データの出典とアプローチ
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データはドイツのハードウェア情報サイト3DCenterによる月次「Speicherkrise Preisindexです。(メモリ危機価格指数)」です。
ドイツの価格比較サイトGeizhalsの小売最安値を追跡。eBayおよびAmazon Marketplaceの出品は除外(転売業者を排除するため)しています。
計測対象:DDR5、DDR3/4、SODIMM、内蔵SSD/HDD、外付けHDD、グラフィックスカードの各カテゴリです。
基準値(指数100%)は2025年7月(グラフィックスカードのみ2025年9月を基準)です。
ドイツは欧州最大のPC消費市場のひとつで、Geizhalsの発達した価格比較文化により、市場の動きが数値として正確に可視化されています。
### 2025年7月〜2026年4月の価格推移
2025年7〜10月:緩やかな上昇(100%→145%程度)が見られています。
2025年11月〜12月:急騰。月次増減率は11月→12月で約+93%という急激な上昇を記録しています。
2026年1月:ピーク。2025年7月比で平均+340%(4.4倍)。月次増減は+27.6%に鈍化しています。
2026年2月:上昇がほぼ停止。月次増減+0.1%と事実上の横ばいとなっています。
2026年3月:2025年7月以降初の「明確な値下がり」を記録、月次で平均−7.2%低下し、4.1倍(+308%)へ向かいました。
2026年4月:3月の下落を打ち消す形で再上昇し、現在は2025年7月比で約410%(4.1倍)の水準となりました。
### 4月の値動きの特徴
DDR5全体の平均では横ばい〜微増にとどまるが、個別製品では明暗が分かれています。
一方で値下がりした製品も複数存在し、キット単位での分散が大きくなっています。
「大容量=値上がり幅が大きい」とは一概に言えなくなっており、過去に16GBや32GBキットが48GBより急激に上昇した事例もあります。
2x48GB DDR5-6400が最大の値上がりを記録しています。(記事内で最も言及された品番)
### 構造的背景:なぜメモリが高いのか
2025年末時点での長期契約終了後、ベンダー向けメモリIC価格が急騰し、モジュールメーカーが価格転嫁を余儀なくされています。
MicronはDDR4の新規生産を事実上打ち切り、DDR4不足も同時進行中です。(2025年10月比で32GB DDR4キットが約2〜3倍に)
ハイパースケーラー(クラウドを運営する巨大テック企業)が買占め的に在庫確保を行い、小売市場への流通量をさらに圧迫しています。
根本原因はAIデータセンター向けの大量需要。Samsung、SK hynix、Micronの大手3社がAI向けHBM(高帯域メモリ)およびサーバー向けDDR5の生産を優先し、コンシューマー向けDRAMの生産割り当てを縮小しました。
IDC(調査会社)推計はAIサーバー1台のメモリ搭載量は一般PCの数十倍で、AIインフラ拡大がDRAM需給を根本から変えています。
### 今後の見通し
FrameworkやLenovo、Dell、HPなどのメーカーが一斉にPC本体価格の15〜20%引き上げを警告しています。
Valveの公式Steam Machine発売が「RAM不足が解消されるまで価格・日程を確定できない」と公式説明しているのも、この同一の問題に起因しています。
業界予測の最悪ケースは不足は少なくとも2027年第4四半期まで継続の可能性を示唆しています。(WCCFTech, TeamGroup幹部発言)
軟着陸シナリオは2026年後半に新規生産ラインの立ち上がりが見込まれ、その場合は価格上昇が一服する可能性があります。
解説
「3月の下落は希望の光だった」と書いた記事が1ヶ月後に「でも4月に戻りました」という後日談になる展開は、メモリ市場が記者の原稿を読んでいるかのようだ。
2026年のPC自作において、最もコスパが悪い行動は「待つこと」かもしれない。ただし最もコスパが良い行動を見極めるのが、今は本当に難しい。
3月の下落は「第一次反転」として注目を集めたが、それが1ヶ月で打ち消された。「下げ止まりかも」と思ったタイミングで逆に買えなかった人が報われない展開だ。
410%という数字の実感は2025年7月に€75で買えた標準的な2x16GB DDR5-6000キットが、今は€300以上になっている計算だ。
個別製品によって値動きが分散しているのは、転売と在庫の偏りを示している。「一時的な値下がり」は需要の弱さではなく、特定在庫のはけ方に過ぎない可能性が高い。
「待てば下がる」という過去の常識が通用しない。業界予測が2027年まで高止まりを示す中、延期戦略のコストが上がり続けている。
DDR4にも飛び火しており、「DDR4に逃げれば安い」という逃げ道が塞がれつつある。
3社寡占(Samsung・SK hynix・Micron)が実質的にコンシューマー市場の価格を支配している構造。AIハイプが続く限り、大手がコンシューマー向けを優先する動機が生まれない。
Valve Steam Machine問題は、この価格危機の「わかりやすい被害事例」として引用できる。PCを買う個人だけでなく、製品を出したいメーカーも同じ壁に当たっている。
当サイトでも以前から指摘している通り、TurboQuant騒動などで一時期値下がりしたが、根本の供給不足が改善していないので当面価格は下がらない。
下がり始めるのは早くても今年の末くらいだろう。
ソース:
- https://www.3dcenter.org/artikel/speicherkrise-preisindex-april-2026