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PS5が約1年で2度目の値上げ——アナリスト「MicrosoftとNintendoも続く可能性」

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■事実

Sonyが3月27日、PlayStation 5・PlayStation 5 Pro・PlayStation Portalのグローバル価格引き上げを発表した。 新価格は2026年4月2日から適用される。 今回の値上げは、フランスの小売業者がリークしたことで前日にすでに情報が漏れており、公式発表はその確認という形になった。

米国での変更は以下の通りだ。

モデル 旧価格 新価格 変動
PS5(ディスク版) $549.99 $649.99 +$100(+18%)
PS5デジタルエディション $499.99 $599.99 +$100
PlayStation 5 Pro $749.99 $899.99 +$150
PlayStation Portal $199.99 $249.99 +$50

英国では各モデルが90ポンド(約1万8千円相当)の値上げとなり、欧州でも同規模の引き上げが実施される。

Sonyはこの決定について「グローバルな経済環境における継続的な圧力を受けた、やむを得ない措置」と説明している。

今回の値上げはSonyにとってほぼ1年以内に2度目となる。 最初の値上げは2025年8月に実施され、各モデルが50ドル引き上げられた。 つまりPS5デジタルエディションは発売時の399ドルから599ドルへと、5年間で50%もの値上がりとなる計算だ。

メモリ価格高騰が引き金に

値上げの根本的な原因は、AIインフラ向け需要の急増によるDRAM・NAND型フラッシュメモリの価格高騰だ。

OpenAIをはじめとするAI企業がSamsung・SK HynixといったメモリメーカーとAIデータセンター向けの優先供給契約を相次いで締結した結果、コンシューマー向けメモリの供給が大幅に圧迫されている。

2025年には主要なPC向けDRAM・SSD価格がそれぞれ平均約100%・40%上昇したとされ、2026年第1四半期だけでもDRAMがさらに60%・NANDが70%上昇するとの予測もある。

市場調査会社TrendForceの分析では、2026年にはPS5・Xbox SeriesのBOM(部品原価)においてメモリが35%以上を占めるとされており、Nintendo Switch 2でも21〜23%に達する見込みだ。

Switch 2向けの12GB LPDDR5Xモジュールはすでに前四半期比41%の価格上昇が確認されており、任天堂の株価はこの報道を受けて時価総額ベースで一時約14億ドルを失った。

Sonyはこのメモリ価格上昇に備えるため、一定期間の価格保護条項を含んだ調達契約を結んでいたとみられるが、その期間が終了したと考えられている。

Sonyは2026年2月の決算説明会においても、メモリコスト上昇の影響を既存のPS5ユーザー基盤の収益化拡大とソフトウェア・ネットワークサービス収益の向上で吸収する方針を示していた。

なお、Switch 2のゲームカード(物理メディア)にもフラッシュメモリが使われており、NANDの高騰はソフトウェア側の製造コストにも波及している。 業界調査会社Omdiaは「NANDの価格上昇を受け、大量出荷タイトルではデータなしゲームキーカード(Game-Key Card)の採用がさらに広がる」と分析している。

Valve(Steam)のSteam Machineプロジェクトも、メモリ価格高騰の影響で計画修正を余儀なくされたとの報道があり、コンシューマー向けゲームハードウェア全体がこの問題の煽りを受けていることがわかる。

アナリスト「MicrosoftとNintendoも追随する可能性」

Ampere Analysisのゲームリサーチディレクター、ピアーズ・ハーディング=ロールズ氏はEurogamerへのコメントで次のように述べた。

「AIインフラ需要を背景にメモリ価格の緩和の兆しは見えない状況で、Sonyはハードウェアの薄い利益率を守るために今回の決定を下した。MicrosoftとNintendoが近い将来に追随しても驚きではない。」

また同氏は、中東情勢が追加的なインフレ圧力をもたらす可能性についても言及した。

「中東の紛争により新たなインフレの波が予想されており、これがコンポーネント価格上昇の影響をさらに複合させるだろう。今回の値上げ規模に影響を与えた可能性があるほか、Sonyが再び価格引き上げを行う可能性もある。」

Microsoftはすでに今世代でXbox Series X/Sの価格を複数回引き上げており、今回のSony値上げはさらなる引き上げの前触れとなる可能性がある。

Nintendo Switch 2は2025年に449.99ドルで発売されて以来、価格を維持してきた。 任天堂の古川俊太郎社長は株主向けに「RAMコストの状況を注視しているが、現時点でSwitch 2の収益への直接的な影響はない」としつつも、値上げを否定はしていない。

ゲーム市場全体への波及

ハーディング=ロールズ氏はゲーム市場全体への波及にも懸念を示した。

「コンソールおよびAAAのPCゲーム市場は新規プレイヤーの参入と市場モメンタムをハードウェア投資に依存している。これが弱まれば新作ゲームへの需要も軟化するおそれがある。」

TrendForceは2026年のグローバルゲームコンソール出荷台数が前年比4.4%減少すると予測しており、当初見込みの3.5%減から下方修正されている。

2026年末にはGrand Theft Auto VIの発売が控えており、このタイトルがシステムセラーとして機能することでハードウェア投資を押し上げるとの期待もある。 SonyとMicrosoftいずれも「このシステムセラーの恩恵を最大限に活かしたい」と考えており、ハードウェアの値上げはその戦略と相反するとハーディング=ロールズ氏は指摘する。

今世代機の発売から5〜6年が経過した中で、一定数のコンソールは物理的な故障による買い替えが必要になる段階に入っている。 ゲームメディアThe Game BusinessのクリスDring氏は「発売5年を超えたコンソールが故障し始める時期に値上げが重なることの深刻さ」を指摘している。 これは「欲しい人が高くても買う」という話だけでなく、「壊れたから仕方なく買い替える層が値上げに直撃される」という構造的な問題でもある。

なおコンソールが発売から5〜6年経過しても値上がりが続くという状況は、コンソール市場の歴史において前例がない。

解説

正直、これはゲーム業界にとって構造的な転換点と言っていい。

「コンソールゲームはPCゲームより安上がり」というのは長年の常識だったが、PS5デジタルエディションが発売時399ドルから599ドルへと5年で50%値上がりした今、その前提は崩れつつある。

今回の問題の核心はメモリだが、その背後にいるのはAI産業だ。 OpenAI・Meta・MicrosoftといったAIプレイヤーが世界のDRAM生産の大部分を抑えてしまい、コンシューマー機器向けの供給が後回しにされている。 ゲーマーはある意味で、AI開発競争のコストを間接的に負担させられている形だ。

この構図の皮肉なのは、MicrosoftがOpenAIに約27%出資するAIの主要プレイヤーでありながら、同時にXboxというゲームコンソールを売る立場でもある点だ。 AI需要がメモリを逼迫させ、自社のゲームハードの原価を押し上げるという、自らが引き起こした問題に自らが直撃されている格好だ。

Nintendoの立場は特に難しい。 Switch 2はまだ発売から1年も経っていないプラットフォームで、本来はユーザー基盤を広げる最重要時期だ。 値上げはその勢いをそぐ一方で、メモリコストの転嫁を無視し続ければ採算が成立しなくなる。 任天堂社長が「注視している」と言いながら値上げを否定しなかったのは、かなりシグナルの強いコメントだったと個人的には受け取っている。

Xbox Series X/Sについても触れておきたい。 Microsoftはすでに複数回の価格引き上げを実施しており、ゲーム市場全体での存在感が低下している中でのさらなる値上げは、ユーザー離れをさらに加速させるリスクがある。 Xbox Game PassというサブスクリプションサービスでPCとの統合を進めるMicrosoftにとって、コンソールハードウェアの価格は以前ほど死活問題ではないかもしれない。 しかし「自分たちだけ値上げしない」という選択肢も、メモリコストの現実が許さないだろう。

Sonyの判断には同情の余地もある。 今世代機においてメモリはBOMの35%以上を占めており、数千万台規模の製造でその価格上昇分をすべて吸収するのは事業として持続不可能だ。 とはいえ、一般ユーザーにとって「5〜6年目のハードが発売時より高い」という状況は受け入れがたい。

もう一つ、値上げの背景として忘れてはいけない構造的な問題がある——通貨の価値そのものが失われているということだ。

私たちはつい「値段が上がった」という見方をしがちだが、本質的には「自分たちが持っている通貨の価値・信用が棄損している」という側面が大きい。 日々の生活に追われていると、この変化にはなかなか気づけない。 価格という形で目に見えてくるまでに、すでに通貨の価値はじわじわと削られているのだ。

稼いだ収入をすべて生活費に回さざるを得ない人がいる一方で、投資によって資産を増やし、さらに上昇する資産へ再投資してその総量を拡大していく人もいる。 この資産格差・金融リテラシー格差が、コンソール価格への許容度の差にも直結している。

国家の借金は増え続け、市場に出回るお金の総量も増え続ける。 そうなれば起きることは一つ——通貨価値の下落だ。 とりわけ戦争が起きれば、通貨よりも現物資産に価値が集まる傾向が強まる。 中東情勢が加速させると懸念されているのは、単なるコンポーネント調達コストの話ではなく、こうしたマクロな通貨価値の問題でもある。

コンソールが「高くなった」のではなく、「私たちの通貨で買える量が減った」という見方をすると、この問題はゲーム業界だけの話ではないことがわかる。

コンソールゲームの「手頃な娯楽」というポジショニングが崩れれば、長期的にはプレイヤー人口そのものが縮小しかねない。 メモリ価格が市場予測通り2027〜2028年まで高止まりするなら、PS6・次世代Xboxの価格はさらに深刻なことになるだろう。 AIの恩恵を直接受けていない一般ゲーマーが、AIがもたらしたコスト上昇を一方的に負担させられ続ける構図に、業界全体がそろそろ正面から向き合うべき時期に来ている。