ハードウェアリーカーの「Jaykihn」氏がX(旧Twitter)上で、Intelの次世代「900シリーズ」チップセットの仕様表を公開した(https://x.com/jaykihn0/status/2020799854331441293/)。
このチップセットファミリーは、2026年後半に登場予定のNova Lake-Sデスクトップ向けCPU「Core Ultra 400S」シリーズと組み合わされるプラットフォームだ。
新ソケットLGA-1954を採用し、現行のArrow Lake向けLGA-1851からの完全なプラットフォーム刷新となる。
ラインナップはコンシューマー向けのB960・Z970・Z990、ビジネス向けのQ970、ワークステーション向けのW980の計5モデル。
なお、従来の800シリーズに存在したエントリー向けのHシリーズ(H810相当)は、現時点では900シリーズには含まれていない。
コンシューマー向け:B960とZ970
B960とZ970は共通のPCH(Platform Controller Hub)シリコンをベースとしており、I/O構成の基本スペックは同一だ。
両チップセットともPCIeレーン総数は34本、DMI Gen5 x2接続、チップセット側のPCIe 5.0レーンはゼロ、PCIe 4.0レーンが14本、SATA 3.0ポートが4基となっている。
Thunderbolt 4/USB4ポートは1基、USB 3.2(20Gbps)は最大2ポート。
両者の違いはオーバークロック対応にある。
Z970はCPUオーバークロック(IA OC)とメモリオーバークロックの両方に対応するが、B960はメモリオーバークロックのみの対応となる。
BCLK OCはどちらも非対応だ。
この差別化は、AMDのX870とB850の関係に近い構造といえる。
フラッグシップ:Z990
Z990は900シリーズの最上位チップセットとして、大幅に強化されたI/Oを提供する。
PCIeレーン総数は48本に拡大し、DMI Gen5 x4接続で帯域が倍増。
チップセット側にPCIe 5.0レーンを12本、PCIe 4.0レーンを12本搭載する。
SATA 3.0ポートは8基、Thunderbolt 4/USB4ポートは2基、USB 3.2(20Gbps)は最大5ポートと、すべての項目でZ970を大きく上回る。
オーバークロックはIA OC、BCLK OC、メモリOCのすべてに対応し、完全なチューニング環境を提供する唯一のチップセットだ。
BCLK OCへの対応は、倍率ロックされたNon-K CPUでもオーバークロックが可能になることを意味する。
もっとも、Non-K CPUを使うユーザーがZ990マザーボードを選ぶかどうかは別の話だ。
ビジネス・ワークステーション向け:Q970とW980
Q970はビジネス向けチップセットで、PCIeレーン総数は44本、チップセット側PCIe 5.0レーンは8本、DMI Gen5 x4接続を備える。
Intel vPro+Standard Manageability(現在のIntel vPro Essentials)に対応するが、オーバークロック機能は一切搭載されない。
W980はワークステーション向けの最上位モデルで、I/O面ではZ990とほぼ同等の構成だ。
PCIeレーン総数は48本、チップセット側PCIe 5.0レーンは12本を搭載する。
最大の特徴はECCメモリのサポートで、900シリーズで唯一この機能を持つ。
メモリオーバークロックには対応するが、CPU OCとBCLK OCは非対応となっている。
vPro+Standard Manageabilityにも対応しており、管理性と信頼性を重視した構成だ。
以下に、リークされた900シリーズチップセットの主要スペック比較表を示す。
| 項目 | B960 | Z970 | Z990 | Q970 | W980 |
|---|---|---|---|---|---|
| PCIeレーン総数 | 34 | 34 | 48 | 44 | 48 |
| Thunderbolt 4/USB4ポート | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 |
| DMI Gen5レーン | x2 | x2 | x4 | x4 | x4 |
| チップセットPCIe 5.0レーン | 0 | 0 | 12 | 8 | 12 |
| チップセットPCIe 4.0レーン | 14 | 14 | 12 | 12 | 12 |
| SATA 3.0ポート | 4 | 4 | 8 | 8 | 8 |
| USB 2.0ポート | 12 | 12 | 14 | 14 | 14 |
| USB 3.2(20Gbps)ポート | 最大2 | 最大2 | 最大5 | 最大4 | 最大5 |
| USB 3.2(10Gbps)ポート | 最大4 | 最大4 | 最大10 | 最大8 | 最大10 |
| USB 3.2(5Gbps)ポート | 最大6 | 最大6 | 最大10 | 最大10 | 最大10 |
| IA OC(CPU OC) | ❌ | ✅ | ✅ | ❌ | ❌ |
| BCLK OC | ❌ | ❌ | ✅ | ❌ | ❌ |
| メモリOC | ✅ | ✅ | ✅ | ❌ | ✅ |
| CPU PCIe 5.0スロット構成 | 1×16 | 1×16 | 1×16+1×4等 | 1×16+1×4等 | 1×16+1×4等 |
| CPU PCIe 5.0ストレージ構成 | 1×4 | 1×4 | 1×8 or 2×4 | 1×8 or 2×4 | 1×8 or 2×4 |
| ECC | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ✅ |
| PCIe RAID 0/1/5/10 | ❌ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ |
| SATA RAID 0/1/5/10 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
| Intel vPro+管理機能 | ❌ | ❌ | ❌ | ✅ | ✅ |
| 同時ディスプレイ出力 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
※すべて「最大(up to)」の数値。DDR5メモリサポートの詳細は未公開。
全チップセット共通のポイント
すべてのチップセットが、CPU側からのPCIe 5.0レーン構成(グラフィックス用およびNVMe用)に対応する。
ただし、B960とZ970はCPU側のPCIe 5.0 x16の分割(bifurcation)※に非対応とされており、拡張カードの柔軟性では上位チップセットに劣る。 ※bifurcation:x16スロットをx8+x8やx4+x4+x4+x4などに分割して使用する機能
なお、Intelはこれらの仕様を公式には確認していない。
また、Jaykihn氏はDDR5メモリサポートの詳細についても情報を共有していない。
Nova Lake-S CPUの登場は2026年後半が予定されており、900シリーズマザーボードも同時期の発表が見込まれる。
Computex 2026でのティーザーや先行情報公開の可能性もある。
解説
さて、900シリーズチップセットの仕様が出てきたわけですが、正直なところ、チップセットの仕様そのものよりも「Nova Lake-Sが本当にIntelの巻き返しになるのか」という点の方が気になります。
というのも、Intelは2024年秋に投入したArrow Lake(Core Ultra 200Sシリーズ)で、かなり手痛い失敗をしているんですよね。
ゲーミング性能で前世代のRaptor Lakeを下回るケースが続出し、発売直後からBIOSやドライバの最適化不足が次々と発覚。
Intel自身のCFOが2025年8月のドイツ銀行カンファレンスで「fumbled the football(しくじった)」と認めるという、異例の事態にまで発展しました。
しかもこの問題、Arrow Lake単体の話で終わらないんです。
その前のRaptor Lake(第13・14世代)でもCPUの物理的な劣化問題が発生しており、Intelのデスクトップ向けCPUは2世代続けて信頼性に傷がついた状態です。
つまりNova Lake-Sにとっての最大の課題は、「性能でAMDに勝てるか」以前に、「失った信頼を取り戻せるか」なんですよね。
最大52コアだとか、AMDの3D V-Cacheに対抗するbLLC(Big Last Level Cache)で最大288MBだとか、スペックの数字だけ見れば確かに魅力的です。
でも、いくらカタログスペックが豪華でも、発売後にまた「最適化不足でした」とか「BIOSアップデートで改善します」なんて話になったら、もう取り返しがつかない。
個人的には、Nova Lakeでようやく「まともな土俵に立てる可能性がある」という段階だと見ています。
AMDとの競争のスタートラインに立つには、まず製品がちゃんと動くこと、性能が期待通り出ること、安定性に問題がないこと。
この当たり前のことを証明するところからやり直しです。
そしてもう一つ、Nova Lake-Sの登場タイミングで大きな懸念材料になっているのがDRAMの価格高騰です。
現在、世界的なメモリ不足が深刻化しており、2025年後半からDDR5メモリの価格は3〜4倍に跳ね上がっています。
AI向けのHBM(High Bandwidth Memory)需要がメモリメーカーの製造キャパシティを食い尽くしており、コンシューマー向けDDR5の供給が大幅に絞られているのが原因です。
業界の予測では、この供給不足は2026年前半がピークで、価格の本格的な正常化は2027年以降になるとされています。
Nova Lake-Sが2026年後半に登場するとして、その時点でDDR5メモリの価格がまだ異常な水準にあれば、いくらCPUやマザーボードの性能が良くても、プラットフォーム全体のコストが跳ね上がります。
新しいLGA-1954ソケットで新マザーボード必須、さらにメモリも高騰中となれば、自作PCユーザーにとってはかなりハードルの高いアップグレードになりますよね。
チップセットの仕様を見る限り、Z990の充実したI/OやB960のコスパ志向など、セグメントの切り分けは悪くありません。
AMDのX870E/X870/B850のような階層構造を意識した設計で、ゲーマーにとってはB960・Z970・Z990の3つから選べるのは歓迎すべきところです。
ただ、繰り返しになりますが、チップセットの仕様がどれだけ良くても、肝心のCPUが信頼できる製品として出てこなければ意味がない。
そしてDRAMの高騰が収まっていなければ、プラットフォーム全体としての魅力が大きく削がれる。
Nova Lake-Sは、この2つの条件をクリアして初めて、AMDとの競争のスタートラインに立てるんだと思います。
それまでは期待半分、様子見半分というのが現実的なスタンスではないでしょうか。