■事実
Morgan Stanleyの最新リサーチノートで、DDR4など成熟DRAM(レガシーDRAM)の価格が2026年Q3に50%上昇するとの予測が示されました。
同社は2026年Q4についても10%の追加上昇を見込んでいます。
SLC NANDの価格上昇予測はさらに強気で、2026年の残り2四半期それぞれで50%の上昇が見込まれています。
Morgan Stanleyはこの背景として、ウエハー生産能力がHBM・DDR5・上位層NANDへ継続的にシフトしていることを挙げており、DDR4とSLC NANDに割り当てられる生産余力が急速に縮小していると指摘しています。
HBMは従来型DRAMに比べて約3倍のシリコンウエハーを消費するとされています。
その要因は積層構造そのものだけでなく、HBMの各層を物理的に接続するTSV(シリコン貫通電極)付近にメモリセルを配置できないという製造上の制約も大きいとMorgan Stanleyは分析しています。
比較表(Morgan Stanley予測:2026年Q3のメモリ価格上昇率)
| 製品カテゴリ | Q3 2026予想上昇率 | 備考 |
|---|---|---|
| DDR4等レガシーDRAM | +50% | Q4は+10%を予想 |
| SLC NAND | +50%(Q4も+50%予想) | 2四半期連続で強気予測 |
| PC向け標準DRAM | +15〜20% | 従来予想(+3〜8%)から上方修正 |
| グラフィックスDRAM(GDDR系) | +15〜20% | PC向けDRAMと同水準の修正幅 |
| エンタープライズSSD | +18〜23% | ストレージ側にも波及 |
※DDR4/SLC NANDの数値と、PC向けDRAM/グラフィックスDRAM/エンタープライズSSDの数値は、Morgan Stanleyの別時期のリサーチノートに基づくため、単純な横並び比較ではなく「同社が四半期を追うごとに上方修正を重ねている」文脈として捉えるのが妥当(前者は直近ノート、後者は7月時点のノート)。
ソース:
- https://wccftech.com/morgan-stanley-raises-alarm-bells-ddr4-prices-will-jump-by-50-in-q3-as-memory-makers-starve-legacy-dram-to-feed-hbm/
■解説(論旨箇条書き)
そもそも「なぜ今さらDDR4?」という違和感が読者にはあるはず。DDR4はSamsung・SK Hynix・Micronが2025年後半〜2026年にかけて生産終了(EOL)を表明していた「終わりゆく規格」だったのに、値上がり率がDDR5や最先端製品よりむしろ大きい、という逆転現象が起きている。
種明かしは単純で、各社がEOLを宣言した後もDDR4需要(産業機器・自動車・通信インフラなど長期契約先向け)は消えておらず、そこに供給を絞られた状態で「枯れた規格なのに品薄」という異常事態が発生している。
SamsungとSK Hynixは実際に一度表明したEOLスケジュールを延期し、2026年末まで生産継続する方針に転換した経緯がある。値上がりが「終わらせるはずだった商品を延命させるほどのうまみ」を生んでいる証拠とも言える。
HBMが通常DRAMの3倍のウエハーを食う、という数字はよく引用されるが、その理由(TSV近傍にメモリセルを置けない)まで説明されることは少ない。「量が3倍」ではなく「同じ面積でも使える場所が減る」という、より構造的な制約であることを示すディテール。
この構造はDDR4だけの話ではなく、このブログの読者が直接肌で感じているGPU(GDDR6/GDDR7)のVRAM高騰とまったく同じロジック。NVIDIA・AMDともに2026年に入って複数回のGPUキット価格改定を行っており、VRAMがGPUの原価構成で最大コスト項目になっているという報道もある。
「RAMageddon」「RAMpocalypse」的な物語がここでもまた繰り返されている形だが、今回は”終わったはずの規格”まで巻き込まれている点が新しい局面と言える。
「墓場から蘇るDDR4」という表現がしっくりくる。一度は引導を渡されかけた規格が、AI特需のとばっちりで急に金脈扱いされている皮肉さ。
「安くなるまで待つ」がもう通用しない時代が、いよいよ枯れた規格にまで及んできた、というのが今回の話だ。